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ヴィアンカ・ベルトワーズ 4

 何が起きたのかよく理解できません。

 私の身体はソファの座面に押し付けられて、両手を拘束されています。上には圧し掛かる様にリオナルド様の逞しい身体があります。

 精悍な相貌の天色の瞳がこちらをじっと見据えています。そこに感じ取れるのは怒りです。怖い。底冷えのするような眼差しに身体が震えます。


 大型肉食獣に追い詰められた小動物

 蛇に睨まれたカエル

 まさにそれです。


「大人になったとはどういう意味だ?」

 低い低い声。彼のこんな声は初めて聴きます。片手で私の両手を拘束して、もう片方の手が頬から首、肩へと滑ります。

「……リオ様…こわい……」

「そんな事は訊いていない。答えろ。この身体を俺以外の男に触れさせたのか?」

「いやっ! 知らない! こわい!」

「知らない? 大人になったと言ったのはお前だろう?」

「ですから! リオ様の言いなりになっていた子供の私ではなくなったんです!……ふ、うっ…」

 不本意ですが、あまりの恐怖に涙が零れます。

 何が彼を激高させたのかも、どうしてこんなにも責められなければならないのかも全くわかりません。分からないからこそ怖くて涙が零れます。両手を拘束されている為、顔を隠すことも涙を拭う事もできません。

 ただただ涙を零すだけ。

 ふっときつく拘束されていた力が緩みました。空気もなんとなく軽くなったような気がしてこわごわ顔を上げれば。

「ヴィアンカ、答えてくれ。お前は俺以外の男と身体を交わらせたのか?」

「? そ、そんなこ、と…ふっ……するわけが、ありま、うっ…せん」

 切なげに私をみるリオ様の顔。そこには先程までの怒りは感じられません。

 私もどうしてそんなことを訊くのか分かりませんが、なんとか言葉を紡ぎます。

「!?」

 零れた涙を唇で吸い取られました。驚いて瞳を見開けば、リオ様は私をまっすぐに見据えています。

「お前の言っている事はよく分からない。もっときちんと説明してくれ」


 とても苦しげに彼は言いました


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