僕は男だからね!
僕とリリーはエリーヌ達と一緒に村の外の森に狩りに行った。そこで、ホーンベアが現れた。シャルケがリリーを庇おうとして大けがをする中、エリーヌとカイトがホーンベアに向かって行ったが形勢は不利だ。そこで、僕とリリーはホーンベアを討伐することにした。僕は剣を抜いてエリーヌ達と同じように魔法を詠唱する。
「水の大精霊ウンディーネよ。剣に力を!」
僕がホーンベアめがけて剣を振ると、ホーンベアが鋭い爪で受け止めたが、その爪が一瞬にして凍り付き砕け散った。そして、そのままホーンベアを切り裂く。だが、ホーンベアもまだ死んでいない。そこに、リリーが攻撃した。
『風絶斬』
リリーが剣を上下に振ると、ホーンボアは頭から2つに切り裂かれた。僕はすぐに一番大怪我のシャルケのところに駆けつけた。怪我の状況を確認すると、やはり手が千切れかかっている。恐らく怪我が治っても、もう左手を動かすことはできないだろう。エリーヌもカイトも心配そうだ。
「しくじったよ。リリーちゃんを助けるなんて大きなことを言っておきながら、リリーちゃんとシルバーちゃんに助けられちゃったね。情けないよ。」
エリーヌが布を巻いて傷口を塞いでいる。
「シャルケ! 少し黙ってろ! 怪我に響く! カイト! シルバー! リリー! シャルケをすぐに村まで運ぶわよ!」
リリーが僕の耳元でささやいた。
「シルバー! どうしよう?」
「リリーを助けようとしてくれたんだ。治すさ!」
僕は寝ころんでいるシャルケに近寄って魔法を詠唱した。
「光の大精霊ウイスプよ。この者の怪我を癒し給へ!」
すると、僕の手から眩しい光が現れる。その光が美女へと変化し、美女がシャルケの手に触れると傷がどんどん癒えていく。そして、シャルケの手が元に戻った。エリーヌもカイトもシャルケも驚きのあまり、口を開けたまま固まってしまった。
「もう大丈夫だよ。シャルケさん。」
僕の言葉で3人が意識を取り戻した。
「シルバー! 今のは大精霊ウンディーネ様なのか? お前達は何者なんだ?」
「何者って言われても———」
「お前達の強さは異常だ! それに、お前の精霊魔法は大精霊様のお力をお借りしているではないか! そんなことができるのは宮廷魔術師のカシャ様だけだ。」
「そうなの? 僕達は旅をしながら修行してるから普通だと思ったんだけど。」
「まあ、いいわ。あなた達が何者なのか後でじっくり聞かせてもらうから。」
「エリーヌ! シルバーちゃんは僕の傷を治してくれたんだよ。そんな言い方、おかしいよ。」
「そうね。ごめん。少し気が動転してしまったみたいね。」
「別にいいよ。」
「シャルケを助けてくれてありがとうね。感謝するわ。」
「うん。ところで、このホーンボアの死体ももらってもいい?」
するとカイトがニコニコしながら言った。
「当然さ。君達が討伐したんだから。」
僕は魔法袋にホーンベアを仕舞った。後ろから何か視線を感じる。振り返ると、カイトが僕を見つめていた。早めに誤解を解かないと。
「エリーヌさ~! さっき僕達のことを姉妹っていたけど。違うからね。」
「えっ?! そうなの? なら従妹か何かなの?」
「そうじゃなくて。」
するとカイトがニコニコしながら言った。
「シルバーは女の子なのに自分のことを僕って言うんだね。『僕っ子』って初めて見たけど、結構可愛いもんだね。」
リリーが思わず噴き出した。
「プッ ハッハッハッ」
「どうしたの? リリーちゃん!」
「だって、おかしくて!」
「何がそんなにおかしいの?」
「だって、シルバーは男だよ。みんなでシルバーのこと女の子扱いしてるからよ。」
「えっ——————!」
悲惨なのはカイトだ。カイトはリリーの言葉に呆然としていた。すると、エリーヌが言った。
「男だったら、どうして否定しなかったのよ!」
「いつも間違えられるからさ。いちいち面倒なんだよ。」
「確かにそうね。シルバーはどっからどう見ても美少女に見えるもんね。」
そんなこんなで僕達は村まで帰った。レッドボア3頭にホーンボア1頭。とてもリリーと2人では食べきれない。そこで、村人達みんなに分けることにした。村のみんなも大喜びだ。お陰でその日は、僕とリリーの歓迎会を開いてくれることになった。
「まさかお前達がこれほど強いとはのう。驚きじゃよ。エリーヌから聞いて驚いたぞ!」
今、僕達の前には村長のフラウさんが座っている。その隣にはエリーヌとカイト、それにシャルケがいた。
「おじいちゃん。それだけじゃないのよ。シルバーは大精霊の魔法まで使えるのよ。シャルケの千切れかかった腕も治したんだから。」
「そうか。だが、シルバー。そなたはどこでその魔法を学んだんじゃ。怪我を治す魔法は光の大精霊ウイスプ様の魔法じゃろ?」
返事に困る。僕は、まさか魔王アンドロメダの時代に精霊王や大精霊達に教えてもらったとはいえない。
「よく覚えていないんだよ。」
僕が返事に困っているとリリーが助け舟を出してくれた。
「シルバーは記憶をなくしたことがあるのよ。多分、そのせいで思い出せないのかもしれないわ。」
「そうか~。記憶をの~!」
村長のフラウは少し考えこんだ様子だった。すると、話題を変えるかのようにリリーが聞いた。
「今、エリーヌが村長さんのことをおじいちゃんて言ったけど?」
「ああ、言ってなかったわね。私はフラウおじいちゃんの孫なのよ。」
「そうだったんだ~!」
すると、カイトがぽつりと言った。
「俺の方が驚きだよ。まさかシルバーが男だとは思わなかったからさ。」
「なんと、そうじゃったか。シルバーは男だったのか!」
村長のフラウが驚いた。
「おじいちゃん、知らなかったの? シルバーは男よ! なんか男にしておくのが勿体ないけどね!」
「勘弁してよ。僕は最初からずっと男だからね。」
「アッハッハッ」
暗くなりかけた空気が一気に明るくなった。
「フラウさん。みんな。今日はありがとう。僕とリリーは明日には王都に向かうよ。」
「そうか。そうじゃな。最初から王都に行くと言っておったからな。だが、王都までは10日はかかるぞ。その間に危険な場所もある。くれぐれも気を付けて向かうんじゃぞ。」
「うん。」
その日は、空き家に案内されて1泊することになった。




