一話
ある一般的な住宅街。
夕方ぐらいのその時間、どこにでもあるような道に2人の少年が居た。
一人はどこにでも居るような170ぐらいの高校生と思われる極々平凡な少年。
もう一人は誰が見てもイケメンだと認めるだろう180ぐらいのこれまた高校生ぐらいの少年。
「雄介……久しぶりだね」
イケメンの少年が口を開く。
「完二か……」
普通の少年こと、武智雄介が嫌そうな顔でイケメンである明智完二を見る。
二人は隣の家に住んでいる。
いわゆる幼馴染である。
しかし、その二人の関係はあまりにも近すぎた。
明智完二は何でも出来る。
勉強は全国クラス、運動もほとんどが県大会レベル。
イケメンで、人当たりもよく、ゲームなどの知識や、料理、美術品などの知識も高い。
趣味で作った本がヒットし、それで手に入った金も1000万を軽く越えるだろう。
まさに完璧と言っても過言ではない。
そして武智雄介はどうだろう。
全てが平均より多少上といったレベルだ。
全然駄目ではない。否、むしろ良いほうである。
しかし、隣には完璧とまで呼ばれる完二が住んでいる。
親達には比較され、雄介は『完二君と比べると……』などと言われているのを聞いたことがあった。
比較しないのは、雄介の友達と妹。そして、完二のみである。
「君が僕のことを嫌いなことはよく知っている。ご近所さんだからと言う理由で比べられてしまうのも知っている。だけど、気にすることは無い。と僕が言っても嫌味になるだけだよね……」
完二が悪くないのは分かっている。
しかし、18年近くもそんな完璧少年とも言える完二と比べられている。
どれをとっても勝てない完璧少年とずっと比べられ、そのことに耐えられるような器の広さを雄介は持っていなかった。
だから嫉妬している。否、嫉妬とは言えないが、それに近いものを持っていると言ったほうが正しいだろう。
「そういえば君に渡したいものがある」
突然と話題を変え、おもむろにかばんから取り出したのは同じタイトルの2つのゲームカセット。
『Fantasy World Online』
略してFWO。
名前の通りのファンタジー世界を中心とした剣と魔法の王道ものだ。
しかし、シンプルな名前とは裏腹に、そこらの王道ものより出来は数倍すごいと言わていた。
プレイヤーの公平を期すために通常は行われるようなベータテストとも呼ばれる事前に遊んで感想を聞くということもしなかった。
そんなことをするのは只の馬鹿か、よほどの自信があるものなのだろう。
職業による装備制限が無く、ジョブ、いわゆる職業と呼ばれるアバターの戦闘スタイルを無視して装備を変更することが出来る。
たとえば魔法使いが剣を使えるし、弓も使える。
剣士が拳で戦ったり、魔法で戦ったりなどだ。
しかし、最もすごいと言われるのは世界初のAIシステムを開発、採用されているところだろう。
AIとは人工知能と呼ばれ、その名の通り人工的に人間の思考能力を生み出したのだ。
今までもAIと呼ばれるものはあったが、それは決められた行動に決められた反応を返すものであった。
しかし、今回は自身で学習し、人間と同じ思考をするものである。
その注目度により、予約が殺到するこのゲームを持っているのも疑問だが、まず一番の疑問はこのゲームが発売されるのは明日からなのだ。
「知り合いから貰ったんだ。僕もプレイするつもりなんだけど、君達兄妹にもプレイして欲しいからね」
「ありがたく貰っておく……。じゃあな完二」
自身はやりたいこともあって素直にFWOは受け取るが、雄介は完二の顔も見たくないと言う様に足早に去っていった。
去っていく背中に完二は口を開く。
「Redと言う名前でプレイするつもりだ……。良ければゲームでも声をかけてくれ」
「気が向いたらな」
そう言って雄介と完二は別れた。




