銀の7 語られる衝撃の事実
「――――そして……激闘のあと、お互いの絆と友情を熱く結んで、今度出会う時は“一男同士として会おう”と約束を交わしたんだ」
こうして語ってきた拳一郎の顔は、輝いていた。ひじょうに良い男の貌で。ただし、明後日の方向を見ていたのだが。隣りでは、春香が呆れている。そんな彼女もお構いなしに、拳一郎は向き合って、最高に引き締まった表情で力強く最後をこうしめた。
「その体験以来、俺は、自信をますます付けた!!」
格好良い。
死線を乗り越えてきた漢が語るときの顔とは、こうも美しいのか。説得力と厚みがある。でも、可笑しい。
「ふうぅ〜〜〜ん……」
と、決めた彼氏から顔を逸らして、そっぽ向いていた春香は頬を膨らませてムスーーッとしていた。じ つ に、つまらなさそうである。「アタシゃただ、拳一郎さんの武勇伝を聞かされただけですかい」と云っている、実に露骨に嫌な顔。男は、これはマズいと驚いた。
冷ぇーーたい、沈黙。
「そーだ! もうひとつ肝心なこと云い忘れていた。―――これは、春香にも是非聞いて貰いたい」
拳一郎は、おっといけねえ忘れるところだったという感じで、この氷河期のような沈黙を打ち破った。それに反応したのか、春香が、待ってましたと云わんばかりな期待に膨らませた顔で、拳一郎を見つめてその答えを待ち望んだ。
すると、拳一郎の答えは。
「実は、チーフ柴村が改心したのは日下部君なんだ」
「うそっ!?」
いや、本当。
そして今夜。
この星の瞬く夜空に、嘗て拳を交えて死力を尽くし合った男へと、銀色の光りが友を目指して会いに来ていたのだ。
『銀の侵略者』完結
最後まで、このような変な書き物にお付き合いしていただきまして、ありがとうございました。