第4話 [風の神シルフィ]
「ルド。ニビル・・・・・・大丈夫かな?」
ステラは心配そうな表情で俺を見た。
「分からない。だけど、シルフィの森には強力な魔物が多い、正直。鼻の良いオオカミ種の魔物に見つかったら厳しいな・・・・・・あの種は嗅覚が発達してる上に聴覚も鋭い、それに何よりも動きが素早い。一撃のダメージはそれほどじゃないけど、それは大人ならの話しだ。ニビルの力では・・・・・・」
「なら急ごう!私は先に行くからねッ!!」
「おっ、おい!ステラ!!」
俺の話を聞いたステラは青ざめた顔をして凄い勢いで飛び出していって、すぐに見えなくなった。ステラは小さい頃から足が速くて街では有名だった。俺の今までの記憶に、あいつより速い人間を見た事がない。俺もスポーツは得意だが、ステラと競争して勝てた例がないし、何より、クラスのリレー出場禁止になる程だ、相当だろう。
その頃、ニビルは洞窟の中に居た。
「うぅ・・・・・・何も見えない」
ニビルは外の光のまったく届かない洞窟の中を夜からずっと歩き続けていた。彼女には今もう朝になっている事は気付いていないのだろう。
「来た道も分からないから、もう出られないし・・・・・・ちょっと怖くなってきた。こういう時は歌を歌えば元気が出るはず・・・・・・」
ニビルはそういうと、歌いだした。
「お、おばけなんてないさ、おばけなんてうそさ・・・・・・」
ニビルは歌を口ずさみながら、どんどん奥へと進んで行った。
「ニビル~。どこにいるの~!?いたら返事をして~!」
その頃、ステラは走りながら森の中で呼びかけていたがまったく反応が無い。
「ちょっと待てっ!ステラ!!」
「あれ?ルド。どうやって追いついてきたの?」
ステラは不思議そうな様子でこっちを見ている。
「お前は本当にこの世界の住人なのか?移動速度を上げる魔法。スピリングだ」
「ルドずるい!それっていんちきって言うよね!魔法を使った時点でルドの負けだからねッ!!」
ステラは本来の目的を忘れ、ただ追いつかれたと言う事に腹を立てているらしい。
「お前は・・・・・・今はそんな事を言ってる場合じゃないだろ?」
「そうだった!」
「はぁ~。ステラ、今ニビルの着ている服はお前が昔、着ていた物なんだろ?」
「うん。そうだけど・・・・・・」
「なら何とか探せるかもしれない・・・・・・貰うぞ!」
俺はそう言うとステラの髪の毛を一本抜いた。
「いった~い。なにするのよ~!」
「なら始めるぞ・・・・・・」
「えっ?」
俺はステラの髪の毛を地面に置いて、周りに魔法陣を書き始めた。ステラはそれを興味津々で見ている。
「うわぁ~。魔法陣なんて、お祖母様が使ってたのが最後だよ~」
「良いから黙ってろよ。集中しないといけないからなっ」
「・・・・・・は~い」
そう、今ステラが言っていたように今の時代、魔法陣を書いてから魔法を使うなんて事は無くなった。何故なら日々呪文は簡略化され、今では使いたい魔法を頭で考え、術の名前を口に出しただけで、魔法が出せるまで簡略化されるようになった。つまり、きちんとした手順を踏んで行う。魔法陣を使った魔法の方が難易度は高いのだ。今、俺が書いているのは使い魔を呼び出す為の魔法陣。使い魔を呼び出してニビルを探してもらおうって訳さ。
「我はそなたの力を望む者。今此処にそなたの姿、そなたの意思を呼び覚まさん。姿を現せバウ!!」
俺が呪文を言い終えると、魔法陣が強い光を放った。
「きゃ!な、なに!?」
「これで使い魔が出るはず・・・・・・」
光が収まると、目の前に居たのは・・・・・・。
「にゃ~」
「・・・・・・」
「ぷふっ!ふふふ・・・・・・あははははッ!バウって言うから犬だと思ってたのに、猫が出てきた!?」
ステラは出てきた猫を指差して大笑いしていた。俺は一瞬何が起きたのか分からなくなって、その場に立ち尽くしていた。
「あはははっ!猫なのにバウって・・・・・・猫がかわいそうっ。やばっ、お腹痛い・・・・・・」
「あぁ~。もう!笑うなッ!!」
「フフフッ。だ、だって・・・・・・猫」
「だから笑うなって言ってるだろ!!」
俺は恥ずかしくて顔から火が出るような思いだった。ステラは笑のツボにはまったのか、ずっとお腹を抱えて笑っている。
「ルドって魔法陣を使った魔法は苦手なんだね。また1つ、ルドの弱点を知ったステラちゃんでした」
ステラは口を押さえてシシシっと笑っている。
「はぁ~。ステラ。そんな事よりニビルを探さなくて良いのか?」
「そうだった!でも・・・・・・ぷふッ」
俺がそういうとステラは俺の出した使い魔を見て笑った。
「お前なぁ・・・・・・」
「ご、ごめんっ。でも猫で大丈夫なの?」
「分からない。とりあえずやってみよう。ステラ、手を出して」
「ん?こう?」
猫にステラの手の匂いを嗅がせると、猫はゆっくりと歩き出した。
「ほんとに大丈夫なの?猫で・・・・・・」
ステラは不安なのか何度も俺の顔を見て聞いてきた。
「にゃ~」
そんな時、猫が止ってこっちを見た。
「なんだ?どうしたんだ?」
「ほら、やっぱり猫じゃダメ・・・・・・」
突然ステラの後ろから大きなクマが立ち上がり、襲い掛かってきた。
「きゃぁぁぁッ!」
「ステラ!!くそッ!フルバインド!!」
俺は光の鎖でクマの動きを封じる。その隙にステラは俺の後ろへと走って来た。
「ルド。このクマって・・・・・・」
「あぁ。このクマはベアー種の中でも2番目に凶暴なティラノグリズリーだ・・・・・・」
今、俺たちの目の前に現れたクマは大きさは5m近く体に、爪と牙は鋭く、黒と茶色のツートンカラーが特徴的なクマで、その大きさと性格の荒さからティラノサウルスに例えられてその名が付けられた、別名人食い熊。5m近い体長を利用したリーチの長さで追ってくるので、見つかったらもう逃げられないと言われ、恐れられている。
「クッ!もう駄目か・・・・・・」
(ティガノグリズリーの腕力は人間の50倍。俺のバインドでも拘束していられるのは30秒って所か・・・・・・。炎、氷、雷系の魔法は皮と脂肪が厚くて内臓まで届かない。なら・・・・・・」
「ステラ!もっと、バウを連れてもっと遠くへ離れてろ!!」
「うん!分かったッ!!」
ティラノグリズリーは相当怒っている様子で俺目掛けて突進して来る。
「全てを飲み込め!アースシンキング!!」
魔法の発動と同時に地面が陥没し大きな穴が現れ、ティラノグリズリーはその穴へと消えていった。
「おぉ~。さすがは大魔王様!」
「誰が大魔王だ!お前もこの穴にたたき落としてやろうか?ステラ・・・・・・」
終わったのを確認してから、俺の後ろからゆっくりと歩いて来たステラを睨みながら言った。
「ほ、ほら!冗談はここまでにして、早くニビルを追わないとだよねっ!」
ステラは慌てた様子で、クルッと回るとバウを地面に置いてまた歩き出した。
その頃、ニビルは・・・・・・。
「うぅ~。どっちから来たのか分かりません・・・・・・」
道に迷っていた。
「とりあえず、一旦戻って・・・・・・」
ニビルが道を道を戻ろうとして振り向くとそこには、たくさんの目が光っていた。
「ひっ・・・・・・お、おばけ!?」
「ニビルよ、良く見ろっ。あれは獣だ・・・・・・」
ニビルの目の前にはダガーウルフの群れが行く手を遮っていた。
「ウィプロス。お願いします・・・・・・」
ニビルは両手を前に出して魔法を使う準備をした。
「ウィプロス。お願いします!」
「ダメだな。ここでは魔法は使えん・・・・・・」
「えっ?どうしてですか?」
「此処で魔法を使えば、お前は生き埋めだ・・・・・・」
ニビルの顔は一瞬で青くなった。そこにまたウィプロスが話し出す。
「だが、このままではニビル。お前は確実に奴等の餌だ・・・・・・」
「な、ならどうしたら・・・・・・」
「走れ!全力でだ!!」
「そ、そんなぁ・・・・・・きゃぁぁぁぁぁッ!」
ニビルは悲鳴を上げながら全力で奥へと走っていった。
ニビルは全力で走ったが、やはりダガーウルフの方が足が速く、どんどんニビルに迫って来る。
「はぁはぁはぁ・・・・・・もう、だめです。食べられちゃう・・・・・・」
ニビルは自分を追い駆けてくる。ダガーウルフの群れを見てふと思った。
(このまま、食べられちゃった方が楽になれるかも・・・・・・)
「ニビル!馬鹿な事を考えるなっ!」
「ひっ!ウィプロス!?」
ニビルの考えを読めるのだろう、ウィプロスの声がニビルの頭の中に響いた。
「見ろ、ニビル。あの光を・・・・・・お迎えだ」
「・・・・・・えっ?」
ニビルが前を向くと洞窟の奥が光って見えた。そこから温かい風がニビルの頬を通り抜けてゆく。
その風はダガーウルフの群れを吹き飛ばすと、そのまま押し流していった。
「ニビル・・・・・・。ニビル・クレスティアあなたを待っていました・・・・・・」
「だれ?どこにいるんですか?」
ニビルは声の主を探して辺りをキョロキョロと見渡す。しかし、どこにも姿は見えない。
「ニビル。私はこっちです・・・・・・いらっしゃい」
声が聞こえた後、奥から緑色の光が漏れている。ニビルがその光の方へと進むと、奥は空洞になっており、そこには青い瞳に緑の長い髪の女性が立っていた。
「きれい・・・・・・」
ニビルはその女性に見惚れているのか、ぼーっとしている。
「ニビル。クレスティアの名を持つ少女。私は風の神シルフィ。契約者クレスティアとの約束により、ニビル・クレスティア。あなたに力を授けます・・・・・・」
「はい・・・・・・」
ニビルは目をつむり、背筋を伸ばしてシルフィが自分の中に入ってくるのを待っていた。しかし、シルフィは一向に自分の中に入って来ようとしない。
「あ、あの・・・・・・どうして入って来てくれないんですか?」
ニビルは目を開き、首を傾げてシルフィに問いかけた。
「あなたは、私の力を何に使いますか?」
「・・・・・・えっ?」
「シルフィ!我等は契約者の意思に従えば良い。無駄な感情は要らぬ!」
「お黙りなさい!ウィプロス。私はこの子と話しています」
ウィプロスとシルフィは互いに睨み合った。
「さぁ。ニビル・クレスティア。私の問いに答えなさい・・・・・・」
「そ、それは・・・・・・」
ニビルは口を閉じたまま、俯いてしまった。
「ゆっくりで良いです。考えなさい・・・・・・」
それから時間をかけてニビルは考え込んだ。
ニビルが考え始めてから1時間くらいが経った時、やっとニビルの口が開いた。
「シルフィ。わたしは、もうだれも、きず付けたくありません。だから・・・・・・そのために、あなたの力をかしてください・・・・・・」
ニビルはそう言って真剣な顔をして、シルフィの顔を見た。
「フフッ。傷付けたくないのに力を求めるのですか・・・・・・良いでしょう。面白い子の様です。私の力。あなたに預けましょう・・・・・・」
そう言ってシルフィはニコッと微笑むと、光の玉になってニビルの中へと消えていった。
(これで、また1つ力が使える。これで、もっと強くなった・・・・・・)
ニビルはシルフィの入った胸を押さえると。目を閉じて少しの間胸に手を当てたまま、立っていた。
ニビルがシルフィの案内で洞窟の出口に着くと、丁度、そこにはルドルとステラの姿があった。
「!?・・・・・・どうしてここに・・・・・・」
「ニビル!心配したんだよ?さぁ~。家に帰ろ?」
ステラはニビルに手を差し出すとニッコリと微笑んだ。
「・・・・・・いやです」
「えっ?い、いやって、どういう事?ニビル」
ステラは動揺した様子でニビルに問いかけた。
「お世話になったお礼は・・・・・・もうお渡ししたはずです」
「あっ。このペンダント?これはあなたにとって大事な物手放しちゃだめだよ。この中の写真はニビルのお母さんでしょ?もし良かったら私とルドもお母さんを一緒に探してあげるよ?だから帰ろう?ね?」
「ステラ!!」
俺はニビルが手を前に出したのを確認して、咄嗟にステラの前に飛び出した。
「お母さんはもう死にました・・・・・・わ、わたしがころしました・・・・・・」
「えっ?嘘でしょ?ニビル。あなたはそんな事する子じゃない!」
「・・・・・・ほんとうです!もう、もう、おいかけてこないでください!!」
「ギガ・ウィンドサイズ!!」
「ホーリーシールド!!」
ニビルは風で作り出した大きな鎌を俺とステラ目掛けて放った。俺はそれを大きな光の盾で受け止めた。俺はニビルの攻撃を何とか防ぎきるとニビルを見る。
「ここはどこ?わたしはどうしてこんなとこに・・・・・・」
(ニビルの言動がおかしい。まるでここに来た記憶が無くなったみたいに・・・・・・まさか!ニビルは・・・・・・)
俺はニビルの強力な魔法には副作用がある事に気が付いた。そういえば、最初に始めてニビルに会った時もアルード鉱山での事を覚えていなかった。
「ルドルさん。ステラさん。どうして・・・・・・」
ニビルは驚いた様子でこっちを見ている。
「えっ?ニビルを迎えに来たのよ?さっきの事、覚えてないの?」
「ステラ!ニビルに魔法を使わせるな!!」
「えっ?どうして?」
「ニビルの魔法には使うと記憶が消える副作用があるんだ!!」
「えっ!?」
ステラは俺の言葉に驚いた様子で目を丸くしている。
「もう、私にかかわらないでください!もう大事な人をきず付けたくない。きず付くのを見たくないんです・・・・・・」
ニビルは泣きながら俺たちの方を見つめている。
「どうして?どうしてニビルと一緒に居ると、傷付くの?私はニビルが居なくなった方がよっぽど傷付くよ・・・・・」
「そ、それは・・・・・・わたしは変だから・・・・・・」
ニビルは俯きながらそう言った。
「どうして変なの?ニビルは私と同じだよ?どこも変な所なんて・・・・・・」
「わたしは!ばけものなんです!!」
ニビルのその言葉にステラは驚いて言葉を失った。
「・・・・・・しせつの人が言ってました。わたしは、ばけものだって、お前のようなばけものでも人のやくにたてるようにしてやるって」
「それって、どういう事?施設って何の?・・・・・・」
「わたしは、ここに来る前のしせつで、いろいろじっけんされてたんです。もう、あそこに戻りたくない!わたしは、またいたいのやくるしいのはいやなんです・・・・・・もう、いじめられたくないんです・・・・・・」
「なら私達と一緒に居ようよ?私達はニビルをいじめたりしないから。ねっ?」
そう言うとステラはニコッと微笑んでまたニビルに手を差し出した。
「・・・・・・あなた達もあの人とおなじです。どうせお金がめあてなんです・・・・・・」
ニビルはそう言って不信感を持った。疑いの目でステラと俺を見た。
「わたしの持っている物で、いちばんこうかな物は、そのペンダントです。だからそれをおいていったんです。もうわたしにはかかわらないで、もし近づいたら、ステラさん。あなたをころします!」
ニビルは手を前に出して、こっちを威嚇しながら前に少しずつ歩いてくる。
「ステラ、今のニビルに何を言っても信じてもらえない。ここは下がろう・・・・・・」
「そんな・・・・・・ニビル」
「さようなら・・・・・・」
ニビルは洞窟の外まで来ると、俺達に背を向け、そのまま歩き出した。
「待って!ニビル。どうしたら私を信じてもらえるの?」
ステラは泣きながらニビルに問いかけた。
「ニビル!お前の魔法は自分の記憶と引き換えにして使える物だ!もう魔法は使わない方がいい!!」
「なら・・・・・・ちょうどいいです。ここで、あなたたちとのきおくをぜんぶけしていきます・・・・・・」
「・・・・・・ニビル。お前!」
ニビルは手を前に出して、魔法を使う体制に入った。俺も姿勢を低くして、ニビルの魔法にいつでも反応できるように構える。
「ギガ・ウィンド・・・・・」
「くッ!やるしかないのか・・・・・・」
魔法を使おうとするニビルに俺も魔法を使おうとしようとした時、ステラがニビルに向かって走っていった。
「やめてニビル!!」
「・・・・・・!?」
ステラはニビル向って走って行くと、そのままニビルを優しく抱きしめた。
「ごめんね、ニビル。私、あなたの事なにも分かってなかった・・・・・・口数が少ないのは、そういう性格だと思ってた・・・・・・」
「はなしてください!はなしてっ!わたしにさわらないでください!!」
ニビルは突然の事に驚き、ステラを自分から引き離そうとじたばたしている。
「あ・・・・・ステラさん!血が、血が出てます・・・・・・」
ニビルが暴れていると、目の前のステラの腕から血が出ているのに気が付いた。ニビルが魔法を使おうと風を集めている時に、その風で出来た傷だった。
「ニビル。辛かったね・・・・・・偉かったね・・・・・・もう、良いんだよ?我慢しなくていいの・・・・・・自分らしくすれば良いの・・・・・・私が、ずっとあなたを守ってあげるからね・・・・・・」
「・・・・・・お母さん」
2人は長い間、抱き合っていた。
「ん?ニビル?」
「すぅ・・・・・・すぅ・・・・・・」
「相当疲れてたんだろうな。だから途中で興奮して話しだしたんだろう・・・・・・」
「ずっと、緊張してたんだろうね・・・・・・でも、これがきっかけで、もっと自分の事を教えてくれると嬉しいなぁ~♪」
ステラはそう言ってニビルの寝顔を見てニッコリと笑った。
俺はニビルを背負ってステラの部屋へと運んだ。
「今日は出られなかったな・・・・・・」
「仕方ないよ、ニビルが居なくなっちゃったんだもん、でも見つかって良かったよぉ~」
「でも、どうしてニビルはあの森に行ったんだろうなっ」
「どうしてって?たまたまじゃないのかな?」
「いや、たまたまで森に行くか?それにもし森に行ったとしても洞窟の中に入らないだろ?」
俺がそういうと、ステラは難しそうな顔をして考え込んだ。
「それは・・・・・・ほら!ニビルは幽霊が見えるんだよ。それで幽霊を追い駆けて、洞窟に入って行ったんじゃないかな!」
「お前のその想像力が、たまに凄いと思うよ・・・・・・」
「えへへ。褒めたって何もしてあげないよ?」
「はぁ~。俺は今日は疲れたからもう帰る。また明日来るから」
ステラは俺の皮肉を嬉しそうに笑うと、俺は溜め息をついてステラの部屋を後にした。
家に戻るとまたセバスチャンが血相を変えて向かってきた。
「ルドルお坊ちゃま!」
「どうしたんだ?セバスチャン」
「また、旦那様がお呼びです」
「分かった。今行くとお父様に伝えておいてくれっ」
俺は頭を掻きながら、セバスチャンにそういうと自分の部屋に向おうとした。その時、セバスチャンが俺の顔を見て言った。
「ルドルお坊ちゃま。私はお坊ちゃまを信じていますよ?何があっても」
「あぁ、ありがとう。セバスチャン」
俺は荷物を置くと、お父様の書斎へと向った。
「失礼します。お父様」
「おぉ。来たかルドルよ・・・・・・」
お父様は本を持ちながらこちらを見た。
「ルドルよ、少し困った事になったのだ」
「困った事?それはなんですか?お父様」
俺は困った顔をしているお父様を少し難しい顔をして見る。
「今日、王から私宛に書状が届いたのだ・・・・・・」
「!?・・・・・・な、何て書いてあったのですか?」
「うむ。それには我が街に凶悪犯が潜伏している。一週間後に徹底的に探索したいとの事だ」
「一週間後・・・・・・」
「ルドル。それまでの間に少しでも遠くへ行きなさい。後の事はこの父に任せておきなさい!」
「・・・・・・はい。よろしくお願いいたします。お父様」
俺はお父様に頭を下げて、書斎を後にした。
俺は自分の部屋に戻ると、ベッドに身を投げ出して天井を見上げた。
「一週間か・・・・・明日ステラに話をしないといけないな、ニビルにも・・・・・・」
俺はそう言うと眠りに付いた。




