森の破壊者ホワイトアント討伐!
僕はホーンベアに襲われたエリーヌ達を助けるために大精霊の魔法を使った。だが、エルフ族の中でも、大精霊の魔法を使えるものはほとんどいないらしい。いろいろと怪しまれる場面もあったが、何とか誤魔化すことができた。
「シルバー! 今後使用する魔法も考えた方がいいかもね。」
「そうだね。人前ではなるべく大精霊の魔法は使わないようにするよ。」
「私もシルバーに精霊魔法を教えてもらったから一応は使えるけど、威力が強くなりすぎないように気を付けるようにするわ。」
そんな話をして、その日の夜は久しぶりにリリーと手を繋いで寝た。
「ドンドン ドンドン シルバー! リリー! 起きて!」
朝早くに激しくドアを叩く音が聞こえた。ドアを開けると外はまだうす暗い。そして、そこにはエリーヌがいた。
「どうしたの?」
「大変なのよ。早く来て!」
するとリリーが目をこすりながら寝ぼけて言った。
「大変って、何かあったの?」
「とにかく大変なのよ! 森を巡回していた人が森の中でホワイトアントの大群を見たらしいのよ!」
するとリリーが聞いた。
「ホワイトアントって何なの?」
「リリー。 ホワイトアントは木を食べるアリの魔物だよ。繁殖力が強くて、ものすごい数で群れを作るんだ。ホワイトアントが発生した森は数日でほとんどの木が無くなるんだよ。」
「それって大変じゃない! どうするのよ?」
すると、エリーヌが悲しそうな顔で言った。
「昔、ここより西に村があったの。その村の近くの森でホワイトアントが発生して、森のほとんどの木が食べられたの。その村がどうなったかわかるでしょ? 私達エルフ族にとって森は生命の源のようなもの。その森が壊滅状態になったんだから。」
「もしかして、その村はもうないの?」
「そうよ。人々は森を放棄して移動したの。そうして新しくできたのがこの村なのよ。なのに、またこの村を放棄しなくちゃいけなくなるわ。」
僕達が森に入って行くと村の男達が集まっていた。そして、ホワイトアントを地道に討伐している。だが、いくら討伐してもホワイトアントの数が減る様子はない。
「おお。来てくれたか。」
「酷いわね。大分木が食べられてるわ。」
「そうなんじゃ。いくら殺しても減らないんじゃ。このままじゃ、またこの村を放棄するしかないじゃろうな。」
するとエリーヌが真剣な顔で僕を見て言った。
「シルバー! どうにかできないの?」
リリーも僕を見ている。仕方がないので、僕は魔法を使うことにした。
「フラウさん。みんなを避難させてくれる? 魔法で何とかしてみるから。」
「わかった。エリーヌ、カイト、シャルケ! みんなに退避するように伝えてくるんじゃ!」
「はい。」
3人が村人達に退避するように伝えて回った。村人達はぶつぶつ言いながら、退避していく。
「じゃあ、魔法を使うよ。」
僕は魔力を解放しながら魔法を詠唱した。
「大精霊達よ! 目の前のホワイトアントを殲滅し給へ!」
すると、辺り一帯が急激に冷えて猛烈な吹雪が発生した。ホワイトアント達は寒さのせいか動きを止めた。次に森全体に突風が吹き荒れ、動きを止めたホワイトアントが次々と上空に吹き上げられた。ホワイトアントは上空で一か所に集められ、大きく真っ白な塊になっていく。その塊に上空から稲妻が落ちたと思ったら、突然業火が現れホワイトアント達を燃やしていく。ホワイトアントの群れはわずか数分で完全に灰となった。
「オ——————!」
「奇跡だ!」
「この魔法は何なんだ!」
「ま、まさか、これほどとは!」
周りを見渡すと、村長もエリーヌ達も村の人々も全員が驚愕して固まっている。
「シルバー! あなた何者なの? やっぱりおかしいわよ。」
「そうじゃな。これほどの魔法、宮廷魔術師のカシャ殿でも無理じゃな。」
周りにいた人々も僕のことを畏怖の目で見始めていた。すると、リリーが大きな声で皆に聞こえるように言った。
「シルバーは、ナルーシャ様からこの世界の平和を託されたのよ。このぐらいできて当たり前じゃないの!」
「な、なんと?! そうであったか?! シルバー殿は神の使徒様であったか。知らぬこととはいえ、ご無礼した。」
フラウが僕に跪くと、他の村人達も全員が僕に跪いた。
「やめてよ。みんな。僕はそんなに偉い存在じゃないよ。ただ、生まれつき魔力が強いだけだから。それに、ナルーシャ様に頼まれたのは事実だけど、使徒になったわけじゃないから。」
「まさか、使徒になることをお断りしたのですか?」
「違うよ。『あなたは私の使徒です』なんて言われたことないもん。」
ここでエリーヌが言った。
「だけど、ナルーシャ様に頼まれたってことは使徒を引き受けたということじゃないの?」
「だとしても、僕はそんなに偉い存在じゃないから。とにかく普通にしてよ。」
すると、フラウが立ち上がって村人達に言った。
「みんな。シルバー殿は我々に普通にするようにご命令された。我々はその指示に従おうじゃないか。」
少し違うけど、みんなが普通に戻ってくれればそれでいい。みんなが普通に戻ったところで解散となった。僕とリリーも借りた空き家に一度戻ることにした。2人で、歩いていると、カイトが僕のところに走ってきた。その後ろにはエリーヌとシャルケもいる。
「シルバー! お願いがあるんだ! 俺も王都までの旅に同行させてくれないか? 荷物持ちでも何でもするから。」
オレの隣にいたリリーが聞いた。
「どうして王都に行きたいの?」
「別に王都に行きたいわけじゃないんだ。シルバーやリリーと一緒に、俺も魔法の修行をしたいんだよ。ダメかな?」
「ずる~い! カイト! 抜け駆けはダメよ! 私だって一緒に旅したいんだから!」
「なら僕も一緒に行きたい!」
エルフ族の国に来た目的は、王都に行ってドワーフ族との争いをやめさせることだ。できれば、リリーと2人だけで旅をするのが望ましい。ここで僕が断らなくても、きっとフラウが反対するだろう。そう思って安心していた。村に到着した後、僕達は一旦借家に戻り、旅立ちの挨拶のため村長のフラウの家に行った。すると、そこにエリーヌとカイト、シャルケの姿があった。僕とリリーは見つからないように部屋の外でみんなの話を聞いている。
「おじいちゃん。いいでしょ? シルバー達と一緒に修行したいのよ!」
「フラウ様。俺達が強くなることがこの村のためになると思うんです。お願いです。旅に行かせてください。」
「僕も強くなりたいです。お願いします。」
「さて、どうしたもんかの~。わしがよくともシルバー殿達が何と言うかの~。」
少し離れた場所から3人の様子を見ていたが、3人ともかなり真剣だ。
「どうするの? シルバー!」
僕は悩んだが、3人があまりにも真剣だったので考えを変えた。
「3人がいれば僕達の素性がばれにくいかもしれないね。いいんじゃないかな。」
「なら、連れて行きましょ!」




