表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/10

咲いた花の記憶

何と!不眠で完結させるという阿呆なことをしでかしましたが、満足です。後日談どうぞ~

それから数日後。

町は、夏の喧騒を少しずつ手放し始めていた。


夜が静かになり、虫の音が響くようになった。

風も少しずつ、秋の匂いを混ぜるようになった。


俺の部屋の窓辺には、澪の風鈴がある。

チリン、と風が吹けば、あの透明な音が鳴る。

それだけで、胸が温かくなる。


——ありがとう。

きっと、澪はもう“向こう”へ戻ったのだろう。

けれど、完全に「いなくなる」ことはない。

風が吹くたび、あの花が咲くたび、俺はきっと思い出す。


この前、紅岬社にもう一度足を運んだ。


「来てくれてありがとうね」と、楓が笑った。

社務所の縁側で飲んだ冷たい麦茶の味は、不思議と懐かしかった。


「また、“風の間”へ行ってもいいですか」そう尋ねると、楓はそっと頷いた。


「ええ。でも……次に入るときは、“あなたの風”を、ちゃんと持ってきてね」


——自分の風、か。


澪の風に触れたように、

いつか、誰かの記憶になったとき、自分も何かを“風に乗せて”届けられるように。


そんなことを思った。


「話せるように、なったんだね。」

「はい」

「……………お母さんとも、ちゃんと話しなよ」


風鈴が、また鳴る。

俺はそれに応えるように、窓を開けた。


空は、今日もきれいだった。

感想やリアクションお気軽に♪

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ