エドモント国王との会談
その日、僕達はべテルギ王国の王都イスカントの街を散策することにした。何故か、僕の左手をロザンヌが、右手をリリーが繋いでいる。最初に中央広場に向かう。途中にオシャレなレストランや服屋が並んでいた。
「ねぇ! シルバー! 服屋さんに寄っていいかな? アスラ魔王国には欲しい服がないのよ!」
「いいよ。行っておいでよ。待ってるから。」
「ダメよ。シルバーに選んでもらうんだから。一緒に来て!」
僕はリリーに服屋に連れていかれた。当然、ロザンヌも一緒だ。
「なら、私もシルバー様に選んでもらいたいです。」
なんか2人が張り合っている。結局、僕は2人の服を選ぶことになった。それにしても、女性の買い物は長い。2時間ほどしてやっと買い終わったときには、すでに外は暗くなっていた。
「ロザンヌ! 屋敷まで送っていくよ。」
「えっ?! シルバー様は我が家に泊まらないんですか?」
「そうだね。久しぶりの王都だから、宿屋に泊まるよ。」
「なら、私もご一緒します。」
「ダメだよ。ロザンヌは侯爵令嬢なんだから。外泊なんかしたら問題になるよ。」
「そうですね。なら、諦めます。」」
僕達はロザンヌを侯爵の屋敷に送り届けて、街の宿屋に泊まった。当然一部屋だ。なぜか、今日のリリーはやたらとスキンシップを求めてくる。僕はいつものようにリリーに背を向けて寝た。そして翌日、僕達はスチュワート侯爵と一緒に城に向かった。宰相が一緒ということもあり、すんなりと城に入ることができた。そして、僕とリリーが応接室で待っていると、エドモント国王とスチュワート侯爵がやってきた。
「お久しぶりです。シルバー殿。」
「久しぶりだね。エドモントさん。アッ、エドモント国王。」
「いいんですよ。今まで通りで。」
「なら、お言葉に甘えてそうするね。」
「ところで、隣の女性はどなたですかな? シルバー殿の奥方ですか?」
すると、リリーが真っ赤になってしまった。
「違うよ。リリーは・・・」
僕が紹介しようとすると、リリーが自分で答えた。
「アスラ魔王国の10人衆の一人、リリーです。」
なんかいつもと違う。ぶっきら棒な言葉遣いでなく、しっかりと話していた。どうしたんだろう?
「ほう! 10人衆ですか? なら、セリーヌ殿のような強者が他にもいるということですね?」
「ええ。そうですね。確かにセリーヌは強いですね。ですが、宰相のブラッドの方が強いかですよ。」
「そうですか? なるほど人々が魔族を怖がる理由が納得できますよ。」
「でも、シルバーが一番強いです。以前10人衆のなかで、ブラッドと私を含めて4人が同時にシルバーに挑みましたが、一瞬で負けましたよ。」
リリーが僕を見た。僕は何の反応もしない。
「言ったらまずかったの?」
「別に。」
エドモントもスチュワートも驚いている。
「シルバー殿の力がそれほどとは、想像以上ですな。」
すると調子に乗ってリリーが話始める。
「この前、ヒュドラも一瞬で討伐したし、精霊王もシルバーの・・・」
「リリー!!!」
自分でもしゃべりすぎたと思ったのかリリーが自分の口を手でふさいだ。だが、すでに遅い。エドモントとスチュワートが同時に聞いてきた。
「今、精霊王が何とかと聞こえましたが。」
「ああ、精霊王は昔からの友人だからね。」
「え———!」
驚くのも無理はない。人族にとっても精霊王は神のような存在なのだ。僕は話を変えようと聞こうと思っていたことを話した。
「エドモントさん。イグドラ帝国ってどんな国なの?」
「昔から軍事に力を注いでいる国ですよ。このエドパルド大陸の最北に位置する国です。以前は小さな王国だったのですが、クーデターで現在の皇帝アルカイックが皇帝の地位についてから急成長したんです。周りの国を次々に攻め滅ぼして、現在ではこのべテルギ王国のつぎに大きくなりました。」
「どうやらその国の貴族が、エルフ族を誘拐しているようなんだよ。」
「ありえますね。シルバー殿もご承知の通り、以前この国にも同じようなことがありました。闇組織キングコブラの犯行でしたが、その首領はこの国の公爵でしたから。」
「そうだよね。」
するとリリーが聞いてきた。
「それって、ミーアやキャロット、ヨーコのこと?」
「そうだよ。」
「それで、シルバー殿はどうなさるおつもりなんですか?」
「誘拐を止めさせるようにするよ。」
「ですが、もしかすると皇帝が直接かかわっているかもしれませんよ。」
「シルバー! そんな国滅ぼしちゃえばいいわよ!」
リリーが過激な発言をした。エドモントの顔がこわばり、スチュワートの顔から血の気が引いていく。
「そうだね。誘拐を止めないようなら。国ごと消滅させるかもね。」
「ま、待って欲しい! シルバー殿! 国民達はどうなるんですか? 国民には罪はありませんよ。」
「そうだよね。なら、犯罪を犯した人達を全員始末するから、その後エドモントさんが管理してくれる?」
「いくらシルバー殿のお言葉でもそれは無理です。そもそも、我が国と帝国は接していませんから。」
「なら、どうしたらいい?」
「能力のある者を登用して議会政治の国を作るのがよろしいかと思います。」
「なるほどね。アマゾル大陸と同じようにすればいいんだ。さすがエドモントさんだね。」
「アマゾル大陸というと、最近できたアニム共和国のことですか?」
するとリリーが少し出てきた胸を前に出して言った。
「そうよ。アニム共和国はシルバーが作らせたのよ!」
すると、エドモントもスチュワートも驚いた。もう何度目だろう。この2人は良く驚くと感心してしまった。
「そうでしたか? あの大陸では2つの王国が戦争していたと思うのですが。」
「そうだね。悪魔族が原因さ。ここにもいたでしょ? 悪魔族が。」
「そうでしたか。では、その悪魔族もシルバー殿が討伐されたんですね?」
「まあね。でも、親玉はまだだからみんなも注意してね。どうやら、人族の国に隠れているらしいからね。」
「わかりました。我々も気を付けるようにしましょう。」
話も終わって僕とリリーは。スチュワートさんの屋敷に戻ってきた。すると、家の中からロザンヌがすごい勢いで飛び出してきた。
「シルバー様! 遅いです! 早くまた街に行きましょ!」
「ロザンヌ! ごめん! 僕達、すぐにいかなきゃいけないんだ。」
「どこに行くんですか?」
「イグドラ帝国だよ。」
「イグドラ帝国ですか? 凄く遠いじゃないですか? それにこの大陸の最北端だから、夏でも寒いところですよ。」
「そうなの? なら、厚着して行かないとね。」
僕はリリーを見た。リリーはいつものようにショートパンツにTシャツのような簡単な服装だ。しかもおへそを出している。
「何よ! わかったわよ。一度魔王城に戻ってくれる? 着替えるから!」
「じゃあ、また来るから。」
「きっとですよ。きっとまた来てくださいね。」
「うん。」




