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ひとくちのひみつ

鮭おにぎりとコンビ

作者: 月丘 佑
掲載日:2026/09/26

 京都御苑の散策中、姿を現した児童公園のベンチへ腰かけて、小休憩を取ることにした。年季の入ったすべり台やブランコを眺めて、地面の緑へ視線を移そうとしたとき、友人が騒ぎ出した。

 何事かと思えば、大きなアリたちが靴の周りをうろうろしている光景に、虫の苦手な彼が面食らっているところであった。場所を変えようかと提案するまでの僅かな空白に、ぼくはとあるコンビニチェーンのクロワッサンと鮭おにぎりが恋しくなった。

 

 自転車にもすっかり慣れた頃。中学の部活で休日がつぶれる日には、唯一の同級生(クラスは違う)と待ち合わせて、昼食を買ってから向かうことが習慣づいていた。クロワッサンと鮭おにぎり。決まってこの組み合わせが、お揃いだった。余裕のあるときには、そこにみかんゼリーも加わる、三点セット。

 この日は、練習試合を控えていたと記憶している。待機場所となった体育館の軒下へ並んで座り、鮭おにぎりを組み立てる。食べ進めるうちに、米粒と鮭の欠片をアスファルトの上へこぼしてしまった。すかさずそこへやってきたのが、アリだった。

「がんばれー」

 どちらが先に声を出したのだろうか。

「おっと、アリくんが、鮭を落としました。ここから持ち直せるか」

 ぼくらは、実況と応援へ夢中になった。永遠に続いてほしいと思える瞬間は、きっとこんな姿をしている。


 「場所、変えようか」

 近衛邸跡地の児童公園。アリを踏まないように立ち上がりながら、鮭のしょっぱさとクロワッサンのバター風味が、頭の中でコラボレーションしていくのがわかった。

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