エルフ族の村の名前は難しい?!
そして、その翌日、森の中を歩いていると、シャルケが大きな声で言った。
「みんな見て! ババナの実がなってるよ! あれ取ろうよ!」
「本当ね。黄色くなってるわ! 食べごろみたい。」
僕もリリーもババナのみを食べたことがない。だが、エルフ族にとってババナの実はご馳走のようだ。ここでババナを知らないとは言えない。カイトとシャルケがババナの木に登ろうとすると、石が飛んできた。
「痛ぇ! 誰だ? 石を投げた奴は?」
周りを見ると、気付かなかったがイエローモンキー達が沢山いた。彼らの手には石が握られている。
「お前らか! 許さねぇぞ!」
カイトが背中の弓矢を手に取って矢を放とうとしたので、僕が止めた。
「カイト。あいつらは魔獣じゃないよ。それに、小さな赤ん坊もいるみたいだし、あのババナは彼らに譲ろうよ。」
「師匠がそういうなら、仕方ないです。」
僕達はババナの実をあきらめてその場を離れようとした。すると、上空にブラックイーグルの群れが現れた。ブラックイーグルは凶暴な鳥の魔獣だ。イエローモンキー達は石を投げて応戦している。
「キッ キッ キッ」
「ギャー」
赤ん坊を抱えたイエローモンキーの母親がブラックイーグルに襲われている。
「カイト! 風魔法を使ってあのブラックイーグルを打ち落としてみて!」
「はい。師匠!」
カイトが一度しまった弓を背中から取り出して構える。
「風の精霊よ! イエローモンキーを助け給へ!」
カイトが放った矢がブラックイーグルに命中し、母親を狙っていたブラックイーグルはその場に落ちた。
「師匠。他のブラックイーグルはどうします?」
「なら、エリーヌは水魔法、カイトは弓で、シャルケは風魔法で攻撃して。」
僕とリリーはその場でみんなの戦う様子を見ているだけだ。しばらくして、形勢が不利だと思ったのか、ブラックイーグルは森の奥に飛び去って行った。地面には10羽ほどのブラックイーグルの死体が転がっている。僕が魔法袋に死体をしまっていると、イエローモンキーのボスがババナを一房持ってやって来た。どうやらお礼にくれるらしい。野生動物なのに賢い。
「さすがに疲れたわ。少し休みましょうよ。」
「そうだね。エリーヌもカイトもシャルケもなかなか強いよ。」
「本当ですか? 師匠!」
「本当さ。後は経験と知識が加わればもっと強くなると思うよ。」
カイトは僕に褒められてホクホク顔だ。エリーヌはここ最近、常に僕の隣にいる。シャルケも同様に、リリーの隣にいることが多い。少し休んだ後、僕達は再び王都を目指して歩き始めた。3日ほど歩いた時、木の柵に囲まれた村があった。僕達が中に入ろうとすると、守衛のような男が2名槍を持って出てきた。
「お前達はどこから来た?」
「はい。俺達は『精霊の森』の者です。」
「そうか。中に入ってよし!」
中に入った後、リリーがカイトに聞いた。
「ねえ! カイト! 『精霊の森』ってなんなの?」
「リリーの村だって名前があるだろ? 『精霊の森』は俺達の村の名前さ。」
エリーヌも怪訝そうな顔で僕達を見た。しくじった。それぞれの村に名前があるのは当然だが、まさか『精霊の森』なんて名前だとは想像もしていなかった。
「カイト。聞いて言い?」
「師匠。なんでしょう?」
「この村の名前はなんて言うの?」
「知りませんよ。まだ、教えてもらってないですから。」
「そうなんだ。」
村を見渡すと人々の数が少ない。特に男性の数が少ないように見える。僕達が村の中を歩いていると、先ほどの守衛が走ってやって来た。
「お前達に相談があるんだが、ちょっといいか?」
「いいよ。」
「実はな。この村から東に行った森の中に湖があるんだが、そこに厄介な魔獣が出たんだ。村の男達で討伐に当たっているんだが、なかなか手強くてな。勝手な言い草だが、協力してもらえないか?」
すると、エリーヌが聞いた。
「魔獣ってどんな奴なの?」
「ヒュドラだよ!」
「え——————!」
ヒュドラは頭が9つある魔獣だ。真ん中の頭を破壊しない限りいくらでも再生する。人族の世界でもS級の魔獣だ。
「急にそんなことを言われても、僕達は王都に行くだけだからさ。そうだよね? リリーちゃん。」
シャルケが自信なさげに答えた。リリーは僕の顔を見る。カイトもエリーヌも同時に僕を見た。
「いいよ。討伐に参加するよ。」
「そうか。ありがたい。なら、すぐに村長に報告してくる。ちょっと待っていてくれ!」
守衛は村の奥に走って行った。
「やっぱりシルバーね。女神様の使徒として見過ごせないんでしょ?」
「師匠。俺も協力します。一緒にヒュドラを討伐しましょう。」
シャルケは一人だけぶつぶつ言っている。
「大丈夫なのかな~! 相手はヒュドラだよ!」
しばらくして守衛に連れられて村長がやって来た。見た目は60代の男性だ。
「『精霊の森』の若者たちよ。助力に感謝する。わが村の男達は、すでに大分殺されてしまってな。戦力が足りないんじゃ。」
「討伐隊はいつ出発するの?」
「明朝じゃ。今日は、わが屋敷に泊まるがよい。」
僕達は村長の屋敷について行った。そこで、あらためて挨拶をした。
「わしはこの村の村長のグリースじゃ。何もないがゆっくり休んでくれ。」
「僕はシルバー。」
「私はリリーよ。」
「私はエリーヌ。」
「俺はカイト。」
「僕はシャルケです。」
僕達は大部屋に一緒に泊まることになった。なんか、野宿しているときと変わらない。建物の中だけ少しはましだけど。
「師匠。ヒュドラは真ん中の首を倒さないといけないんですよね?」
「そうだね。他の首をいくら討伐しても、すぐに再生するからね。」
すると、エリーヌが僕に近づいてきて聞いてきた。
「私が襲われそうになったら助けてくれる?」
リリーが隣で真っ赤になって怒っている。
「エリーヌ! 自分の身は自分で守りなさいよ!」
「わかったわよ。」




