序章 古の伝説
遙か古の時代。
魔界を統一し、人界に魔王が攻め込みました。
しかし異世界より召喚されし勇者様が、魔王を討つために旅立ったのです。
まず付き従ったのは、騎士団長の娘にして麗しの軍神と名高き女騎士様です。
勇者様の剣として活躍し、騎士を志す少女の憧れとして崇められています。
次に盗賊の少女です。
王都のスラムで命を助けられ、その恩に報いるために同行を決意しました。
一行の斥候として活躍し、今も住宅侵入犯が仕事前にお祈りを捧げます。
そして僧侶と魔術師が続きました。
勇者様に惚れ込み献身し、その知恵と魔術と癒しの奇跡をもって旅を戦闘を助けました。
なぜか男性に人気があります。ええ、何故かです。良い子は興味を持ったらいけませんよ。
(中略)
勇者様が魔王の弱点を突きました。
「ぐああああああああっ!」
魔王は絶叫し、腹を抑えて倒れこみます。
「お、おのれ。おのれぇ、勇者よおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! がはぁっ!」
こうして勇者様は魔王を倒し、勇者様の威光を恐れた残党はひれ伏して慈悲を乞いました。
寛大にも勇者様は、魔界が再び攻め込まぬ限りはと命乞いを受け入れたのでした。
愚かで野蛮なる魔族どもは感謝し、以後魔界より出てくることはありませんでした。
勇者様はその後この功績を讃えられ、特別に王陵に葬られることが許されました。
勇者様は過去の偉大なる王族の方々とともに眠りにつき、いまも王国をお守りしておられるのです。
偉大なる我が王国に、栄光あらんことを。
──王国文化庁国威掲揚課の宣教パンプレットより