2.神様にだってコミュ障はいるでしょ
早速のブックマークありがとうございます!
とりあえず勢いで書いた分の投稿はここまでです。
いろいろ考えながら書いていきますが、整合性が取れなくなったりする部分も出てくるかと思われます。そのときには感想欄で容赦なく批判のほどよろしくお願いします。
「あ、あの、最初に言った通り、おぬしは今晩死ぬことになっているのじゃ」
「そうだな、最初に聞いたな。ちなみに死因は?」
「あの、い、いわゆる心不全。解剖しても死因不明でつけられる病名ってやつじゃ」
「俺の身体ってそんなに悪かったか?会社でやってる年に2回の健康診断でもちょっと血圧が高いぐらいで所見なしなんだけど」
「あ、血圧が高いから怒りっぽいんかのう?まあ身体はだいたい正常なんじゃけどな、この世の摂理…おぬしには宇宙のプログラムといったほうがわかるかの?」
肝心な話はなかなか進められないくせに余計なことだけは言うのを忘れない。その余計なことしか言わない唇をつまんでひねりあげてやろうか。あ、ジジイが口を押えた。
そうそう、自然の摂理って奴ね。大宇宙の予定調和ってやつか。
「ああ、だいたいな。細胞のアポトーシスとかそういうのに似たもんか」
「ふぉ、ふぉうじでぃゃ。ほんなわけでおぬひはひぬ」
ジジイは口を押えたまましゃべっているからもごもごしてる。
「普通にしゃべれよ。ひねったりしないから。読者様が混乱するだろ」
「ど…どくしゃ?」
「ん?ああ、気にすんな。こっちのことだ」
「ぶはっ!はあっ、はあっ。おぬしの思念が凶悪なので怖いんじゃよ。そんなわけでおぬしは…死ぬのじゃ」
「そうか、しょうがねぇな」
「あ、ず、ずいぶんあっさりしておるんじゃな」
「人間の死亡率は100%だからな。しょうがねぇよ」
「ま、まあそうじゃけど、ずいぶん冷静じゃな。暴れらるかと心配もしたんじゃがワシが感じる精神の波も乱れてない。死ぬのは怖くないのか?」
「人はいずれ死ぬ。俺はもう親も見送ったし、バツイチ独身で子供もいないから後の心配はしなくていいだろう。妹は…しばらく泣くだろうけど一応死ぬ順番は飛ばしてないからしょうがねえなってところだ。遅いか早いかっていったら早いし、正直なところ少しもったいないなあって気持ちはあるけどな」
ジジイ、ずいぶんどもってるな。コミュ障か?会話の頭に『あ、』をつけなきゃしゃべれないとかコミュ障のテンプレみたいなやつだな。
それと、真面目な問答をしているかのように思えるが、ジジイは相変わらず雷様のコスプレのままだ。
ジジイのコスプレなんて誰得だよ。どこの腐った人に需要があるんだよ。
ていうか、普通に死ぬならこんな問答なんてないんじゃないか?普通に黄泉路を歩いて閻魔庁じゃないのか?
「あ、す、すまん。自分の死に際して取り乱さない人間というものは珍しくての。お主の考える通り普通に死んだ人は閻魔庁なり審判の門なりに行くわけだが」
「俺は違うと?」
「あ、そうなんじゃ。わしも下っ端じゃから詳しい仕組みはわからんのじゃが、おぬしの精神。というより魂をほかの宇宙に転移させるから案内しろと通達が来たんじゃ」
「なにそれ、異世界転生ってやつか?」
「そうじゃな。おぬしが入り込む器はまだ2歳ぐらいの子供じゃ。」
うへぇ。そんな小さい子供の中身が42歳のオッサンかよ。
でもまだ胎児に放り込まれるよりはいいか。出産される(・・・)のもたいへんそうだし。
「4歳ぐらいになって自我が確立されてしまうと魂の融合もなかなかうまくいかなくてな。無理にねじ込むと二重人格になることがあったりするんじゃ」
なるほどたまに出現する異常者はこいつらが原因か。
「なるほど。お前は転生するからあっちでうまくやれよってことか?それだけ言うのにわざわざ出てきたの?その程度のことなら輪廻転生で説明がつくんじゃないのか?」
「いy、あ、そ、それはじゃな、よその宇宙に転生するにあたっておぬしに特殊能力を一つ授けるから通知するようにも指示を受けてるんじゃ」
いま『いや』って言いかけたよな。ジジイ目をじっと見る。目を泳がせたいけど泳がせまいと必死なようだ。みていてイラつくけど飽きないな。
「今、よその宇宙って言ったよな。するといま俺たちがいる宇宙が他にもあるっていうことか?」
「わ、ワシも定例会議で聞いたことしかないが、確かにあるそうじゃ。太陽系担当の上位神が銀河系担当のさらなる上位神に聞いたと言っておったのでな」
「ほう、いわゆる可能性の分岐の先にあると言われている並行宇宙とかパラレルワールドってやつか?」
「う、おぬしただのDQNだと思ったら少しは知識があるんじゃな」
ジジイが変な目で俺を見ている。変といっても性的でキモイ目つきじゃない。なんだろう、相容れないと考えられているDQNと知識が融合した珍獣でも見るような目つきとでもいえばいいのか。
「まあな、そういう物語が好きで古くはSF御三家の本を読み漁っていた時期もあったしな。いまでも素人の投稿小説サイトに出入りしてるからそういう話に免疫がないわけじゃない。で、その並行宇宙だかパラレルワールドに俺の魂を飛ばす、と」
「あ、そ、そういうことらしいんじゃ」
「又聞きとか、らしいとか、なんだかあてにならない話だな。おい、じいさん。お前本当に神の眷属なのか?」
「だ、だ、だってこればかりはワシにはどうにもならんもん!ワシみたいな最下級から数えたほうが早い神なんて、力も!権限も!上の情報に触れる機会さえないんじゃぞ!」
あ、また逆切れしそうだ。こいつが知っている情報は大したことがないってことが分かったし、逆切れすると面倒くさいからそろそろ話をまとめるか。
「ふーん、じいさんもたいへんなんだな」
少し優しく声をかけてやったらジジイが信じられないものを見るような目で俺を見る。
もう少し煽り耐性とスルースキルを身につけろよ。そんなんじゃ悪い奴らにいいようにやられちまうぞ。
「でもさあ、そんな次元の壁を飛び越えるような真似をするんじゃ相当なエネルギーを使うんじゃないの?どこからそんなエネルギー調達するの?まさか…」
俺は異世界転生テンプレにありがちな『身近な人間の命を犠牲にして異世界に転移する』設定の小説を思い出していた。読む分にはいい感じの胸糞小説だったが、これが自分の身に降りかかるのならば話は別だ。
「あ、いや、おぬしが考えているような周りの人間を犠牲にはせんよ。地球の人間には感知できない遠い遠ーい超新星爆発のエネルギーをちょいと拝借するだけじゃ」
ああよかった。もし自分の身内や仕事でお世話になった人たちを犠牲に、なんて言おうものならば目の前の自称神様をぶっ殺していたところだ。
ん?ジジイ汗びっしょりだ。あやしいな。今の話本当なんだろうな。どうせこっちの思考はテレパスでわかるんだ。正直なところ言ってみ?俺の目を見て。
「ほ、本当じゃ!」
DQNモード再びスイッチオン!
「間違いねぇよな? もし違ってたらテメエ…」
「ま、ままま、間違いない!」
よーし、言い切ったな。このまっすぐな瞳は嘘をついてない、はず。
「よし、わかった。じいさん、あんたの説明できることっていうのはここら辺までなんだろ?」
「そ、そうなんじゃ」
「て、ことはだ。俺はここで地球とおさらばするってわけか?」
「う、うん。そうなんじゃ」
「いまから妹に虫の知らせでも飛ばせない?」
「あ、ざ、残念ながらここに来たからにはそういうことはできない規則になってるんじゃ」
「規則か。こういうところの規則じゃあしょうがねぇな。これでほんとにおしまいってか」
あからさまにほっとするジジイ。まだ話は終わってないぜぇ。
「でも転生特典がどうのって話していたよな。あれもじいさんの管轄なのかい?」
「いy…あ、あれは」
「いま『いや』って言った?」
我ながら意地が悪い。
「そ、それは次元の橋渡し役が説明と付与することになってるんじゃ」
「おいおい、さっきと話が微妙に違うじゃねぇか。特殊能力を授与するからって言ってなかったか?」
「そ、そそそ。それは違う!『授与されますよ』って通知をするだけなんじゃ。あ、く、苦しい。胸をそんなにつかみ上げないで!」
ジジイの胸ぐらをつかんで持ち上げて自分のほうへ引き寄せる。ジジイの顔は恐怖の色に染まっていまにも失禁しそうだ。脱糞でもされたらたまったもんじゃないから適当なところでジジイを床?にポイした。
「ぎゃふんっ! アイタタ、ワシは年寄りなんじゃぞ。全く最近の若いもんは…」
「おい、ジジイ」
「ひゃ、ひゃい!」
「あんたの説明はここまでなんだろ?じゃあさ、次の流れを教えてくれよ。
「少し待っていてくれ。アイテテテ、腰が」
ジジイは大げさに痛がりながら部屋の隅っこに引っ込んでいき、いつの間にか出現した机の上にあった呼び鈴を押す。
あれ、ファミレスによくあるやつじゃねーか。ここ本当にあの世とこの世の境目なのか?いや境目だからこそ現世の品物があったりするのか。つーかジジイは一体誰を呼ぶんだか。
「なあじいさん、この内容を説明するだけでここまで時間をかけたりあなたが2回も逆切れしたり俺がDQNスイッチを入れる必要があったのかね」
「それなんじゃ。おかしい、いつもおかしいんじゃよ。ほかの地方神が同じことをやっても10分ぐらいで次の神のところにいくのじゃが、ワシがやるとなぜか毎回毎回口げんかの末に泣かされたり殴られたり、ここに来て言葉が通じているはずの犬に説明すれば噛みつかれるし、猫には引っ掛かれるし、熊にはパンチを喰らうし、像にはウンコ落とされるし…DQNなんてやつはろくなもんじゃないし…」
最後、なんだか聞き捨てならないことを言っていたようなのでもう少し痛めつけてやろうかと立ち上がったところで部屋の呼び鈴が鳴る。
ピーン ポーーン
「はーい1
ジジイはカサコソとGじみた動きでこれまたいつの間にか出現した扉にダッシュする。
呼び鈴の主は内部の返事など気にせずにドアを開ける。ドアが開いたところにはジジイの顔面。
ドアのカドでしこたま顔面を打ち付けてそのまま蹲るジジイ。やっぱりこのジジイ馬鹿なんだな。まともに衝突しやがった。
「~~~~~~っっっ!!!」
声にならない叫びとか呻き声っていうのはこういうものかと横目で見ながら、俺は訪問者のほうを見てみる。
「あらーっ!どんちゃんまたこんなところにいたの?ぶつかってもどうせ死なないんだからそんなに大げさに痛がるんじゃねえよっ☆」
おっとお。これはまたなんだか香ばしいキャラが。つーかジジイどんちゃんって呼ばれてるんだ。理由は…まあお察しだな。
訪問者?は白くてゆったりとした服を着ていて、ほぼ銀髪の毛を腰のあたりまで伸ばした
北○晶だった。
俺はこれからの困難を想像して頭を抱えた。
読んでくれたすべての人に、ありがとう。
初回2話は勢いで投稿しましたが、次回以降は展開を考えながら書いていくので不定期更新になります。長ーい目で見てくださるとうれしいです。