王都フェアリーに向けて出発
僕は村の近くに現れたホワイトアントの群れを魔法で殲滅した。その際、リリーから僕がナルーシャ様から依頼を受けた存在であることが村人達に伝えられた。その結果、エリーヌとカイトとシャルケが一緒に修行の旅に同行したいと言ってきた。僕は断るつもりでいたが、3人の真剣さに心が動かされ、3人と一緒に王都フェアリーに行くことを決めた。そして、僕とリリーは、村長のフラウに旅立ちの挨拶をしようとみんながいる部屋に入った。
「おお。シルバー殿。丁度よかった。」
「フラウさん。僕達そろそろ王都に向かうよ。いろいろありがとう。」
「何を言われる。此方の方こそ村を救っていただいて感謝しているんじゃ。」
フラウがエリーヌ達を見て、話しにくそうにしていた。
「それでじゃ。どうだろう。この3人を一緒に王都に連れて行ってもらえんじゃろうか?」
「別にいいけど。連れて行くだけでいいの?」
すると、カイトが横から言ってきた。
「師匠。俺に魔法を教えてくれませんか。俺は強くなりたいんです。この村を守れるぐらいにはなりたいんです。お願いです。」
「師匠? 僕が?」
いつの間にかカイトにとって僕は師匠になっている。なんかこと簿遣いも丁寧になってる気がする。
「はい。そうです。師匠の魔法は強いだけじゃない。人を癒す魔法もあります。俺も師匠のようになりたいんです。」
困った。魔法を教えることは可能だが、僕と同じようには絶対になれない。正直にそのことを告げるべきだろうかと悩んでいると、リリーがカイト達に言った。
「いくらシルバーがあなた達に魔法を教えても、シルバーのようにはなれないわよ。私だって何年もシルバーと一緒にいるけど、未だに大精霊の魔法は使えないんだからね。」
カイトの表情が一瞬暗くなったが、すぐに立ち直って言った。
「それでもかまいません。俺は師匠と王都まで行きたいんです。師匠といれば、魔法だけでなくて、いろんなことを経験できそうですから。」
「私もよ。」
「僕もさ。」
3人の目がキラキラと輝いている。
「いいよ。なら、一緒に王都に行こうよ。みんな、荷物を持ってきて。1時間後に出発するからね。」
3人は物凄い勢いで部屋から出て行った。残っているのは村長のフラウと僕達だけだ。
「わしも長いこと生きておるが、シルバー殿。そなたの魔力は異常じゃ。神の使徒なのも納得できる。だが、そなたは本当にエルフ族なのか? 太古の昔に存在したといわれる魔王アンドロメダは、精霊王様や古代竜様をも従えていて、ありとあらゆる魔法を使ったそうじゃ。だが、アンドロメダはそのあまりにも強大な力のために、世界を平和にしたにもかかわらず、世界中から恐れられ身を隠したと言われておる。まっ、伝説じゃがな。」
「そうなの? でも、僕は精霊王や古代竜にはあったことないよ。」
「そうか。わしの考えすぎじゃな。ならばいいさ。ところで、あの3人はこの村の宝じゃ。くれぐれも頼む。」
僕の言葉を聞いて、フラウは何かふっきれたような顔になった。しばらくして、3人がやってきたので僕達は村を旅立った。
屋敷に一人残ったフラウはぼそぼそと独り言を言っていた。
「精霊王と古代竜か。神のような存在のあのお二方を呼び捨てとは、やはりシルバー殿は・・・・」
村を出た僕達は、早速森の中に入って行った。王都は村から北の方角だ。この世界では太陽が南の方角にある。つまり、太陽を背にして歩けば王都に行けるということだ。
「リリーちゃんとシルバー君は姉弟でも従妹でもないんでしょ? 恋人か何かなの?」
シャルケが聞いてきた。何故かエリーヌが耳をダンボにして聞いている。
「リリーとは血が繋がってないけど、一緒に育ったから姉弟のようなもんだよ。」
「そうなの?」
何故かエリーヌの声が喜びの反応のように思える。一体どうしたことだろう。すると、リリーが僕の耳元で囁いた。
「まずいわよ。シルバー! エリーヌがあなたのことを気にしだしてるわよ!」
「そう?」
僕とリリーが姉弟のような関係なのは本当のことだ。僕は森の中で拾われてリリーと一緒に成長したんだから。だも、それ以上のことは何も話さない。
「師匠は大精霊の魔法をどこで覚えたんですか?」
この質問が一番困る。僕は咄嗟に頭に浮かんだ答えを伝えた。
「別に学んだことはないよ。自然と頭に浮かんでくるんだよ。」
「やっぱり女神様の使徒だけあるわね。」
エリーヌが僕の横に並んできた。すると、対抗するかのようにリリーも僕の反対側に歩み寄り、いつものように手を握って来た。なんか、これから先が思いやられる。
僕達は王都まで歩いているが、当然一日で到着できるわけではない。そこで、野宿をすることになる。薪を集めて火を焚いて、その周りを囲むように座った。ご飯は僕が魔法袋から肉を出して焼くのだが、毎日肉だとさすがに飽きてしまう。なので、昼間歩いている最中に食べられそうな植物や果物を採取するようにしている。
「あとどれくらいかかるんだろうね?」
なんかシャルケが辛そうに言ってきた。
「いいじゃないか。シャルケ。こうして師匠達と旅をしながら魔法も教えてもらえてるんだから。」
「そうだけど、ベッドの上で眠りたいよ。それに、お風呂にも入りたいし。エリーヌだってお風呂に入りたいだろ?」
すると、急に振られたエリーヌが赤い顔をして答えた。
「シャルケ! 女性にそんなこと言うと嫌われるわよ!」
僕とリリーは魔法で身体も服もきれいにすることができる。でも、エリーヌ達にはその魔法をまだ教えていなかった。
「エリーヌ、カイト、シャルケ! 今から便利な魔法を教えるね。ゆっくりやるから真似してみて。」
「師匠。どんな魔法ですか?」
カイトが目を輝かせている。
「体をきれいにする魔法だよ。服もきれいになるから。」
するとエリーヌが僕の近くに来て、必死の形相で見ている。
「水の精霊! 風の精霊! 僕の身体をきれいにして!」
僕が魔法を唱えると、小さな光が僕の身体に集まり始める。そして、僕の身体が光に包まれ、光が収まるとすっかりきれいになっていた。
「どう? 覚えた?」
「シルバー! 凄いわ! 私にも教えて!」
僕の横にいたリリーが立ち上がって言った。
「私がもう一度見せてあげるから、しっかり見てなさいよ!」
「水の精霊! 風の精霊! 私の身体をきれいにして!」
すると、先ほどと同じように光が現れ、リリーの身体を包み込んでいく。光が収まると、すっきりしたリリーがいた。
「どう? 今度は分かったかしら?」
するとカイトが言った。
「水の精霊と風の精霊にお願いするのは分かったけど、何かコツはあるんですか?」
「そうね~。お風呂に入って清潔になることを思い浮かべることかな。」
「私もやってみるわ。」
「俺もやってみよ。」
「なら、僕も」
3人が同じように魔法を詠唱した。エリーヌとカイトはうまくいったが、シャルケだけずぶ濡れだ。
「えっ?! どうして? どうして僕だけ濡れたまま?」
「シャルケはお風呂に入ることはイメージできてたようだけど、風呂に入った後は体をふくよね? そこまでイメージしないとだめだよ。」
「そうなの? 僕はいつも自然乾燥だから、身体は拭かないからだね。」
すると、エリーヌもカイトもみんな驚いた。
「シャルケは風呂に入って、身体拭かないの? そんなことしたら床がびしょぬれになるじゃない!」
「床は後で拭くんだよ!」
「シャルケ! お前、おかしいよ! 身体を拭いて出てくれば床をふかなくてもいいだろ!」
「そっかー!」
「アッハッハッ」
みんな腹を抱えて笑った。




