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銀の1 拳一郎の告白


 長崎市のとある緩やかな山の頂上付近で、二人の男女が寛いでいた。男は仰向け、女は体育座り。若干冷たい春の夜風に当たりながら、夜空に瞬く無数の星たちをみて浸っていた。今宵は晴れ晴れとしていて、それらの輝きがはっきりとしており、このまま手を伸ばせば、星が掴めるかもしれないと星を近くに感じた。そう思いながらも、女は隣りで寝転がっている彼氏にチラッと瞳を流した。

 女は彼と付き合いはじめて、かれこれ五年になる。今夜は夜空も綺麗で、とってもいい雰囲気であった。

 え? それは何のかって?



 男は、戰拳一郎いくさけんいちろう。三二歳、地球防衛隊所属。身の丈が百九〇に近く、その鍛え上げた躰つきはまるで鋼の如く。だが、時としてしなやかに動く。細面の男前。筆を根本から置いて、力強く引いたかのように絶妙な太さの眉毛と、優しげな眼差しの中に感じさせる意志の強さ。五分刈りの前髪を少しだけ立てていた。続いて女は、日下部春香くさかべはるか。三〇歳、大手自動車会社に勤務。百六七という身長に、細い躰。卵の輪郭に持つ大きな黒い瞳は、少し垂れていた。肩にかかる黒髪の、顔の左側のみをヘアピンで留めている。

 二人は登山の際の安全な身なりをしていた。厚手のシャツにショートのダウンジャケットを羽織り、厚手のズボンの裾を靴下に入れて完璧に。


「日下部君」

 女が夜空に浸っていた時に、拳一郎から呼ばれて顔を向けた。その男は身を起こすと、大変に引き締まった目つきで彼女へとひと言を告げる。

「ずっと考えていたんだが、君に話そう。―――とっても重要なことだ」

「……えっ」

 彼の言葉に、春香はとっさに顔を逸らした。それは、赤くなった顔を見られたくなかったから。地面に目をやって人差し指の第二関節を口に当てて、高鳴る鼓動を感じながら考えていく。

 ―やだっ、なにかな。やっぱ……その……、プロ、プロポーズってやつ……。今いいムードじゃん……。――「な、なに?」

 はちきれそうな程に膨らんだ期待を抑え込んで、彼に訊く。すると拳一郎は彼女と面と面向かって、大変引き締まった男の顔をして答えた。

「実は俺、侵略者の連中から、この町を救ったんだ」

「…………え゛?」

 春香、一瞬だけ脳内空洞化。

「ど……どーゆーこと?」

「よく訊いてくれた。よし、話そう!」




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