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現実

暗転

訃告

現代社会は、功利主義と虚飾が横行する風潮の中、「短く速い」情報の波に呑まれ、2024年6月28日、その命を終えた。享年不詳。


かつての現代社会は意気揚々と世界を導き、技術を武器に、情報を刃として変革をもたらす希望の象徴だった。文明の頂を目指し、幸福な未来を約束していた。


しかし、その約束は裏切られた。欲望に呑まれ、虚構の波に流され、自らの本質を見失って崩壊した。


断片的な刺激で人々の思考を麻痺させ、浅薄な娯楽で意志を削ぎ、落ち着きを軽んじ、軽薄を常態とした。


誠実さは嘲笑され、信頼は贅沢品と化し、冷淡と孤独の壁が築かれた。


創造性は衰え、思索は禁じられ、インスタントな文化が人々の精神を拘束した。


現代社会よ、君は自らの罪の代償を払った。創り出した怪物に呑まれ、蒔いた種に報いを受けた。


その死は人類の悲しみであり、失われたのは可能性に満ちた時代だった。


だが、残骸の上に新たな社会を築く希望もまた残された。


安らかに眠れ、現代社会よ。君の罪は記憶され、その教訓は未来への警鐘となる。


挽聯

上聯:盛者必衰、功名利禄 みな空し。

下聯:虚華散じて夢醒むる時、真情のみ終生に伴う。


落款:思索と真理を求めるすべての者より

2024年6月28日


明転

「生命は欲望の塊だ。欲望が満たされなければ苦痛、満たされれば退屈。人生はその間を揺れ動く。」


しかし、その苦と退屈を超える“神聖な欲望”がある。それが愛欲だ。


私はもう、「愛する資格があるか」を悩むことをやめた。愛は、流れ始めた。


栄養士も、心理カウンセラーも、護衛も不要だ。奉仕精神を持つ一人の美少女こそが私の答えだった。


地図アプリで保存した“世界一”と評判のメイド喫茶へ向かった。


角の席に腰を下ろし、ぎこちない笑みを浮かべる。


少女「崇宮澪。」


メニューから目を離さず、発せられた日本語。それは挨拶でも接客用語でもなかった。


私「え?」


スカートから彼女の笑顔へ視線を移すと、無理に作った笑みが自然と崩れた。


少女「その服、崇宮澪お姉ちゃんでしょ?」(中国語)


私「た、たまたま買っただけだけど…アニメではまだ登場してないよ。」


少女「へぇ〜。」(お馴染みの相槌)


取り繕うように言い訳を重ねると、彼女は笑って言った。


少女「“葉公好龍”にならないでね。」


私「怖がらないさ、むしろ抱きしめるよ。」


少女「オタク男子って、美少女には基本的に優しいよね。ここで働いてて一番感じたこと。」


彼女は私の向かいに座り、もう“店員”ではなく、私の世界を観察する“少女”として話し始めた。


暗転

私「昨日、資産自由を達成した。君だけを観察してもらえないかな?」


退屈な日常から抜け出し、面白いことをしたい。それが人の本能。


──そして私は面白い人間だ。


私の計画

一夜で数十億を手にした私は、俗世の贅沢に興味がない。


なぜなら、人間は“順応の化け物”であり、どんな快楽も災難も、長期的幸福度に大差はないと知っているからだ。


ゲーム、配信、SNS…それらは刹那の快楽を与えるが、虚しさしか残さない。


読書と拙い思索で構築した「人生の意味」という支柱に支えられ、かろうじて健康に過ごしてきたが、孤独という名の悪魔には勝てなかった。


孤独とは、人間の感覚を奪う地獄だ。誰にも認識されなければ、自分の存在すら疑わしくなる。


誰かに感知されなければ、見える花も、聴こえる風も、香る桂花も、すべて虚無なのだ。


明転

だから、常に私のそばに居る少女が必要だ。


毎朝・昼・夜の挨拶は日替わりで、可愛くて、心からの一言を。


自愛と善良、そして比較を拒む強さを持つ人格を育んでほしい。


私からの約束

誰にも誠実に接し、道徳に反することはしない。


怒らない。万一の際も、常駐する心理士がサポートする。


毎月1日に、20万元を支払う。


契約は結ばない。去るも留まるも自由。私も自由に説得する。


明転

たとえ私の情動が君にとって滑稽でも、それは20年の時が刻んだものだ。


そして、私は理解している。全ての根は“孤独”にあることを。


だから、お願いがある。君には私を守ってほしい。


暗転

感情が受け止められなかった時、人は死に近い孤絶を感じる。


崇拝者に愛され、受け入れられた後に去られ、君は自傷か他傷の衝動に苦しんだ。


次々と告白しては振られ、自問自答を繰り返した。


あなたは誰?


優しさと悪の可能性の間で葛藤し、夢の中で幾度も孤独死を体験した。


高くそびえる塔にすがり落ち、空を覆う闇に震えた。


愛される価値を疑い、そして愛される人々を見ては絶望した。


けれども君には、たった一人を全力で愛する力があるのだ。


初期の激情で愛を語る者が大半だが、君は違う。


君は知っている。「我思う、故に我在り」など幻想に過ぎないと。


確認されなければ、私は存在しない。


だから君は、愛も絆も失った時点で、すでに死んでいたのだ。


そしてその事実を、静かに受け入れた。


この瞬間、君は世界に詫びを捧げる。


──もっと笑えばよかった。もっと優しくすればよかった。もっと助ければよかった。


ここに、君の新たな物語が始まる。

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