表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界珍道中  作者: 十夜
5/25

勇者の勧誘はまだまだ続く

というわけで勇者様勧誘行動は続行中。

サラの行動が妨げられた原因は肩にかけられた手だった。

軽く肩に置かれているようにしか見えない癖にその手はガッチリとサラの体を抑えつけているのだ。


「というわけでお前にはそんな俺たちの専属料理人の栄誉を与えてやろう」

「いりません、なんですかその押し売り商法じみたものは」

「だっておいしかったんだよー、昨日の夜にもここのお店に来てご飯食べたけど凄く美味しかったんだよ!」

「ありがとうございます」


あまりに堂々としたカインの態度に、自分が間違っているのだろうかと思いたくなってくる。

無論そんなわけはないのだが。

続いたルーイの言葉には、素直に謝意を告げる。

どんな人間にだろうと自分の作った料理を褒められれば悪い気はしない。

というよりも素直に言うならば嬉しい。


「だから旅の間も作ってもらえたらなーって。君、簡単な精霊魔法は使えるみたいだし僕たちも危険な目に合わないように精いっぱい守るから」

「ありがごうございます。でもそれ、私の意見は全く考慮されていませんよね。っていうか私を守ってくれる気があるなら旅に連れて行こうとしないでください」

「それではお前の料理が食えんだろうが」

「世界は広いですからね、私などまだまだ未熟者です。もっと上手な人はきっと世界にいくらでもいますよ、ええ」


そこまでお気に召していただけて嬉しいです、なんてリップサービスでも絶対に言わない。

言った瞬間に間違いなく連行される。

精霊魔法は確かに使える。

先にも言った通り通りすがりのエルフ族のお兄さんに教えてもらったからだ。

正確に言うなら食事をしてお会計をしようとしたら財布をすられてて無一文だった、というある意味気の毒なエルフのお兄さんなのだが。

ここアストレア公国は領土の端に大きな森を抱えている。

正確に言うならばエルフの集落のある森、なのだが。

そのためクラン連邦共和国のなかでもエルフ、そしてハーフエルフが多い事で有名だった。

エルフの住まう森と言うのは大陸のあちこちにそれなりにあるのだが集落レベルとなるとそう多くないからだ。

かくして半泣きのお兄さんに「ではお代のかわりに私に精霊魔法を教えてくれませんか?」と頼み込んだのだった。

なにせ覚えていて損はないし、そもそも精霊魔法は分類上は法術、つまりあくまで自分の魔力を媒介に精霊に協力を仰ぐものでしかない。

術の威力などはやはりセンスや魔力量なども影響するが、習得に関してならば大きな影響はない。

もっと言ってしまえば魔力さえあれば誰でも多少は使え、そしてサラにも人並みの魔力はある。

そういう意味では己の魔力だけで術を発動させる魔術を行使し、しかも自称だがオールマィティに使えると言うルーイは凄いのだろう。

そもそも向き不向きもあるのだが、人間は魔術には向かないのだ。

良くも悪くも肉体と言うものに固執するため精神力や魔力が術の威力から成否までを決定する魔術を扱うには精神の強度が足りない。

そういう意味では魔術に向くのは己の存在を魔力で確固たるものとする魔族や精霊に近く質こそ違うものの霊的な存在に近いエルフの方がよほど魔術には向いている。

まあ、捕捉をするのならば厳密にはエルフには魔術は向かないのだが。

彼等は人間よりも遥かに霊的な存在には近いが、なにせよく言えば繊細、悪く言えば打たれ弱い。

己の精神力だけで術を維持する魔術には向かないの一言だ。


「俺はお前の料理が気にいった。よってお前をつれて行く」

「だから私の意見は全く無視ですか。っていうかあなた本当に勇者ですか?」

「ああ、勇者だな。アルスレート国王に命じられてしまったからな」

「国王に?」

「ああ。『あの過酷な環境、我が騎士団の鍛錬にちょうど良いな。カイン、行って魔王を倒して青藍の領土を手に入れて来い』と」

「それどこの侵略者の台詞ですかっ!?!?」


前半部分だけならば言われている事は嬉しいのだが、なにせ態度がデカい。

ついでにカインにはサラの意見を丸ごと無視して自分の意見しか通す気が無い。

だが続く言葉に恐らくその場にいる者全ての突っ込みが一つになった。

人はそれを侵略者と言う。なにせ『ちょっと他国に行ってその領土を手に入れて来い』なんて、そもそもありえない。

間違っても「ちょっと買い物に行って来て」なんてノリで言う言葉ではない。


(部下が部下なら王も王ですか…)


知らなかったアルスレート国王の驚愕の一面を知った気分だ。

アルスレートはクラン連邦共和国の南方、メギロード帝国と国境を接しながらそれなりに友好的な関係を築いているはずなのだが。

アルスレート王が野心家と言うのならば一応同じ連邦に所属する国はともかく、明確に他国と言えるメギロード帝国に兵を出してもおかしくないはずなのだが。

というよりも普通に考えれば遠く離れた最北端の青藍に勇者と賢者とはいえ派兵するくらいならメギロードに派兵した方がよほど効率的なのではないだろうか。

無論技術立国と名高く、独自の機動兵器を有するメギロード相手にそう簡単にアルスレート王国が勝てるとも思えわないが。

アルスレートの騎士団は勇猛果敢と名高く、またクラン連邦でも数少ない機動兵器所有国だ。

その武力は間違いなくクラン連邦でもトップレベルだ。

次で一区切り、できそうな感じ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ