リオナルド・カストネル 7
「リオ様!! 可愛いですか!?」
寝室の扉を盛大に開いて飛び込んで来たヴィアンカの姿に瞠目する。ドレスに髪飾り装飾品一式、全て俺が贈ったものだ。
扉の向こうからコルセットだ、リボンだと聞こえていたからなんとなくは察していたが。
しかし。これは。
思わずに緩みそうな口元を覆って顔を逸らした。と、そこで開け放たれたままの扉の向こうで侍女が心配そうにこちらを見ているのに気付いた。そうだろう。なにしろヴィアンカが飛び込んで来たのは寝室だ。大丈夫だと頷いてやれば、意を酌んだのか扉をそのままにして頭を下げて退室した。なかなか気回しの出来る侍女だ。
「あ、……やっぱり、可愛くないですか?」
沈んだ声に慌てて視線を戻した。眉を下げて上目づかいで見上げるな!!手を引いて腕の中に抱き留め、顔が見えないようにする。
「いや、可愛い。すごく可愛い」
「本当に?」
「本当に可愛い。誰よりも可愛い」
それなのにヴィアンカは腕の中で顔を上げて。
「うれしい」
ふわりと花綻ぶように微笑む。
「リオ様 大好き!」
ぎゅっと細い腕が背に廻されれば、顎を掬い上げてしまうのも仕方がないだろう。
ゆっくりと薔薇色の唇に自分のそれを近づければ、ヴィアンカも心得たように瞼を閉じる。
触れる、という距離まで近づいて。
「待って。おかしいです」
ヴィアンカの細い指が近づく距離を押し止めた。
「おい…………」
怒気を孕ませ声を掛けたが、ヴィアンカは頓着する様子もなく続けた。
「リオ様は浮気するんですね…いひゃい!!」
この状況でまたも阿呆な発言をするの彼女の頬を思わず抓ってしまったのも全くもって俺の所為ではないはずだ。