【藍:近衛騎士】はやっぱり脳筋だった
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【観察対象】インダルス・プラエトニ。
攻略難易度:☆☆
黒のようで光の当たり具合で藍色に輝く髪を短髪にした、鍛え抜いた身体だがまだ少年らしさが残る骨格。
ファンブックでは朝から鍛錬を熟し、学園では昼寝を好み、夜はまた鍛錬する、脳筋キャラだ。
虹国の王族は幼少期に側近候補や近衛騎士候補が選出される。多くは当代国王の側近や近衛騎士の子息が推薦され、稀に平民が実力で成り上がることもあったようだが、そう多くはなかった。
近衛騎士も、父親が当代国王の近衛騎士団長ということで選出された一人である。多少父親にコンプレックスはあるものの、次代国王である皇太子の近衛騎士であることを誇りとしていた。
ヒロインとは学園の中庭で出会うことになるのだが、婚約者であり、次代王妃の近衛騎士候補でもある侯爵令嬢とは違う、ヒロインの女の子らしさに惹かれていく。
実直ではあるが、恋愛には圧倒的な弱さのある、ゲーム一攻略しやすいキャラでもあった。そのため大きなイベントは少なく、婚約者である侯爵令嬢との婚約破棄となるイベントくらいしかない。
ペルシャーナ・カヴァリエ
令嬢には珍しく騎士を目指していて、近衛騎士とは恋人や婚約者という関係より、同志といったほうがしっくりくる。
将来は先にも述べたが、次代王妃の近衛騎士だ。これはヒロインがどの攻略対象を攻略しても変わらない軸の一つでもある。つまり皇太子を攻略してヒロインが王妃になっても、近衛騎士になるのだ。
騎士としての強さを持ちながらも、彼女が悪役令嬢となるのは、国を思い、貴族としての規則を守ろうとすることにある。
そのため婚約破棄となるイベントは、ヒロインとの剣術や魔法の実戦勝負と、なかなかに見応えあるイベントでもあった。
敗戦後は態度を改めていく、悪役令嬢としては救いのある令嬢である。
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非常にあっさりしたストーリーが、この近衛騎士ルートだ。
さて、朝から鍛錬に励むとファンブックで知っていたので、六時くらいに見学しに行ったが、近衛騎士の姿は確認できない。
色々な角度から探してみると、ちょうど屋敷から出て走り込みに向かうところだった。
パン屋に毎日通って少し太ったおれはこれ幸いとばかりに後を追う。けれどさすが毎日鍛錬しているだけあって瞬く間に見えなくなっていた。早すぎないか。
周辺の地理は頭に入っていたため近衛騎士が向かった方向へひとまず走り始めたが、まぁ追いつけるはずもなく、一周抜かされる毎にコースを修正することになった。
近衛騎士には四回抜かされたわけだが、一周は約十キロ、トータル五周。
一キロ八分計算で単純計算しても一周八十分、五周で四百分、六時間四十分はかかる計算だが、近衛騎士は二時間半で走っていた。早すぎないか。
マラソン選手どころか、短距離の選手ですら驚く、驚異的な速度だった。それともおれの見間違いか、数え間違いだろうか。
どっちでも構わないが異常な能力の高さだけは再認識できた。
鍛錬時間を把握するため、早朝鍛錬の時間を確認するため毎日通うことにする。
結果六回目にして、四時から鍛錬していることを知った。早すぎないか。
だからこそ、学園では昼寝をしているのかもしれない。
ヒロインが昼寝をしている近衛騎士に躓いて抱き留められるスチルはとても綺麗だった。
ゲームの中で近衛騎士となっている彼だが、正しくは近衛騎士候補であり、虹国の侯爵令息でもある。
そんな彼が一人で走り込みをするなど危険すぎないかと思ったが、よく観察していると身体を薄い結界が覆っていた。
なるほど、襲撃されても一度目は結界が阻み、襲撃に気づくようになっており、それによって反撃できる。反射神経が必要な対策ではあるが、近衛騎士の能力からすれば問題ないようだ。
しかし脳筋キャラだと思っていた近衛騎士が、結界をここまで薄くできるほど魔力操作ができるとは。ファンブックになかった情報におれはニヤニヤした。
攻略対象の中では一番身体を鍛え、細マッチョとして人気のあるキャラだが、確かにこれだけ鍛錬していれば細マッチョも維持できるだろう。
おれと近衛騎士は学年が同じなので、もうすぐ入学の時期だ。近衛騎士の婚約者である侯爵令嬢は年上のため、すでに入学している。ゆるふわウェーブをポニーテールに結い上げている格好可愛らしい令嬢だ。
取り敢えず、近衛騎士の毎日はルーティーンの繰り返しのようで、変化するのは婚約者に会う時くらいである。けれど婚約者と会う曜日がいつも同じなので、近衛騎士はそれすらもルーティーンにしている可能性があった。
余談だが、走っている途中薬草の群生地を発見しお小遣いアップに貢献してくれた。
ルーティン化しすぎていて、二月も観察すれば充分である。あとは学園に入学してから観察しよう。