戯言 【短編ハードボイルド】
300人もの見知らぬ顔を前に、わたしは
壇上に上がった
訳知り顔の600個の目が、わたしに集中している
まるで全校集会だな
マイスター株式会社、係長で大学時代の親友で
あります・・・・・・
濃い目だが、スレンダーな司会に釘付けになりそうだった
わたしの嗜好をくすぐるBカップであろう
足首も上々である
マイク合わせは流石だ
わたしの隠れたマイクとも相性がいいだろう
このたびは高田家、吉村家、御両家のみなさん
まことにおめでとうございます
真一君、綺麗な奥さんを射止め、よかったな
そもそも、真一君との・・・・・・
わたしはネクタイを解いた
よくもまあペラペラとわたしもウソが言えるものだ
真夏の炎天下に黒服は勘弁してもらいたいが
猿芝居はどうにかならないものか
なんで、わたしが係長なんだ?
まだ入社半年だぜ
真一よぉ、一緒に留年したよなぁ
成績優秀で卒業だってよ
覚えてるか
腹が痛えって、お前がのたうち回ったこと
あれはな、お前のカレーに下剤10個砕いて混ぜてたんだよ
雄介と面白がってな
楽しい学生時代だったぜ
お前のカミサン、馬子にも衣装だぜ
なにが綺麗だ
こっちまで疑われちまうぜ
美人は3日で飽きるって言うからな
先を見越した選択だな
そう言えば下っ腹がでかいよな
装着ミスか
短いのにな
ご愁傷さま
良子って言ったよな
下宿の辻向かいの飲み屋のオンナ
お前、200万騙されたよなぁ
わたしが捨てたオンナとも知らず
ようやく順番が廻ってきた
駅まで
ルームミラー越しに運転手が頷いた
おめでたいよな
お前ってやつは・・・・・・
タバコの煙が目に沁みた