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銀の3 支配人、頂登場!


 再び、拳一郎の話し。

 トルコライスを平らげたところに、口髭をたくわえたダンディーな男が拳一郎のテーブルへとやってきた。

「どうも、いらっしゃいまし。私がここのオーナーの、いただきと申します」

 細身である上に柳腰な色男。黒い三つ揃いの燕尾のタキシードに、蝶ネクタイ姿。ジェントルメンなナイスミドルであった。そんなオーナーに、拳一郎が爽やかな笑顔で感想を述べる。

「けっこう、いい店ですねっ」

「これはこれは、大変有難うございます」

 人の良さそうなオーラを放ちながら、頂は頭を深々と下げてゆき、そして男と目線を合わせたままの姿勢で、申し訳なさそうに告げた。

「それと、お詫びをひとつ」

「何を?―――――」

 すると、どうした事か。拳一郎の視界がたちまち暗転をしたかと思ったら、強烈な睡魔に襲われてしまい、力を失ってテーブルへと上体を突っ伏したのだ。瞼を閉じる瞬間に見た、頂の顔は邪悪な笑みを浮かべて「おやすみなさいまし」と云っていたらしい。

 早々と寝息を立てている拳一郎を見たのちに、頂は首を後ろに回して店員たちへと「君達ィ!」と呼びかけて集めた。次は、その面々に優しく語りかけてゆく。

「せっかくの客人だ。君達ィーー、優しく且つ優雅におもてなしてあげなさい。―――そう……」

 そして、決めの一喝。

「ヘルス嬢の様になっ!!」

 刹那、ここですかさずの拳が、頂の横っ面をぶっ叩いた。思ってもいなかった不意打ちに、支配人は驚愕。誰だコノヤロウと睨みつけたその先には、もじもじと肩を竦めて頬を赤く染めた女店員が。

「んっ、もうっ……。オーナーのォーー、エッチ」

 女は、柴村という。チーフを担当。百六七といった高身長に見合った、しなやかな躰つき。

 いきなり殴られて、怒るなというのが無理である。青筋を額に浮かばせた頂は、無言で手刀をチーフ柴村の細い首輪へと叩き込んだ。

「あでっ!!」



 そうして暗闇から目を覚ました拳一郎の見たものは、先ほどの頂が見下ろしていた。どうやら、拳一郎はベッドに縛り付けられている。

「お目覚めですな」

 確認のひと言ののちに、オーナーの姿が黒から銀へと一転したのだ。この時ばかりは、驚いた拳一郎。

「きっ……君はっ、オーナー! オーナーなのかっっ!?」

「ふはは。―――初めまして。私はプラネット“V”の者だ」




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