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「フツーのクリスマス」

クリスマス・イブの晩、都内某マンションにて。




「暁くん、ただいまー」

「ぱぱ、たーいまー」

玄関まで出迎えに来た息子とは逆に、妻はキッチンでバタバタしている。

「やだっ!年末だっていうのに、もう帰って来た!」

やだって何だ、やだって。

今日早く帰ってくるために、無理したんだ。

ネクタイを外しながら居間に入り、そのまま寝室まで歩くと

子供も一緒についてくる。

ベッドに座らせ、自分はパジャマに着替えた。


居間に戻ると、妻は食卓に料理を並べていた。

「慧太、暁くん抑えといて!最近手が届くのっ!」

普段なら子供を先に済ませ、大人は遅めにゆっくり食事しているのだ。

今日は一緒に食卓につくということらしい。

「はーい。ままが怒るから、こっち来とこうねー」


少しだけ華やかな食卓に、三人分の食器が並んだ。

並んだだけで、結局一緒になんか食事はできないのだ。

「瑞穂、先に食っていいぞ。俺が暁くんの世話するから」

あーん、と口を開けさせながら、時々自分の口にも放り込む。

一緒の食卓についていることで、暁は上機嫌だ。

「うーん。クリスマス気分には遠いなあ」

結局、乳幼児のいる家ってのは、ドタバタなのである。


夫が子供を入浴させている間に妻が洗い物を済ませるのもいつものことで

そのまま寝かしつけようとすると

「ままー」と拒否されるのも、普段と同じだ。

一歳児はクリスマスを楽しもうなんて、していない。


「おい、瑞穂。風呂入ってきちゃえよ」

子供と一緒にウトウトしてしまっている妻に声を掛ける。

冷蔵庫を開けた夫は、中にスパークリングワインを見つけて、

華奢なフルートグラスを持ち出した。

ツマミ、何かあるかな……お、イチゴ。


普段のパジャマで浴室から出てきた妻を、「お疲れさん」と労う。

テーブルの上は、ほんのささやかなクリスマス仕様だ。

小さな包みにかかったリボンは、金色。

「待って!私も私も!」

寝室からゴソゴソと出てきた包みが並び、グラスを合わせた。


「結局、普段の夜と変わらないねえ」

「つまり、これが一番幸せってことじゃない?」

顔を見合わせて、一緒に笑う。

そう、つまりこれが、一番幸せなのだ。


メリー・クリスマス。

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