精霊王クイーン
エルフの国の王都フェアリーを襲った魔物の集団を討伐したシルバーとリリーは、女王フェアリアル1世とカシャ、エリーヌ達を連れてドラッコ王国のビザンツ城に行くことになった。オレの呼びかけで、全員がオレの近くに来た。リリーはオレの腕を掴んでいる。
『転移』
オレは会議室にいた全員を連れて、ビザンツ城まで転移した。いきなり景色が変化したことに驚いている。
「何がどうなってるの?」
「師匠! ここどこですか?」
「シルバー殿! ここは?」
すると、異変に気が付いたのかドワーフ族の兵士達がやって来た。その一番後ろにドルトンの姿があった。
「シルバー殿ではありませんか? どうなさったのですか? 後ろにいるのはエルフ族ですかな?」
「そうだ。エルグラン王国の女王と宰相を連れてきたんだ。テドラ国王はいるか?」
「はい。ただいまお呼びしますので、会議室でお待ちください。」
オレ達は兵士に連れられて会議室で待っていた。そこにテドラ国王とドルトン、デルタ王子とシグマ王女がやって来た。王子と王女は部屋に入るなり、いきなりリリーに抱きついた。
「お姉ちゃん。会いたかたよ!」
「ありがとう。2人ともいい子にしてたかな?」
2人はドルトンの方を見た。
「妻のダリアと私が2人の教育係を兼任しているんです。
「妻?」
リリーが不思議そうにオレの顔を見た。
「あの後、王子と王女に言われて俺達結婚したんですよ。」
「そう。おめでとう。良かったわね。」
「はい。シルバー殿とリリー殿のおかげですよ。感謝しています。」
ここで、オレが本題を話すことにした。
「テドラさん。フェアリアルさんもアタゴ山とタケオ山の交換には賛成なんだって。どうかな?」
「ありがたいです。我々ドワーフにとって鉱石は命の次に大切ですからな。その代わり、我々が作成した農具や武具をエルグラン王国にお売りしましょう。」
すると、女王の隣に座っていたカシャが言った。
「それはありがたい。我々の技術ですと丈夫な農具や武具が作れないのです。」
しばらくお互いの国ついて談笑していた。
「ドワーフ族とエルフ族はもともと同族なんだから、これから国交を結んで交流したらどうかな?」
オレが提案するとエルフ族の女王が言った。
「シルバー殿。我々もそうしたいのですが、それには問題があります。」
「問題?」
「はい。人族です。人族がひそかに我が国に侵入して、女や子どもを攫って行くんです。」
確か獣人族でも同じことがあった。人族の中に、自分勝手で欲深い者達がいるようだ。
「わかったよ。人族の件はオレに任せて欲しい。オレが何とかするよ。すべての種族が安心して交流できるようにするさ。」
オレ達は再び王都フェアリーの王宮に転移した。
「感謝します。シルバー殿。おかげで、ドワーフ族との関係も修復できました。」
「別にオレに感謝する必要はないさ。この世界が平和になってくれればいいだけだから。それより一度、世界樹に行きたいんだけど、いいかな?」
「はい。」
オレ達は街の中心広場に来た。他の国、他の街に比べて、王都フェアリーの中心広場ははるかに大きい。だが、今日はこの国最大のお祭りの精霊祭が行われている。広場全体が人々で埋め尽くされていた。そこで、女王のフェアリアルが民衆に大きな声で言った。
「皆の者! 今日は精霊祭です。ここに世界樹を出しますので、後ろに下がるように。」
人々が一斉に広場の中心からいどうする。中央に人がいなくなったところで、女王が手を広げて何やらぶつぶつ言っている。すると、目の前に巨大な木が現れた。リリーも驚いている。
「凄い大きな木ね。雲の上まで行ってるわよ。」
「まあな。世界樹だからな。」
オレは精神を集中させた。すると、オレの周りに無数の光が集まり始める。その中で大きな光が人型になっていく。そして、木の幹からひときわ大きな光が現れ、オレの前でその姿を現した。この世のものと思えないほどの絶世の美女だ。
「お久しぶりです。魔王様。」
「久しぶりだな。クイーン。」
「今日はアテナ様もご一緒なんですね。」
「まあな。」
「何かありましたか?」
「別に何もないさ。また、ナルーシャ様に頼まれてな。この世界を平和にしろってさ。」
「そうですか? 私達も協力しますよ。何なりとお申し付けください。」
「なら、この大陸にいる人族をこの場所に集めてくれるか?」
「わかりました。すぐに、手配しましょう。」
「でも、よくオレのことが分かったな。」
「当然です。姿が変わろうと、我が主のことを間違えるわけありませんから。」
「別に主じゃないけどな。クイーンもエンシェントもオレの友人だからな。」
「はいはい。そういうことにしておきましょう。」
「じゃあ、頼んだよ。」
「畏まりました。」
オレの周りの光がすべて消え、世界樹もその場から消えた。周りを見ると、大きな口を開けて中央広場にいた全員が呆然としている。リリーまでもが呆然としていた。
「シルバー殿。もしかすると、今話をされていたのは精霊王様ではないんですか?」
「ああ。クイーンのことね。そうだよ。」
いきなり女王とカシャ、それにエリーヌ達がオレに片膝をついた。それを見て、周りにいた民衆も全員がオレに平伏した。
「どうしたの?」
「シルバー様は何者なんですか? 精霊王様を従えるなんて、神様かあの伝説の魔王アンドロメダ以外にはいません。」
「そうなの? 従えているわけじゃないさ。昔からの友人だよ。目立つから普通にしてくれないかな。」
周りのエルフ達が驚いている。女王と宰相が魔族のオレに臣下の礼を取っているのだ。驚くのも無理はない。
「もう一度言う。普通にしてくれ!」
「わかりました。」
「それから、『様』はダメだから。」
「はい。なら、シルバーさんではどうでしょう。」
「しょうがない。それでいいよ。」




