「つむじを見下ろして歩く」
埼玉県某所にて、自分の恋人を見下ろす男。
その歩幅で並んで歩くより、抱えて歩っちゃった方が早いっつーの。
さっきから見えるの、つむじしかないぞ。
しかも映画に遅れそうなのって、おまえがメシ食うのに時間かかったからじゃないか。
……そんなこと言うと、多分怒るんだろうなあ。
「熊みたいに丸呑みできないっ!」とか何とか。
怒っても怖くないけどさ、殴られても大して痛くもないし。
大体、「あたしの身体を勝手に持ち上げるな」とか言われたって
そうでもしないと、目が合わないじゃないか。
まあ、俺と普通に目が合う大きさの女でこの性格なら、相当怖いよな。
……小さくて、良かったかも。
しかし、これだけ可愛い顔しててこれだけ強かったら、今までの男って
全員言いなりだったんじゃないか?
スポーツクラブでおまえに目をつけてたのって、一人二人じゃないぞ。
知ってるだろうけど。
だから、ちょっと焦ってたのは確かだ。
それを追い払ったと思ったら、仕事の方に伏兵がいるし。
ま、いいや。
兎にも角にも、今現在俺の女なんだから。
「あたし、ハリウッド映画って好きじゃないのよねえ」
「そうか?俺はお約束のハッピーエンド、好きだぞ」
やっと映画館、到着。