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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

貴方が持ち帰ったお土産は私が全部貰うわ。

「ブライア・ブランウェン夫人、今日から貴女はブランウェン伯爵家の人間だが私が君を愛すことは無いし、君との子どもも要らないから初夜もしない。社交界も最低限でいい。伯爵夫人の仕事だけしていてくれれば生活に困らないようにするから安心してくれ。では私はまだ仕事がある為失礼する。」


今日旦那様となったアイシュリング・ブランウェン様がそれだけ言って私の返事も待たずにさっさと部屋から出て行かれました。

元々ブランウェン伯爵家とカエラム伯爵家を繋ぐ政略結婚で私自身、愛を求めたものではありませんでしたし、幸いブランウェン家には歳の離れた弟君がいらっしゃるので私が子どもを産まなくても大丈夫なのでしょう。

結婚して子どもを2、3人出産するのが当たり前の国の風潮がありますが、正直言って自身のお腹に別の生命を宿し無事出産するという事が私にとっては恐ろしい事なんです。

子どもは嫌いでは無く寧ろ好きな方なんですが、子ども好きだからといって自分のお腹を痛めてでも子どもを産みたいとはならず今回のアイシュリング様の発言は私にとって願ったり叶ったりだった。


「アイシュリング様、流石ね!」


その夜、私はアイシュリング様に襲われる心配も無く、ふかふかの布団でぐっすり寝ることができました。





♢♢♢





あの初夜から3ヶ月ほど過ぎた頃、アイシュリング様が1人のご令嬢をブランウェン伯爵家に招き入れました。

赤ら顔の旦那様は大変ご機嫌で執事達に彼女を頼むといそいそ部屋に向かいます。


「貴女はアヴェリン・オーレリア子爵令嬢よね?旦那様が変な事しなかったかしら?」


私はオロオロ辺りを見渡すアヴェリン令嬢に声を掛け、執事に旦那様の様子をバレないように確認してもらい、侍女に温かい飲み物の用意をお願いする。

執事と侍女はささっとその場から離れ、令嬢と2人きりになった。


「あの……」

「大丈夫よ、怒ってないわ。ここに来るまでに何があったのか聞いても良いかしら?」

「はい。」

「メイ、ありがとう。アヴェリン嬢もあちらに座って飲みながら話しましょう。」

「はい。」


近くの部屋に入りハーブティーを一口飲んだアヴェリン嬢は困った様子で私をチラチラ見てくる為、仕方なく私から話すことにする。


「旦那様、これで3回目なのよ。」

「えっ…」

「勿論毎回未遂よ。貴女みたいな大人しめのご令嬢を連れて帰って来ては先に部屋に入って酔いが回って爆睡。残った令嬢の対応は私がしてるの。」

「もしかしてブリアレン男爵令嬢も…?」

「貴女、よくご存知ね。ブリアレン男爵令嬢もそうだったわ。もっともあの子は真っ先に旦那様との関係を否定して泣き崩れてしまわれたけど。」

「あ……」


目の前の彼女の顔から血の気が引く。

この子は前に来た2人のご令嬢と同じくほぼ無理矢理連れてこられ、戸惑っている内に自身が旦那様との関係を否定していない事に気付いたのだろう。


「落ち着いて。…そうね、私の質問に『はい』か『いいえ』で応えてもらうだけでいいから少し質問してもいいかしら?」

「…はい。」

「まず、貴女は旦那様と今日初めて会ったの?」

「はい。」

「貴女から旦那様に声を掛けたの?」

「いいえ。」

「貴女は旦那様に好意を抱いてるの?」

「いいえ。」

「旦那様は貴女に話しかける前から酔っ払っていた?」

「はい。」

「貴女は旦那様の愛人もしくは正妻になりたいの?」

「いいえ。」


小さなハムスターが猫に狙われて怯えているみたいにふるふる震えながらもしっかり質問に答えてくれる。

特に好意についてと愛人or正妻希望についての質問には顔を青ざめながら首をぶんぶん振っていた。


「なら最後の質問よ。貴女、私のものにならない?」

「………え?」

「政略結婚の愛が無い夫婦でも好みが似てるのよね。私、貴女みたいな小動物みたいな子がタイプなの。」

「わ、私ですか??」

「ちなみに貴女の前に連れてこられたブリアレン男爵令嬢とダフネ伯爵令嬢はこの質問に『はい』って応えてくれたわ。ねぇ、アヴェリン・オーレリア嬢…あの人より私にしない?」


彼女の綺麗な髪を手に取り口付ければじわじわと彼女の顔が赤く染まる。


「えっと…その……」

「困らせてしまったわね。もう夜も遅いし私の部屋に泊まる?それとも一旦家に帰りますか?帰るなら馬車をブランウェン家から出すわ!」

「あの、混乱してるので一旦帰っても良いですか…?」

「それなら明日、彼女達を交えたお茶会を開くから是非いらして。返事はそのお茶会後でいいから。…あ、先程の話は私の冗談ではないのでよくよく考えてくださいませ。」

「は、はい。」


執事の1人から馬車の用意が出来たと連絡を受け、私はそっと彼女の手を取り馬車まで案内することにした。





♢♢♢





「よくそんなホイホイ令嬢を引っ掛かけるよね…ブランウェン伯爵にはバレてないの?」

「毎度酔って連れて帰るだけ連れて帰って爆睡しているからそれらの出来事を夢だと思われているわ。ちなみに屋敷の者や社交界の方々にはフォローを入れているから今の所バレてないわね。」

「普通なら女性を連れて帰ったら激怒するものだけど姉様はそれを利用するんだもんなぁ…」

「パートナー同伴の時はきちんと旦那様に付き添ったり夫人がする仕事はこなしてるんだからご褒美くらいあっていいじゃない!」


実家に立ち寄った際、弟のカシミールから最近はアイシュリング・ブランウェン伯爵と円満なのか聞かれて近況を話したら呆れられてしまったけどなんだかんだ心配してくれたりして弟は本当に優しい子なの。

ちなみに両親には誤魔化してくれるらしい。

私、周りに恵まれてるわね。


「それで?ブライア姉様の恋人は今何人になったの?」

「それは内緒。ここ半年で結構な人数になっちゃったからカシミールにはドン引きされそうだし。」

「じゃあブランウェン伯爵の恋人は何人?」

「それは0人ね。私の好みの令嬢ばかり連れて帰って来るものだから残さず私が頂いてるわ!」

「姉様は女性であれば全員好み!とか言いそうだけど。」

「まあそうかもしれないわ!幸い既婚者や婚約者がいる女性はいないからトラブルにならなくて良かったと思ってるけどね。」

「姉様も女性関係はほどほどにね。」

「分かっているわよ。可愛い彼女達を泣かせたりなんてしないわ!」



そんな私は半年後、意中の令嬢がいる貴族令息の方々から師匠と呼ばれ恋愛指南する事になるのだけど…この時は呑気に弟のほっぺたをツンツン突いていたわ。

まあそんな人生もありよね。


ご覧頂きありがとうございます。

楽しんで頂けたら幸いです。


良ければ評価やブクマ等して頂けると嬉しいです。

あと誤字脱字があれば教えてください。




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他にもお話を書いているので良ければそちらもどうぞ。

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