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子猫がしゃべった

本日2回目の更新になります。

 恵は寝っ転がった子猫のお腹あたりを撫でていた。

「あっ、ぅん。こら、変なとこ触ったら困るにゃ」

 恵はまた辺りを見回す。

「僕、疲れてるのかな……空耳がまた聞こえてくるわ」

 構わず子猫のおなかを撫で続ける。

「あっあっ、嫌っ。だ、から、そこダメだって言ってるのに……」

「えっ?」

 声の方向を探すとどうしても子猫の方から声が聞こえてくる。

 子猫を見た瞬間、恵の手に猫パンチが当たった。

 ぱしっ

「痛てっ」

 その瞬間、飛びのいた子猫。

「全く、ごはんの恩があるっていってもやりすぎだにゃ」

「子猫が……」

「ん? どうにかしたかにゃ?」

「子猫がしゃべったぁああああああ!」

 慌てて走り出した恵だったが、足を滑らせて頭を柱にぶつけてしまう。

 そのまま気絶した恵。

「きゅぅ……」

「あ……何かまずったのかにゃ?」

 小首を傾げるような仕草をしていた子猫。


 恵が目を覚ましたとき、とても息苦しく感じた。

 あまりの苦しさに深く深呼吸をすると、ちょっとだけ甘酸っぱい匂いようながする。

「何だ? どうなっ──」

「び」

 頭の後ろの方から声が聞こえたような気がする。

「えっ?」

「び、微妙な振動させないで欲しいにゃ。響くからそれ以上喋っちゃ駄目だにゃ」

「にゃ?」

「だ、だから敏感な場所に響いちゃうからダメだって言ってるにゃ」

 何やら柔らかいものに顔が埋まっているのに気付いた恵。

 手を動かそうとしたとき、ふにゅんとした張りのある柔らかいものが手の先に。

「そ、そこは駄目だにゃ。お尻なんだにゃ! みぎゃ!」

 柔らかいものの先には何やらふさふさの長いものがあった。

 恵はわけが分からず体を捻ってみた。

 仰向けになった恵の視界に入ったのは、可愛らしい女の子の顔。

 ただひとつ予想を超えていたのは、耳が四つあることだった。

「み、耳が猫耳があるのに、横にも耳がある……」

「だ、大胆なんだにゃ。でも、ごはんのご恩としてはやりすぎなんだにゃ。尻尾を触っていいのは将来を誓い合った間柄じゃないとダメなんだにゃ……」

 頬を真っ赤に染めてちょっと横を向いた女の子。

 いやちょっとまて、恵はそう思った。

 白髪、いや、プラチナブロンドのツインテールなのだが。

 テール部分が黒と茶色になっている。

 さっきの子猫と同じ毛の色。

「そういえば、さっきいた三毛はどこいったんだ?」

「ん? 呼んだかにゃ?」

「いや、三毛猫の子猫なんだけど」

「だから、あたしがミケーレなんだにゃ」

「ミケーレ?」

「そうだにゃ」

 恵は身体を起して彼女を向いて座り直した。

「さっきの子猫が?」

「あたしなんだにゃ。お腹がすいてて倒れそうになってたところを助けてもらったのにゃ。おまけに、あんなに美味なもの、生まれて初めてだったのにゃ」

「あれ、猫缶なんだけど。極上まぐろってやつね。確かに一個三〇〇円はする高級品だったけどね」

「ねこ……かん?」

「うん。それより、その耳、本物なの?」

 触ってもいいか、と確認をとらずに恵は抱き着くように猫耳を触り始める。

「く、くすぐったいからやめて。嫌、あっ。だからやめてってば!」

 バキッ!

 ミケーレの掌底(肉球部分)が恵の右頬にめり込む。

 瞬間、壁まで吹っ飛んでしまった恵。

 ズドンッ!

「あ、やりすぎちゃった。どうしよう……」

 ミケーレはすぐさま立ち上がり、恵へ駆け寄った。

 ぺたんと女の子座りをすると、恵の顔面を太腿の奥に埋めた。

「あぁああ……たんこぶできてる」

 恵の後頭部を触ると、わずかに腫れてしまっていた。


 恵が再び目を覚ますと、そこはまた真っ暗だった。

 顔全体が柔らかいもので包まれている。

 さっきと同じ甘酸っぱいような匂い。

 今度は後頭部をさする感触がする。

「ごめんなさい。ご主人様。ごめんなさい……」

「……ミケーレだっけ?」

「あ、ご主人様気が付いたのですね」

「すぅうううう、はぁああああ。あ、なんかいい匂い、じゃない! これどうなってるのかな?」

「あっ、嫌っ。微妙な振動あたえないでくださいって。そこ敏感な部分なんですから! って、膝枕してるんですけど」

 敏感な部分というフレーズに驚いた恵は、慌てて床に手をついて頭を上げた。

 そこで初めて恵はミケーレという少女の太腿の付け根に顔を埋めていたことが解かった。

 目の前に見えたミケーレはとても恥ずかしそうだった。

「い、いや、普通上下逆じゃないの?」

「えっ、違いましたか?」

「うん。僕としては、その、嬉しいんだけど。ちょっとこれ危険じゃない?」

 ちょっと反応してしまった股間を隠すようにしてミケーレに注意する。

「そんな! 恥ずかしいの我慢して頑張ったのに」

 半泣きの状態になるミケーレ。

「あ、ごめんね。嬉しかったよ、その。ありがとうございました!」

 その場で土下座をする恵。

「い、いいえ。あたしが勘違いしただけなんです。頭を上げてくださいご主人様」

 言われた通り頭を上げた恵。

 そこで初めて今の状況を理解したのだった。

 目の前にいるミケーレという女の子はさっきの子猫だった。

 頭にはプラチナブロンドの大きな猫耳が二つ。

 本来の位置には可愛らしいちょっと先のとがった耳がついている。

 半開きになった口元からちょっとだけ見える八重歯。

 プラチナブロンドの髪に両側に垂らしてある色違いのツインテール。

 薄汚れたあちこちほつれたワンピースを着ていた。

「ところで、語尾の【にゃ】、がなくなったんだけど」

「あ、それはですね。目上の人に使う丁寧な言葉なんです。あ、驚いて素に戻ってしまっていたのですにゃ」

 意識して使う丁寧語の語尾。

 プラチナブロンドの毛で覆われたふわふわの長い尻尾が、大きく床に沿って右に左に動いている

「ご主人様とか目上とか、どういう意味なのかな?」

「いえ、さっきですね、ご主人様がお手伝いさんの募集をしているって言ってましたので、雇ってもらえるのかなーって思っているのですが。違いましたかにゃ?」

 恵は即答する。

「はい、雇います。採用です! 今日からでも、いえ、今からでもお願いします!」

「はい、がんばりますにゃ」

 それは二人の間で、雇用契約が結ばれた瞬間だった。


「ちょっと待ってて」

「はい?」

 恵は立ち上がると二階へ上がっていった。

 すぐに戻ってきた恵が持っていたのは、黒地に白のレースであしらわれた一着の服のようだった。

 あまりにも汚れていたワンピースを着ていたミケーレを見て、ちょっと不憫に思った恵。

「これ、ちょっと持ってて。今お風呂沸してくるから」

「えっ?」

 走って風呂場に行く恵。

 温水がすぐに出るように確認するとまた戻ってくる。

「うん。大丈夫。あっちが風呂場だからお風呂入ってそれに着替えてくれるかな?」

「お、お風呂ですかにゃ? 何週間ぶりだろう……」

 嬉しさなのか、ぶわっと涙を浮かべるミケーレ。

 手を取って風呂場へ連れていくと説明を始める。

「これを捻るとここからお湯が出てくるから。これが身体を洗うやつで、これが頭を洗うやつね。ここにバスタオル置いておくから、あとはわからなかったら聞いて。僕さっきのとこで待ってるから」

「はい。ありがとうございますにゃ。久しぶりのお風呂嬉しいですにゃ」

 恵を気にせずワンピースを脱ぎ始めるミケーレ。

「ちょっと、駄目だって。僕あっちで待ってるから」

 走って逃げる恵。

 縁側に着くと、座って深呼吸。

「すぅう、はぁあ。びっくりした。でもあんなに可愛い子が、それもリアル猫耳娘だよ!」

 ごろごろ転がりながら悶えまくっている恵だった。


読んでいただいてありがとうございます。

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