ドラッコ王国の反乱鎮圧
僕達が地竜とコカトリスを討伐した後、王都ビザンツの宿に戻るとドルトン達の姿がなかった。そこにモモカがやってきて、ドルトン達がジェットの屋敷に連れていかれたと聞いた。僕達はドルトン達を救出するために、ジェットの屋敷に来たのだが兵士達が僕達を取り囲むように位置についた。ざっと見たところ、兵士の数は2000人はいるだろう。このままだと僕達は兵士達を殺さなければならない。僕はリリーとモモカとトロルドに言った。
「みんな元の姿に戻って。誰も殺さないでよ。」
「承知しました。魔王様。」
僕達の会話を聞いていたジェットが独り言を言った。
「魔王?! 今、魔王と言ったか?」
僕達は全員が元の姿に戻る。オレは精悍な顔つきで黒い翼を生やした魔族の青年の姿になった。リリーも背中から翼を出して魔族の姿になる。モモカは体が大きくなり、頭から角を出した美女へと変化した。兵士達が一番驚いたのはトロルドの変化だ。小さかったドワーフが3m以上のトロールに変化したのだから。
「お前達は魔族なのか?」
オレはその場の全員に聞こえるように大きな声で言った。
「ああ、そうだ。オレはここに宣言する。世界の平和を乱そうとする者がいるならば、この『魔王シルバー』が最高神ナルーシャ様に代わって成敗する。どこからでもかかってくるがよい。」
オレは兵士達を殺したくない。そこで、上空に飛翔して魔力を解放した。そして魔法を発動する。オレが両手を広げると空一面に真っ黒な雲が現れた。その中心では黒い雲が渦を巻いている。その渦の中から、巨大な漆黒のドラゴンが大きな口を開けてオレのもとまでやってきた。兵士達の驚き用は半端ではない。腰を抜かして地面に座り込む者もいる。
「どうしたー! なぜ動かぬ! わしの命令だ! 魔王を打ち取れー!」
だが、誰一人動こうとしない。オレはみんなに聞こえるように言った。
「確かお前の名前はジェットと言ったな! お前はこともあろうか第1王子に毒を盛って殺したばかりか、国王にまで毒を盛ったな。そこまでして、この国の王になりたいのか?」
「何を言う! わしはそのようなことはしていない!」
オレは指を鳴らした。
「パチン」
すると、ジェットの首に真っ黒な首輪が現れた。
「その首輪は『真実の輪』だ。お前が嘘をつけばその首輪は締まっていく。そして、最後はお前の首を切断することになる。わかったな。もう一度聞こう!」
「お前は第1王子に毒を盛るように第3夫人に命令したな!」
「そんなことをするはずがないではないか!」
すると、ジェットの首輪が締まった。
「く、く、苦しい!」
ジェットが苦しんでいるがそれを無視してさらに質問した。
「お前は第3夫人に国王にも毒を盛るように命令したな!」
「・・・・・」
ジェットは何も答えない。否定すれば首輪が締まることを理解しているからだ。
「どうした? なぜ答えぬ! 今までのように否定すればよいではないか!」
周りで状況を見ている重鎮達も兵士達もジェットの様子を真剣に見ている。
「そうか。否定すればどうなるかわかっているから答えないんだな。ならば、答えなかった場合も否定とみなすことにしよう。」
「ま、ま、待ってくれ! わしが悪かった! お前が言う通りだ! 許してくれ!」
とうとうジェットがみんなの前で白状した。重鎮達も兵士達も驚いた様子だ。
「何をしている! この者は最高神ナルーシャ様の敵だ。早く捕らえよ!」
オレの命令でドワーフの兵士達がジェットの身体をロープで縛り上げた。それを確認して、オレは大掛かりな魔法を解除した。すると、黒いドラゴンは消え、空の黒い雲も消えてなくなり、空から明るい光が差し込めてきた。その光がオレの姿を眩しく見せ、辺り一面あたかも神が降臨したかのような神々しさに包まれた。一人また一人と手に持つ武器を手放し、オレに平伏していく。
「みなに告げる。オレは神ではない。アスラ魔王国の王。お前達が言うところの魔王だ。だが、この世界に平和をもたらすようにとナルーシャ様からの使命を受けている。今日ここに、この国は生まれ変わるのだ!」
オレも言葉を聞いてもなお、ドワーフの兵士達も重鎮達も平伏したままだ。オレは精悍な男らしい姿のままドルトン達の前に舞い降りた。
「シルバー殿。まさか、あなたが魔王だとは思いもしませんでした。皆さんが魔族だったことも驚きですが。」
すると、リリーがドルトンに言った。
「悪人に対してはシルバーは怖い魔王だけど、善人に対しては優しい魔王なのよ。」
ここでトロルドが提案してきた。
「魔王様。せっかくここにこの国の重鎮と兵士達が集まっているのですから、全員にはっきりと言っておくべきではないでしょうか。」
「そうだな。」
オレは翼を広げて上空に舞い上がってみんなに言った。
「ここには第2王子のデルタ殿がいる。この国は現国王とデルタ殿が中心であるべきだ。そして、世界平和のためにみんなにも協力して欲しい。だが、もし仮にこの国が世界の平和を乱そうとするならば、オレが率いる魔族軍がこの国を亡ぼすことになると知れ!」
僕の隣には堕天使族のリリー、鬼人族のモモカ、トロール族のトロルドが控えている。その全員が頷いていた。そして、その場の兵士達が次々と解散していく。僕達は人族の姿に変身して、重鎮達と一緒に王城へと行くことになった。ジェットは王城の地下牢に兵士が連れて行った。
「ドルトンさん。テドラ国王がいる場所に連れて行ってくれる?」
「畏まりました。」
僕とリリー、モモカとトロルドはドルトンに連れられてテドラ国王が寝ている部屋に行った。そこにはダリアとデルタ王子、シグマ王女がいた。王子も王女もベッドの脇で、父親を心配そうに見ていた。重鎮達は部屋の外に控えさせている。
「デルタ王子。シグマ王女。大丈夫だよ。テドラ国王は僕が治すから。」
僕はテドラ国王が寝ているベッドに近づき、テドラ国王に魔法を発動する。
『デトックス』
すると、テドラ国王の口から黒いものが雲のようにどんどん出てくる。僕はそれを魔法で回収する。
『グラトニー』
僕の手から黒い渦が出て、黒い雲を回収した。すると、テドラ国王がゆっくりと目を開けた。
「き、奇跡だ!!!」
テドラ国王は状況が分からない。目の前には、ドルトンの領地に避難させていた可愛い我が子のデルタ王子とシグマ王女がいる。そして、部屋の中を見渡すと、そこには人族達がいるのだ。
「どうなっているのだ? ドルトン!」
「ハッ! 実は陛下はジェットによって毒を盛られ、昏睡状態にあったのです。それを、ここにおられるシルバー様が助けてくれたのです。」
テドラ国王は僕の顔を見た。そして一言言った。
「使徒様に感謝申し上げる。」
「僕は別に使徒じゃないよ!」
「そうなのか。だが、わしは夢を見たんじゃ。夢の中でナルーシャ様が現れて使いを送ったから、その使いの者に従うようにとおっしゃったのじゃ。」
「そうですか。ナルーシャ様がそんなことをおっしゃったんですね。」
すると後ろからリリーが声をかけてきた。
「シルバー! そのくらいでいいでしょ。早くこの子達を国王に会わせてあげて。」
「そうだね。」
リリーの両手の中にはデルタ王子とシグマ王女がいた。2人は、必死に涙をこらえている。その様子をテドラ国王が見た。テドラ国王はベッドから起きて、王子と王女を抱き上げた。
「デルタ! シグマ! すまなかった! お前達には寂しい思いをさせてしまった! 許してくれ!」
「父上~!」「お父様~!」
デルタ王子とシグマ王女が泣きながら大声を発した。失声症のはずの王子と王女が大声を発したのだ。そして、3人は固く抱きしめ合った。ドルトンもダリアもリリーもモモカもトロルドも全員が涙を流していた。
「良かったね。デルタ王子、シグマ王女。」
リリーが優しく呟いた。すると、2人はテドラ国王の腕から離れてリリーに抱き着いた。
「お姉ちゃ———ん。」




