ヒュドラ討伐(2)
僕は少しずつヒュドラに近づいていく。ヒュドラも何かを感じたのか、僕の方を凝視した。僕は少しずつ魔力を解放していく。すると、僕の身体から精霊王と同じ七色の光が発せられた。その光がだんだんと強くなっていく。そして、魔法を詠唱した。
「大精霊達よ! ヒュドラを打ち取れ!」
大精霊に命令するかのような言葉を発すると、僕の身体から発せられている7色の光がすべて人型へと変化した。そして、七つの光が合わさって鋭い鎌のような形となり、ヒュドラの巨大な頭を次々と切り落とした。その数、8つだ。残るは中央の金色の頭だけだ。
「リリー! 今だ!」
「任されたわ!」
『光斬撃』
リリーが剣を振るうと、剣から眩しい光が放たれた。そして、最後の頭も切り落とした。その光景を見ていたエルフ族の男達も隊長もエリーヌ達さえもが、驚きに固まっていた。
「な、な、なんだんだ? 今のは? 彼は神なのか?」
周りにいる人々がみんな僕を見ている。そのまなざしには尊敬と畏怖が入り混じっていた。僕は彼らの目を気にすることなく、リリー達のところに戻った。すると、すべての状況が理解できたのか、湖に響き渡るように大きな歓声が上がった。
「ヒュドラを倒したぞ———!!!」
「やったぞー!」
「お———!」
全員が僕のところまで走ってくる。そして、隊長をはじめ、全員が僕に向かって片膝をついた。
「あなた様は精霊王様なのですか?」
「違うよ。そんなんじゃないよ。」
すると、カイトが後ろから自慢げに言った。
「師匠は精霊王なんかじゃないさ。女神様の使徒なんだから!」
僕の前で跪いている男達が全員驚いた。
「ええ——————!」
「そうだったのですか?」
「別に使徒ってわけじゃないから。」
「村に戻ってグリース様にご報告しましょう。今日は使徒様の歓迎会になるでしょう!」
「だから、違うからね!」
「まあまあ」
僕はヒュドラの死体を魔法袋に詰めて、みんなと一緒に村まで帰った。途中でリリーが言ってきた。
「シルバー! カイト達に口止めしておかないとまずくない?」
「そうだね。でも、最初にリリーが言ったんだよ。」
「エヘッ! そうだった! ごめん!」
「別にいいけど。後で、みんなに口止めしておこうか。」
「うん。」
僕達は村に着くと、村長のグリースさんと村に残っていた女性と子ども達が出迎えてくれた。隊長からことのいきさつが説明され、残っていた人達も全員が僕に跪いた。
「やめてください。グリースさん。僕はそんなに偉い存在じゃないですから。」
「ですが、女神様の使徒様にご無礼があってはいけませんので。」
すると、小さな子どもが僕の方によたよたと近寄って来た。僕はその子どもを抱きかかえて言った。
「世界は平等なんだよ。すべのエルフが、そしてすべての種族が平等なんだよ。この世界のすべてを神が作ったんだから、僕もグリースさんも兄弟のようなもんでしょ。なのに、僕が偉いなんておかしいよ。」
「確かにシルバー殿がおっしゃる通りですな。」
グリースが立ち上がると、他の人達もみんな立ち上がった。僕は抱きかかえていた子どもをお母さんに帰した。
「かみちゃま。かみちゃま。」
小さな子どもが僕の方に手を伸ばして何か言っていた。
「師匠。これからどうするんですか?」
「今日は、もう一日この村に泊まるしかないよね。」
「賛成です! 皆さんのご好意を無にしてはいけないと思います!」
シャルケは現金な奴だ。ヒュドラを怖がって、討伐に参加するのを反対していたにもかかわらず、歓迎会には参加したいようだ。
「シルバーはさすがね。リリーが惚れるのも無理ないわね。でも、リリー一人のものにするのはおかしいわ。シルバーはみんなのものでしょ?」
するとリリーがエリーヌに言った。
「私とシルバーはずっとずっと昔から一緒なんだから! これからもよ!」
その日の夜は、村の広場で歓迎会だ。僕とリリーは果実水、エリーヌとカイトとシャルケは酒を飲んでいる。なんか、酔っぱらったエリーヌがリリーに絡んでいるようだったが、無視して過ごした。
そして、翌日早朝、僕達は村のみんなに見送られて村を後にした。
「ところで、あの村の名前は何だったの?」
リリーがエリーヌに聞いた。
「私も聞かなかったわ。誰か聞いた?」
すると、シャルケが答えた。
「あの村は『精霊の湖』だって!」
「なるほどね。納得できるわね。」
「そうだね。村から少し離れたあの湖を、みんなで命がけで守ろうとしていたんだから。それだけ大事なんだろうね。」
「ところで、王都までは後どのくらいかな~?」
シャルケがまた弱音を吐こうとしている。するとエリーヌが答えた。
「おじいちゃんの話だと、後2日ぐらいだと思うわ。」
「まだ、そんなに遠いの?」
「がんばれ! シャルケ! お前、男だろ!」
「わかったよ。」




