エルフ国の英雄
僕達はエルフの国エルグラン王国の王都フェアリーに来た。途中で知り合ったエルフ族のエリーヌ、カイト、シャルケも一緒だ。王都に到着して、何をするにしてもお金が必要だとわかり、素材交換所でヒュドラなど今まで討伐した魔獣の素材を換金した。そして、宿屋を探して迷子になっている。一方、国営の素材交換所の係員は王宮へと来ていた。
「宮廷魔術師のカシャ様に会いたいのですが。」
「そこで待っていろ!」
奥から衛兵と一緒にカシャがやってきた。係員の男性はカシャに一部始終を報告した。
「お前の話は本当か?」
「はい。間違いありません。これが証拠です。」
係員の手には大きなグレーの魔石があった。
「確かにこれはヒュドラの魔石だろう。それで、その者達はどこに行った?」
「はい。宿屋を探していましたので、『ブルーハット』を紹介しました。」
「ご苦労であった。衛兵から褒美を受け取るがいい。」
「ありがとうございます。」
その後、カシャはエルフの国エルグラン王国の女王フェアリアル1世に報告に行った。
「女王陛下。素材交換所の係員の話ですと、ヒュドラを討伐した者がこの王都に来ているようです。」
「そうですか。その者はどこの村の出身なのですか?」
「城門の守衛が知っているかもしれません。すぐに確認させます。」
カシャが目配りすると、入口に立っていた兵士が急いで部屋から出て行った。
「カシャよ。神の啓示通りなら、このエルグラン王国を揺るがす大惨事が近いということですね。」
「はい。その通りです。一刻も早くその者を見つけなければなりません。」
「そうですね。我らが守る世界樹が枯れるようなことがあれば、わが国だけでは済まないでしょう。太古の時代に起こったという大戦争が、再び起こることもあり得ますからね。」
「おっしゃる通りです。アスラ魔王国では新たな魔王が誕生したという話もあります。再び世が乱れる前兆かもしれません。」
「そうですね。ところで、ドワーフ族は大丈夫なのですか? なにやら、我が国に戦争を仕掛けるかもしれぬという話がありましたが。」
「はい。詳しいことはわかりませんが、国王の病気が治り、宰相のジェットが死刑になったようです。」
「そうですか。ならば、ひとまず戦争は回避できたということですね。でも、油断はできません。人族がこのエルグラン王国に忍び込み、この国の女を攫っているという噂もありますから。兵士達の訓練を怠らないようにしてください!」
「ハッ」
僕達が野菜屋のおじさんから宿屋の場所を聞いて向かっていると、意外にも大聖堂のすぐ前だった。間近で見る大聖堂はかなり大きい。だが、アスラ魔王国の大聖堂も負けてはいない。トロルド達が、ナルーシャ様を祭るために一生懸命建設したのだ。僕達が宿屋に入ると、エルフにしては珍しく恰幅のいい女性がいた。恐らく、この宿の女将だろう。
「あの~! 泊まりたいんですけど、部屋は開いていますか?」
「いらっしゃい。何部屋だい?」
エリーヌとリリー、カイトとシャルケ、僕、最低3部屋あればいい。
「3部屋あれば嬉しいな。」
「ちょうど3部屋あるよ。」
「忙しいみたいですね?」
「明後日、大聖堂で精霊祭があるからね。この近隣の住民達が泊まりに来てるのさ。」
僕は5泊分の宿泊代を払って、それぞれの部屋に行くことにした。
「どうしてリリーが僕の部屋にいるの?」
「別にいいじゃない!」
「リリーはエリーヌと一緒の部屋でしょ!」
「だって~! いつも一緒に寝てるじゃない。」
すると、僕の部屋にエリーヌがやってきた。
「いいわよ。私と部屋を交換しましょ。そうすれば、シルバーとリリーが同室になれるでしょ。」
「ほら、エリーヌもいいって言ってくれてるんだから。そうしましょうよ。」
「わかったよ。全く、リリーは強引なんだから。」
僕はリリーに手を引っ張られて2人部屋に連れて行かれた。しばらく部屋で休んでから、みんなで1階の食堂に行くことにした。
「シルバー! リリー! あなた達、明日王宮に行くんでしょ? その間私達どうしよう?」
「街を散策していればいいんじゃないの。」
すると、カイトが僕を見つめて言った。
「師匠。僕達も王宮に連れて行ってください。」
「僕も行きたい。一生に一度のチャンスだもんね。」
「わかったよ。なら、みんなで行こうか。」
「いいの? シルバー?」
「いずれ彼らには言わないといけないから、いいんじゃないかな。」
「なんのこと?」
「何でもないよ。」
その日は久しぶりにベッドで寝た。リリーの身体の温もりが伝わってくる。なぜか懐かしい感覚だ。早朝、下の方が何やら騒がしい。すると、「ドシッドシッ」と階段を上がってくる音が聞こえた。
「ドンドン ドンドン」
誰かが隣の部屋をノックしている。僕はリリーを起こした。
「リリー! 起きて!」
「なに?」
寝ぼけ眼でリリーが聞いてきた。
「どうやらお客のようだよ!」
耳を澄まして聴いていると、隣のエリーヌの部屋のようだ。男性の声が聞こえる。
「少し聞きたいことがある。ドアを開けてくれないか?」
「なにかしら?」
「ヒュドラを一人で討伐したというのはお前か?」
「違うわよ! こんな朝早くから何よ!」
「ならいい。ヒュドラを討伐したというものはどの部屋にいるんだ?」
エリーヌは黙っていて何も答えない。恐らく、言ってはいけない雰囲気なのだろう。そこで、僕はドアを開けて男に言った。
「僕だよ。何か用?」
「お前が? とても信じられん。だが、いい。王宮まで一緒に来てもらうぞ!」
「わかったけど、支度するから待ってて。」
僕の身支度はすでに終わっている。リリーが身支度を整えるのを待っているのだ。
「準備できたよ。」
僕とリリーが部屋の外に出ると、エリーヌ、カイト、それにシャルケもいた。
「師匠。王宮に行くなら俺も一緒に行くよ。師匠を守らなくっちゃいけないからね。」
「私も行くわ。これでも『精霊の森』の村長の孫だからね。何か役に立つかもしれないでしょ。」
「僕も行くよ。役に立つ自信はないけど。」




