王都フェアリーの危機
僕達が男性に連れられて宿屋を出ると、そこには兵士達が20人ほどいた。なんか、僕達が犯罪者でどこかに連行されるような雰囲気だ。
「シルバー! この対応っておかしくない? 私達何も悪いことしてないのよ!」
「そうですよ。師匠。師匠はヒュドラを討伐して『精霊の湖』の人達を救った英雄ですよ。」
「別にいいよ。」
僕達は王宮の謁見の間に連れてこられた。僕もリリーもいろんな城を見ているので驚くことはない。だが、エリーヌやカイト、シャルケは違う。王宮内の装飾品や装飾画、それに絨毯にと驚きっぱなしだ。僕達が、謁見の間で待たされていると、奥の入り口から女性と男性が現れた。そして、女性の方が玉座に座り、男性の方はその隣で立っている。
「ヒュドラを討伐したのは誰ですか?」
女王の隣にいる男性が聞いてきた。
「僕だよ。僕はシルバー。よろしくね。」
僕の隣にいるエリーヌ、カイト、シャルケの顔色が変わった。僕が普通の口調で話をしたので、罰でも与えられると恐れているのだろう。すると、玉座に座っている女王が声をかけてきた。
「そうですか。私はフェアリアル1世です。隣にいるのは宰相のカシャよ。あなたに聞きたいことがあります。」
「なにかな?」
女王の隣にいるカシャは僕のことをじっと見ている。もしかしたら魔眼の持ち主なのかもしれない。
「あなたとその隣の子は私を前にしても緊張しないのですね?」
「そうだね。緊張ってしたことないんだよね。そうだ。紹介するね。隣にいるのはリリー。僕の幼馴染だよ。」
エリーヌ達は真っ青な顔をして体を震わせている。
「面白い子。でも、あなたがヒュドラを討伐した証拠はあるの?」
すると、隣にいたリリーが言った。
「素材交換所の人に聞けばわかるわ。ヒュドラの魔石も渡したから。」
「そうね。でもそれは証拠にはならないでしょ。だって、拾った可能性もあるし、盗んだ可能性もあるものね。」
今度はエリーヌが言った。
「私は『精霊の森』の村長フラウの孫です。私とここにいるカイト、シャルケが証人です。シルバーがヒュドラを討伐するのを私達が目撃しました。」
すると、女王フェアリアル1世が隣に控えているカシャに聞いた。
「カシャ! どうでした?」
「はい。全員、真実を言っております。嘘をついたものはございません。」
「そう。」
女王が急に悲しそうな表情になった。
「どうしたの?」
僕が聞くと女王は真剣な顔になって僕達に言った。
「この国にヒュドラを一人で討伐できるような英雄が現れたことは嬉しい事なの。でも、神からの啓示で、『この国に英雄が現れるとき国が大惨事に見舞われる』とされているのよ。」
「そうなの? でも、神の啓示はそれだけだったの? 続きがあったんじゃないの?」
すると、隣に控えていたカシャが聞いてきた。
「どういうことですかな?」
すると、謁見の間に兵士が慌てて飛び込んできた。
「何事です。今、謁見中ですよ。」
「申し訳ございません。一大事です。北の森から魔獣の大群が押し寄せているとの報告がありました。その数およそ1万です。」
僕とリリー以外の全員が驚いた。
「陛下。やはり、神の啓示は真実でしたな。」
「カシャ! すぐに兵士達を街の北に集めなさい。私も出陣します。」
「ハッ」
もう、謁見どころではなくなった。そして、女王が玉座から降りて僕の手を取って言った。
「英雄殿。ともにこの国のために戦ってくれますか? 何としても世界樹を守らなければなりません。」
「いいけど、世界樹はどこにあるの?」
「この王都の中心です。私が魔法で隠蔽しているのです。」
「わかったよ。みんなも一緒に戦うでしょ?」
「当然よ。エリーヌ、カイト、シャルケ! あなた達も一緒よ!」
「わかってます! 師匠!」
僕達は王都の北側の城壁まで走った。すでに、兵士達が集まっているが数は少ない。500人程度だ。そこに、女王フェアリアル1世とカシャがやって来た。全員が片膝をついて挨拶をしている。僕達は城壁の上から、魔物のやってくる方向を眺めていた。
「いくらシルバーが強くても10000もの魔獣を相手できないわ。どうするの?」
エリーヌが心配そうに聞いてきた。
「何とかなるよ。ねッ、リリー!」
「さすがは師匠! 凄い自信ですね。」
僕は魔法で遠視した。前方3㎞の地点まで魔物の大群が迫って生きている。ウルフ系、オーク系、ベア系、ボア系が中心だ。中には強力な魔獣もいる。厄介なのは上空のワイバーンと地上のコカトリス、サイクロプス、地下の地竜だろう。
「シルバー! 見えてきたわよ。」
「そうだね。」
フェアリアル1世とカシャが城壁に上がって来た。
「シルバー殿。状況はどうですか?」
「見ての通りだよ。」
するとカシャがポツリと言った。
「陛下。あれだけの魔獣。この城壁ではとても守り切れません。国民を避難させましょう。」
「カシャ。そなたは世界樹を見捨てて逃げるというのですか? 世界樹は世界の平和を託された存在なんですよ。」
「はい。わかっております。しかし、このままでは兵士だけでなく、この街の人々も全員が死んでしまいます。」
2人が諦めかけている。
「僕が世界樹を守ったら、この街を守ったら一つお願いを聞いてくれる?」
するとカシャが真っ赤な顔で言った。
「いかに英雄殿でも、この数は一人では無理です。いい加減なことは言わないで欲しい。」
だが、女王は違った。
「いいですよ。何でも願いを叶えましょう。」
「約束だよ!」




