2.素敵なキス
はじめて描いた、キスシーン。
実際に相手してもらって、試しながら描きました(照)
※noteにも転載しております。
そして、ふたつの、ぺちゃんこになった段ボールが。
あたしの部屋に残されたのだった。
そう結ぶためには、あたしの部屋は、ちょっと散らかりすぎていた。
毎週買ってくる、マンガや小説が積まれ。なんとか山脈のように、その高さを競っている。
未整理のものは、買ってきたそのまま、ベッドのうえ。
こちらは、まさに「寝かせて」あるってかんじ。
占領されたベッドをかたづけるのが、めんどうになって。そこらで、ごろんと眠るのはいつものことだ。
でも、それがよくない。
浅い眠りは、長い腕をはやしていて。あたしの胸の奥に、ずぶすぶと沈めておいたものを、ひきずり出す。
そう。そう。
ひきずり出す、といえば、段ボールだ。
あたしはそこから。500mℓより、ちょっとだけおおきい、ペットボトルの水を一本とり出した。
近所のドラッグストアで、ひとケース、買っておいたんだ。
「ふつうの」「おいしい」水なんてものが。習慣的に飲まないあたしの部屋にあったって、なかなか減っていくものではない。
だからこそ、こんなとき。
買い置きとして、役に立つのだけれど。
ききっ、ぱんっ。
白いふたを、ねじってあけて。
あたしは、口をつける。
あたしの上唇が、ペットボトルの上唇をくわえこむような、はしたない飲みかたをしていたのは、いつまでだったか。
彼の下唇に、さらに、そのしたから。
あたしの下唇を、受け皿のように、そっと重ねる。
すでに、おちょぼ口を、めいっぱいひろげていた、彼に応えるように。
あたしも、口をかるくひらくと、上唇を、彼のおちょぼ口のなかに、すべりこむようにして。
彼の上唇を躱して、内側から、むしろ下唇のほうをはさみこむような、かたちをとる。
ペットボトルとのキスで、いちばん素敵なところは、おたがいの鼻があたることがないことだ。
唇のかたさも、気にならない。
首をかしげて、角度をかえてやることも。
舌を絡ませてやることも必要ない。
鼻があたらないだけで、じゅうぶんに。
彼とのキスは、あたしの人生で上位を占める。
もし、ペットボトルに鼻がついたら、あたしは買うのをやめると決めていた。
ぜったいに、買ってやるものか。
私に協力してくれた相手は、水じゃなくて、炭酸飲料のペットボトルでしたけど(笑)