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『虹色王子』について

 まず、この世界である乙女ゲーム『虹色(レインボー)王子(プリンス)』について、覚えていることを記録しておく。

 異世界転生物ではよく記憶が薄れていったり、夢で新たな情報を得たりすることがある。これはその時のために遺しておくのだ。

 もちろん、誰かに見られないよう保管には気をつけている。色々な異世界転生物を見てきたことを踏まえると記録が無駄になることはないだろう。


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 魔法が存在する世界

 貴族と平民という身分制度

 属性の魔法から七色に(たと)えられた攻略対象

 平民の中で異常な魔力量を(ほこ)る少女

 そして貴重な属性である少女

 学園生活での少女と攻略対象の関わり

 少女をイジメる攻略対象者の婚約者である悪役令嬢

 攻略対象者による悪役令嬢の断罪

 恋が(みの)らないバッドエンドは攻略失敗

 恋が(みの)るハッピーエンドは攻略成功


 スマホゲームの一つとして始まった『虹色(レインボー)王子(プリンス)』は、書き(しる)したように流行(はや)りを盛り込んだ、ある意味ありきたりな乙女ゲームだった。

 しかし、キャラ原案を担当した絵師の美麗なキャラたちによって徐々にアクセス数を増やし、スチルが神がかっていると有名になった作品でもある。


【桃:ヒロイン】 エリュテ・ゴニスタ

 属性:神聖魔法 

【赤:暗殺者】  レドル・キラー

 属性:闇魔法

【青:王弟】   ブルネット・レーゲン

 属性:水魔法

【緑:魔導師】  グリード・マージ

 属性:風魔法(適性が一番高い)

【黄:皇太子】  イェーガー・レーゲン

 属性:光魔法・火魔法

【橙:第二王子】 オレーグ・レーゲン

 属性:光魔法

【紫:側近】   パートン・アントゥ

 属性:土魔法

【藍:近衛騎士】 インダルス・プラエトニ

 属性:適性なし(身体強化使用可)


 メイン登場人物は書き(しる)した通りだ。

 この乙女ゲームの特色はタイトルの通り【色】にある。

 虹は七色を示し、ヒロインはそこに当て()まらない特別な色――【(ピンク)】となっていた。

 多くのヒロインが可憐や親しみやすい印象を持ち、その容姿を表現する際に使用される色が(ピンク)であり、恐らくそこからヒロイン=(ピンク)という印象はきているのだろう。

 それに(なら)ったかのようにここでもデフォルト仕様が適用されていた。

 また、ゲーム上でキャラを(きわ)()たせるためなのか、攻略対象もヒロインも持ち色が髪色になっている。

 見た目で解るところが推しやすいと、カップリング推しよりもカラー推しのほうが圧倒的で、その辺りは商業的に狙っていたのだろう。

 雑なのは悪役令嬢の容姿で、過激さや腹黒さを(あらわ)す赤や黒といった色は使われず、この世界で一般的な茶色を中心とした茶金までの色合いに設定されていた。おかげでヒロインをイジメる役どころのわりに印象が薄い。

 さらには何を思ったのか、各攻略対象(ごと)に悪役令嬢が存在するせいで、担当の色でない場合はほぼモブ扱いという微妙な立ち位置だった。

 (ほか)の色の時でもストーリーに絡んでくる攻略対象とは扱いの差が歴然としている。

 各色でストーリーはそれぞれ変わってくるが、根底にある真髄は、“平民と貴族という身分社会で、身分違いの恋に燃える”だ。

 魔法学園の中では身分に関係なく平等だと(うた)ってはいるが、生まれながら身分を教え込まれている国では平等などなく、平民と貴族という線引きが明確にされている。

 身分を乗り越えるため無茶をするヒロインをフォローしたり、魔法の向上に励むヒロインと共に切磋琢磨したり、まぁ色々としながらイベントを乗り越える(たび)に絆が深まるプロットなのだ。

 イベントの多くは二人きりで何かを成し遂げることだが、悪役令嬢の断罪時には魔物討伐が起きたり、周辺国と戦争の危機に(おちい)ったりと、危険要素も高まる。

 そこで【(ピンク):ヒロイン】の魔法が開花し、貴重な魔法の遣い手として認められ、攻略対象と結婚できる地位を得るのだ。

 このゲームで求められるのは、恋愛イベントの攻略と魔法レベルアップ。

 攻略対象もそれぞれ魔法レベルアップをしておかないと、最後の貴重な魔法の遣い手として【(ピンク):ヒロイン】が認められることはなかった。


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 え? ありきたりじゃんって?

 最初に言っておいただろ、流行(はや)り要素を盛り込んだゲームだって。

 それに小説や漫画、ドラマなども同じような設定で、違う作品というのは多く存在している。似ているようで全く同じ作品ではないため、それぞれにファンがつく。

 ゲームもまた同じことだ。

 書き手や作り手の()(さい)とも言える違いを見つけ、楽しむのがおれ流である。

 ネタバレしておくと、攻略最難度は【赤:暗殺者】でハッピーエンドまで辿り着くほうが()(なん)(わざ)だ。ハッピーエンドもヤンデレ軟禁ルートのため、ハッピーエンドなのか不明すぎる。

 初心者向けは【藍:近衛騎士】と【橙:第二王子】で、接触の機会が多い上に、単純純粋な攻略対象のためバッドエンドになりづらいのだ。むしろこのルートではバッドエンドに辿り着きにくい。

 おれは一発目に【緑:魔導師】を選択して攻略できず、初心者向けからやり直した口だ。

 どの攻略対象を選択するか、その辺りは好みの問題だろう。

 一番綺麗だと印象に残っているスチルは【黄:皇太子】との結婚式だ。

 画面いっぱいに広がる二人の婚礼衣装の華美もさながら、幸せいっぱいだと笑む二人の表情に目を奪われたものである。

 やはり王族――しかも時期国王だけあって豪華絢爛さもあり、絵師の意気込みすら感じられる迫力があった。

 (ほか)にもお気に入りのスチルは数多くあるが、文字では言い表せないため割愛する。

 おれはそんなスチルが見られる世界を生きている実感(こと)に日頃から感謝していた。


 さて、このゲームの舞台である魔法学園は二年間であり、おれはもうすぐ入学する。

 攻略対象も【藍:近衛騎士】【紫:側近】【黄:皇太子】が同じく入学するはずだ。【青:王弟】は学園の名誉顧問として、【緑:魔導師】は臨時教師として、魔法学園に登場する。

 ちなみにヒロインと【橙:第二王子】は一つ下のため次年度の入学だ。

 つまり乙女ゲームの始まりは次年度であり、おれは現在情報収集の真っ最中なのである。

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