魔獣の大群
僕はリリーを見た。リリーも頷いている。僕とリリーは自らにかけていた魔法を解除した。すると、2人の身体から真っ黒なオーラが溢れ出る。背中には黒く大きな翼が出た。そして、オレの姿は精悍な男性へと変化していく。全員が驚いているが、オレとリリーはそれを無視して上空に舞い上がり待機する。
「リリー! オレが魔法を放つから、残った魔獣を殲滅するぞ。」
「わかったわ。」
オレは魔力を一段階高くする。すると、オレの身体から出ていた黒いオーラが眩しい光に代わっていき、背中の黒い翼が徐々に白く変化していった。
『メテオール』
オレが両手を広げて魔法を詠唱すると、上空が赤く光り始め、雲の裂け目から真っ赤に燃え上がった隕石がいくつも地上に降り注いだ。辺りには地震のような地響きがおこり、この世の終わりを告げるような爆音が鳴り響いた。
「ドドドドーン」
「バキバキバキ」
「メリメリドッガーン」
街の人々も兵士達もエリーヌさえも恐怖に怯えている。
「な、な、なんなんだ? あれは!」
「もう終わりだ! この世界は滅びるんだ!」
「神の天罰だ~!」
フェアリアル1世とカシャは驚きで固まっている。辺り一面、水蒸気と大量の砂ぼこりでうっすらとしか見えない。
「リリー! 残りを討伐するぞ!」
「了解!」
『ファイアードラゴン』
リリーが魔法を発動すると、巨大な炎の竜が上空に現れ、生き残った魔獣達を飲み込んでいく。
『シャイニングドラゴン』
僕が魔法を発動すると、太陽のような大きな球体が上空に現れ、その球体が眩しく光るドラゴンへと変化していく。そして、大きな口から凄まじい威力の光線を地上に放った。光線の当たった場所には何も残っていない。水蒸気と砂ぼこりが少し収まって、徐々に見えてきた。
「あれは師匠なのか?」
「でも、あの姿は魔族なの? 天使なの?」
シャルケは何も言わずにただ震えている。
「陛下! あの者達は何者なんでしょう?」
「恐らく神様が遣わしてくれた救世主よ。」
しばらくして、完全に砂ぼこりが収まると、辺り一面を覆いつくしていた魔獣達は1匹も残らずに消滅していた。そして、森のかなり奥深い場所までが何もない焼け野原に代わっている。
「シルバー! 森がなくなっちゃったわよ。」
上空を舞いながらリリーが声をかけてきた。
「大丈夫さ!」
「大精霊達よ! 我に力を! ここ一面を復活させよ!」
すると、オレの周りに眩しく光る球体がいくつも現れ、その光がすべて人型へと変化していく。その人型の光が、手を振ったり、息を吹きかけたりしている。すると、焼け野原になった場所にどんどん木が生えていく。そして、わずかな時間で元の森へと戻ってしまった。
「さすがに疲れた。みんなのところに戻るぞ!」
「うん。」
オレとリリーはエリーヌ達のいる場所に戻った。姿は魔族のままだ。するとエリーヌが聞いてきた。
「あなた達、本当にシルバーとリリーなの?」
「そうさ。これがオレ達の本当の姿だ!」
「二人とも魔族だったの?」
「ああ。その通りだ。」
そこに女王とカシャがやって来た。そして、オレに向かって言った。
「もしかして、あなたはアスラ魔王国に誕生したという魔王ですか?」
「そうだ。オレは魔王シルバーだ。」
「やはりそうでしたか。」
エリーヌ、カイト、シャルケの反応がすさまじい。3人とも口から魂が出たような顔をしていた。
「この国を救っていただいて感謝します。シルバー殿。」
「別にいいさ。それよりも大事な話があるんだ。それを伝えにここまで来たんだ。」
「そのために、わざわざマジカル大陸からやってきたんですね。エルフ族に化けてまで。」
「まあね。」
オレ達は全員で王宮まで行った。当然エリーヌ達も一緒だ。今は王宮の会議室にいる。
「シルバー殿。話って何ですか?」
「オレはこの世界を平和にするようにナルーシャ様から頼まれたんだ。」
「やはりそうですか。」
すると、リリーが言った。
「驚かないのね?」
「ええ。神の啓示がありましたから。」
「さっき言っていた英雄のことね。」
「そうですよ。さっきの啓示にはシルバー殿が言った通り、続きがあるのよ。『この国に英雄が現れるとき国が大惨事に見舞われる。英雄を頼りなさい!』ってね。」
「オレもドワーフ族とエルフ族が争っているという噂を耳にしたんだ。だから、ドワーフ族のテドラ国王に会って争いをやめるように話をしたんだよ。」
「テドラ国王は不治の病と聞いていましたが、ここ最近、国王が国政に復帰したと報告を受けました。もしかして、シルバー殿が関係しています?」
するとリリーが説明した。
「宰相のジェットが毒を盛っていたのよ。だから、ジェットを捕まえてテドラさんの病気をシルバーが治したのよ。」
「そうだったんですね。われわれは最初から戦争しようとは思っていませんよ。」
「なら、ドワーフ族がアタゴ山とタケオ山の魔獣討伐を持ちかけたのに、どうして断ったのよ。」
「宰相のジェットからの申し出が怪しかったからですよ。我々エルフ族が前線で戦って、その後にドワーフ族がやってくるなんて作戦、どうして受け入れられますか?」
「リリー! あのジェットならそのくらいやりそうだな。」
「まあね。そういう事情だったんだ~!」
「私達が断ったら、宣戦布告だと言ってきましたので。私達も兵の準備をしていたんです。」
「ところで、魔獣を殲滅したんだから、オレの願いを一つ叶えてくれるんだよな。」
「そうですね。約束しましたからね。」
「なら、アタゴ山とタケオ山の所有権をドワーフと交換してくれないか?」
「私もそうしたいと以前からカシャと相談していました。ですが、あの山には地竜とコカトリスが住んでいるんですよ。交換しても意味がありません。」
「それなら大丈夫だ。もう地竜もコカトリスもいないからな。」
「えっ?!」
「私達がもう討伐したのよ!」
「重ね重ねありがとうございます。このご恩は生涯忘れません。」
「別にいいよ。それより、世界を平和にするのに協力して欲しいんだ。」
「喜んでお手伝いします。そうですね。カシャ!」
「はい。女王様。」
「なら、最初にドワーフ族と和解しないとね。」
「はい。」
「なら、決まりだな。テドラ国王のところに行くよ。」
するとカシャが聞いてきた。
「シルバー様。ここからドラッコ王国の王都ビザンツまでは1か月はかかりますよ。」
「大丈夫さ。みんなオレの近くに来てくれ。」




