「吹く風は草の匂い」
郊外の公園、ピクニックバスケット持参の家族。
「こんなとこ、よく知ってたねえ」
「この前、ついそこで現場があったから」
自分の身長より高い位置にある子供の腰が気になるらしく
瑞穂は慧太の肩の上ばかり気にしている。
普通なら芝生であるだろう場所に、一面のツメクサが咲き乱れていた。
知られていない場所らしく、休みの日だというのに、人気が少ない。
「くっく、やだ」
勝手に靴を脱ぐ暁を、慧太は笑って見ている。
「何か危ない物、落ちてないでしょうね?」
きょろきょろと周りを見回す瑞穂を押しとどめ、慧太も一緒に靴を脱ぐ。
「足なんか、切ったら切った時だって。気持ちいいぞ」
ツメクサのやわらかい感触が、足裏に心地良い。
レジャーシートを広げて上に座った瑞穂は、諦めたように溜息をついた。
一歳児のやわらかい足の裏は気になっても、嬉しそうに歩く父子は微笑ましい。
高い高いと投げ上げられる我が子は、もう自分の腹には戻らないのだ。
「まま、どーぞ」
花首だけ摘んだニワゼキショウは、どうやって暁の目に留まったのだろう。
白い花の中に見つけた赤い花が、不思議だったのだろうか。
「ありがと」
受取った花を持っていた本に挟んで、瑞穂も靴を脱いだ。
こんな風に楽しめるのは、多分そんなに長いことじゃない。
同じ感覚を楽しめるうちに、楽しんでおかなくては。




