「座っている場所の横に」
両手に買い物袋を提げた夫婦。
「あー買った買った。満足!」
「買いすぎだって」
「いいのっ!無駄になる物なんて、買ってない!」
呆れた顔の肇君が、ぶつぶつ言う。
「クロゼット一杯なのに。化粧品だってお茶っぱだって、いっぺんに買う必要性なんて・・・」
「いいじゃない、初売りなんだから」
結婚してから知ったけど、肇君は意外に細かい。
お天気の良いお正月休み、日をずらした初詣は、中くらいに混雑してる。
「何をお願いしてたの?真面目な顔で」
「家内安全、商売繁盛」
家内は安定してるんじゃないかなと思うんだけど。
「お互いイイ年だしさ、親もうるさいし」
「授かりものだもん」
「亜佑美、最後の生理いつだった?」
いきなり聞かれて、思わず指を折る。
「十一月、末かも」
え?あれ?年末ってバタバタしてるから、忘れてた……ような気がする。
でも、前回に確か、年またいじゃうなーって思った記憶が……
「そうだよな、俺もそう記憶してる」
いや、生理の周期なんて覚えてなくていいから。
「病院っていつから開いてる?」
「知らない。大体、遅れてるだけかも知れないじゃない」
「そうじゃないかも知れないだろう!腰冷やすなよ!」
真面目モードの顔の肇君が、あたしの荷物をひったくった。
気が早いったらない。
でも、そうか。待ってるのか。
津田君よりベタベタのパパになりそうな肇君の腕に、掴まって歩いた。
待ってるんなら、願いを叶えてあげたいな。
来たるべき未来に、初詣に願った家内安全が、どうぞ叶いますように。