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久遠の僕と永遠なる君 5話

 あの日、ピクニックから帰ってきて、その後は毎日同じ様な生活を送っている。朝起きたら身支度をして、魔法の訓練をして、家に帰ってから夜は先生とほんの少しだけおしゃべり…。僕はこのままでも十分満足していたつもりだった。幸せだと思っていた。だが、僕は"それ以上"を求めてしまっていた。先生ともっと仲良くなりたい。別に魔法の上達には、先生と仲良くなることなんて必要ないってわかっていた。だけど、僕はゆっくりと先生に惹かれていっていった。

 あれから半月…いや、それ以上の年月が経った。毎日のように魔法の訓練を重ね、僕は気づけば色んな魔法を扱える様になっていた。先生も以前よりは言葉数が増えたように感じる。先生と出会ったばかりの時よりは沢山話せる様になったのが、とても嬉しかった。だけど、このままだと先生と僕は一生距離が空いたまんま終わると思った。仲良くなるスピードがあまりにもゆっくりすぎるのだ。僕は何か策を練るも、何も思い浮かばなかった。もう見慣れた布団の上で僕は先生のことを考えながら眠りについた。

 今日はすごく天気が良かったので、街へ出掛けてみることにした。ただ、一人ぼっちだと寂しいので先生も誘った。「先生!僕と街へ遊びに行きませんか?」先生は「…構いませんよ」と言ってくれた。少し間があったのは、きっと魔法の訓練はしなくていいか?ということが気がかりなのだろう。正直、僕もどうしようとは思った。が、今日だけは気にせず、先生と思いっきり遊ぶことにした。

 街についた。今日はお祭りなのだろうか、あたり一面がキラキラと輝いている。とても綺麗だと思った。僕はこの景色が気に入った。僕たちは街に並ぶ屋台を見て歩いては、たまに僕が美味しそうな食べ物を買って頬張った。確かに、僕は何も食べなくても生きていけるが、それとは別に美味しいものは大好きだ。しかし、ずっと歩き回っているのも少し疲れてしまったので、僕たちは休憩を挟むことにした。僕は先生に話しかけた。「楽しいですね、先生!」けれども先生は「…」。何も話さなかった。まただ、また先生から冷たさを感じた。先生が僕に優しくしようと頑張ってくれているのはわかっていた。けど、先生の感情が少しも僕に伝わらないので、とても寂しく感じてしまった。もう、先生と仲良くなるのは無理なのかもしれないと思った。僕は先生と話すのを諦めかけていた。その時、先生が僕の方を向いて話し始めた。「…私はよく貴方が言う楽しい、嬉しい、幸せと言った感情がよくわからないんです。貴方は私のことを先生と呼んでくれます。それは貴方に魔法を教えているからでしょう。レーテリア、今日だけ私の先生になってくれませんか?私に感情を教えて下さい」。そんな僕が先生だなんて…!僕はできないことだらけで、まだまだダメダメ魔法使いなのに!僕の憧れはすごく遠くにあるのに、務まるわけが…いや!このチャンスを逃したら次はない。僕は先生の提案を引き受けた。「もちろんです先生!僕が先生を楽しませます!」

 夜も深まっていき、そろそろお祭りは終わりを迎える頃になった。僕たちは家に帰り、寝る準備を始めた。相変わらず、先生の表情は動かない。だが、それで折れる僕ではなかった。思い切って先生におねだりしてみることにした。「先生!先生の持っているものから、僕に似合いそうなアクセサリー選んでください!」先生は少し悩んだ後、僕の髪に"羽のような魔道具"を飾った。「この魔道具は魔力を込めると、身体機能をあげてくれます。貴方は身体を動かすのが苦手そうだったのでこれにします。」…実に先生らしい理由だ。だけど、先生から贈られたこの魔道具は僕の一生の宝物に…なると思ったその瞬間、先生が「あ…これはなんですか?これは初めての感覚です」と言って、突然先生が軽く胸を押さえ始めた。僕は「先生?!大丈夫ですか?!どんな感じですか?!」と心配した。どこか具合が悪いのかと思ったからだ。先生は「この魔道具が貴方によく似合うと…そう思っただけなのですが…胸に少し違和感があります。これが"感情"…なんですか?」と今までピクリとも動かなかった顔を動かして言った。少し苦しそうな、初めてのものに驚いた顔をしていた。とても既視感のある先生の表情や戸惑っている様子に僕はハッとさせられた。僕も先生に初めて会ったときに同じようになったからだった。先生が今どう言う気持ちなのかはわからないけど、僕はついに念願の"先生の感情"を引き出すことに成功したみたいだった。僕は大いに喜んだ。「そう!!そうです!!それが感情です先生!!」僕はあまりにも嬉しくて、先生に抱きついてしまった。先生はいつもなら僕の行動が理解できないような表情をして、引き剥がすところだろう。が、先生は「胸の違和感が少し増えました。これが感情というものなんですね」と言い、僕が抱きつくのを止めなかった。先生は元の冷たい顔に戻っていた。先生は常に冷静だから、きっと感情にももう慣れ始めているのだろう。ただ、今日の最後「おやすみなさいレーテリア」と言ってくれた時はほんの少しだけ微笑んでいたように見えた。慣れないながらも、先生なりに僕を安心させようとしてくれたのだろう。ベットに入った僕は魔法の訓練などをすっかり忘れて、明日からどう先生と仲良くなろうかだけを考えていた。

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