14/35
「女の買い物ってのは」
都内某所、妻の買い物を待つ男。
下着一枚買うだけで、なんだってこんなに時間がかかるんだろう。
寒空の下、店の中に入るわけにも行かずに、じっと通りの向かいで待つ。
男の下着には専門店はない……と、思う。
少なくとも、俺は知らない。Sサイズ探すのに、苦労はするけどね。
まあ、女物の下着は可愛いし、それを着けた美緒はもっと可愛い……おっとっと。
それにしても時間がかかる。何やってんだ。
紙袋を抱えた美緒が店から出てきたのは三十分を過ぎていた。
「ごめんね、サイズ測りなおしてたから」
「ふうん?少しは育ってた?」
「上がってないっ!どうせ中学生サイズよっ!」
「いや、最近の中学生は身体、できてるから」
膨れた美緒が、ぷいっと横を向く。
「いや、俺の手は小さいからね、ちょうどいいけど」
龍太郎の手が、宙で椀型を描いた。
「昼間から、何の話よ」
「美緒ちゃんの胸の話……いてっ!」
拳が龍太郎の頭に飛んだ。
雑貨屋で洗面所のカップを選びながら、今日購入した下着について、龍太郎は思いを巡らせていた。
今晩、何色?