「休日はザリガニ」
埼玉県某所、田圃の真ん中。
転勤で別の保育園になったっていうのに、また勤務先でザリガニ釣りをするという。
思うに、これは昭文が提案しているんだな。
それとも、保育園の夏のイベントに、ザリガニは付き物なんだろうか。
昨年に引き続き、何故あたしがザリガニ釣り。
昭文はとっても上機嫌に、朝早くからサンドウィッチを作った。
「なんであたしもつきあわせんのよ、こんな陽射しの中」
「ひとりでいたって、退屈だろ?」
「けして退屈じゃありませんから!むしろ大歓迎!」
「俺が退屈なんだ」
「他の先生も誘えばいいじゃない。あたしは部外者だよ」
「暑いからって、誰も来ない」
あたしだって、行きたくない。
UVカットフル装備で、溜池の淵に座る。
熊は暑くないんだろうかと、恨めしく見上げても、知らん顔。
とっとと規定量を釣り上げて、帰らなくては。
それでなくとも、昭文と過ごし始めてから日光を浴びることが増えた。
細心の注意を払って日焼けに気をつけても、うっすらとシャツのあとがつく。
「これ以上日焼けしてシミだらけになったら、責任とってくれるんでしょうねぇ?」
「日光浴びとかないと、カルシウムの吸収が悪くなるぞ。
ババアになったときに、俺に感謝しろよ」
相変わらず、口は減らない。
見てろ。シミが浮き出てきたら、エステ代請求してやるから。
それまでは、付き合ってやるか。