朝起こされてびっくり
本日1回目の更新になります。
「ご主人様、朝ですにゃ。起きてくださいにゃ」
慣れない声が起ききっていない恵の頭に入ってくる。
「困ったにゃ。お腹空いてきてるのに、起きてもらわないと食べ物がないのにゃ……」
誰だろう、でも恵が思っている理想的な起こされ方、そして語尾の【にゃ】。
「もう、奥の手しかないのにゃ。ご主人様、起きないとこうするのにゃ」
ミケーレは恵に馬乗りになる。
恵の首筋にキスをする。
ちゅっ
「おかしいのにゃ。これでも起きてくれないのにゃ」
今度は頬に。
ちゅっ
「こ、これでもダメなら」
意を決して恵の唇、近くにキスをする。
ちゅっ
「えー、これでもダメなんですかぁ。でもこれ以上は恋人同士じゃないと無理なのにゃ……」
仕方なく、やけくそで恵の首筋をひたすら甘噛みする。
「あむあむあむ……」
あまりのくすぐったさに目が覚めた恵。
「……あ、ミケーレ。なにしてるの?」
「ご、ご、ご主人様。おはようございますにゃ。なかなか起きてもらえなくて困ってたにゃ」
慌てて恵から降りるミケーレ。
きゅるるるる……
「あぁ、そういうことなのね。料理するには食材足りないからねー」
体を起こした恵は、ミケーレを見た。
昨日渡したメイド服をミケーレなりに着こなしていたのだ。
「おぉおおおお。夢にまで見た、リアル猫耳メイドさんだ。すげぇ……」
「褒められているのかにゃ? 嬉しいですにゃ」
にこっと笑うミケーレは後ろを向いて照れている。
尻尾もピンと立っているが、そのせいでスカートが捲れてショーツが丸見えになっていた。
ショーツにも尻尾の穴がないせいか、少し下がってローライズ状態になっている。
「み、ミケーレ。その、下着が丸見えだから……」
「あっ。うそっ。あとで直しておかないとダメですにゃ……」
スカートの後ろを押えようとしているのだが、尻尾に負けて半分しか押さえられていない。
直すというのは、きっと尻尾を出す穴を加工するのだろう。
朝から大変なご褒美をありがとうございます、と感謝する恵だった。
リビングに下りた二人。
冷蔵庫を見るが、ろくなものが入っていなかった。
「ミケーレは食べ物は何が好き?」
「はい。お肉が好きですにゃ。あ、でも、そんな贅沢は言えませんにゃ……」
これは困った。
恵は早生まれで一六になっていたので、学校を辞めたあと暇になって自動二輪の免許は取っていた。
だとしても免許をとってまだ一年経っていないから、後ろに乗せることもできない。
アーチェリー部にいたときから体力だけはあったので、一番近い駅前までは自転車で余裕だったからバイクは持っていなかったのだ。
「どうしよう。この時間だとやってる店が……あ」
ミケーレに着替えをしてもらい、着替えさせて麦わら帽子を被せる。
恵はタクシーを電話で呼んだ。
数分で到着したタクシー。
「ミケーレ、耳と尻尾隠しといてね」
「はいですにゃ」
三度目ということもあって、ミケーレはタクシーに乗るのに緊張することはなかった。
タクシーで走ること数十分の場所にファミリーレストランがあった。
それを思い出してここに来たのである。
この地域はリゾート地ということもあり、ちょっとだけ高級感のある店だった。
恵もたまに利用したことがあって勝手は解っていた。
「いらっしゃいませ。お客様、二名様でよろしいですか?」
「はい」
「喫煙なさりますか?」
「いいえ」
「ではお席に案内いたします。こちらへどうぞ」
この辺はマニュアルに沿った対応なのだろう。
どう見ても恵は煙草を吸う年に見えるはずはないのだから。
恵とミケーレは案内された席に座った。
なぜかミケーレは恵の隣に座る。
「ご……いえ、恵さん。ここはどこですか?」
「うん。ここはね、レストランといってごはんを食べるところなんだよ」
「ほぇ……」
朝も早かったからか、モーニングセットの利用客がちらほらいる程度の店内。
「じゃ、僕が適当に注文するからいいよね?」
「はい、お任せします。にゃ」
「ミケ」
「あ、すみません……」
語尾の【にゃ】は可愛いのだ。
だが、一般社会ではちょっと違和感がある。
だから外では使わないように恵が頼んでいたのだ。
注文した料理がミケーレと恵の前に並んでいく。
「お、おぉおおおお」
「ほらほら、興奮しないの」
「だって、これ、お肉の焼けた匂いがするんですよ!」
「はいはい。いいから黙って食べようね。ナイフとフォークの使い方わかる?」
「ないふ? ふぉーく?」
こてんと小首を傾げて悩んでいるミケーレ。
可愛いのは正義だった。
「あー、ちょっと待っててね」
恵は目の前のステーキとハンバーグを一口サイズに切ってあげる。
フォークをミケーレに渡すと。
「はい、どうぞ」
「い、いただきます」
はむっと、ひとくちステーキを頬張る。
租借して飲み込んだ音が鳴るのがこっちまで聞こえてくるようだ。
「こ、これは。うまうまなのですにゃ」
「ミケ」
「あ、はい。でも、こんなに美味しいお肉は初めてなんですよ」
「いいから。黙って食べる」
ハンバーグを一刺しして、口に頬張る。
「ふぁい。こ、こりぇも柔らかくて美味しい。んくっ。なんでしょ、このじゅわっと口の中に溢れてくる快感は。これも、これも……あたし、とても幸せなのです……」
見ているだけで胸がいっぱいになり、幸せを感じていた恵。
食事が終わって、近くの大型スーパーで食材を買い込んだ恵とミケーレ。
タクシーで家に戻ると、大きなからっぽの冷蔵庫に買ってきた食材をいれていく。
沢山の食べ物の入ったそれを見たミケーレは尻尾を立てて喜んでいた。
「これで、料理をすることができますにゃ」
「うん。お昼からはそうしようね」
「はいですにゃ!」
それから恵は、掃除機の使い方や風呂場の洗い方。
特に洗剤の種類と使い方などを事細かに教えていく。
ミケーレはスポンジで水を吸い込むように新しいことを覚えていった。
「すごいですにゃ。泡が沢山でるから綺麗になっていくのですにゃ!」
お昼ご飯を食べて、ミケーレの入れてくれたお茶を飲んでまったりと過ごす恵。
ミケーレの包丁の使い方は見事なものだった。
小さいころから家事をしていたからであろう、軽快な手さばき。
その代わり、洗濯機の使い方が最初解らなくて戸惑ったが、そういうものだと考えないで理解していく。
恵は整理整頓、掃除はあまりすることがなかった。
ミケーレのおかげで家中が綺麗になっていく。
恵はミケーレが動くたびに揺れるスカートや、ハイニーソックスと短めのスカートとの間にできる絶対領域を眺めてうっとり。
揺れる尻尾や表情に応じてぴくぴく動く猫耳に感動しつつ、いまこの幸せな空間を満喫していた。
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