シルバーの秘密
僕とリリーがいつものように魔法と剣の練習のため山に行くと、そこにはオークの集団がいた。リリーがオークの集団に殺されそうになった瞬間、再び僕はあり得ない力でオークを討伐した。そして、以前と同じように意識を失った。しばらくして、気が付くと、目の前にはローズおばあちゃんがいた。
「気が付いたかい?」
「ぼ、僕、どうしたの?」
するとリリーが教えてくれた。
「私がオークに襲われたのをシルバーが助けてくれたのよ! 覚えていないの?」
「僕が?」
「そうよ! あなたの姿が突然変わって、背中から私と同じ翼が出たのよ。そしたら、ものすごく強くなって、あんなにたくさんいたオークを一瞬で殺しちゃったのよ。見てみなさいよ。」
リリーに言われて周りを見ると、オークの死体がごろごろしていた。まさか、自分一人でこれを全部倒したのかと思うと、とても信じられなかった。
「本当に僕がやったの?」
「そうよ。他に誰がいるのよ!」
すると、ローズおばあちゃんが言った。
「やはりシルバーは魔族じゃったな。理由はわからんが、もしかしたら封印がかけられているのかもしれんな。」
「封印?」
「ああ、呪いのようなもんじゃよ。恐らく、シルバーの力も記憶もすべて封印されているんじゃろうな。」
すると、リリーが言ってきた。
「ローズおばあちゃん。シルバーの封印を解く方法はないの?」
「ないこともないがな。だが、シルバーはそれを望むのか?」
「封印がなくなったら、僕はどうなるの?」
「恐らく、消えた記憶が戻るじゃろうな。それに、お前の秘められた力が解放されるじゃろうよ。」
心配そうにリリーが言ってきた。
「シルバーがシルバーじゃなくなっちゃうの? 私やおばあちゃんのことを忘れちゃうの?」
「それはないだろうが、一つ心配なことがあるな。」
ローズおばあちゃんが心配そうに僕を見つめる。
「心配ってなに?」
「お前が邪悪な存在の可能性じゃよ。お前の力が封印されていたとしたら、誰が封印したんじゃろうな。そう考えると、封印しなければいけないほど危険な存在だった可能性があるじゃろうて。」
確かにそうだ。でも、自分がどんな存在なのかも気になる。
「僕が邪悪な存在だったら、僕を殺してくれる?」
すると、リリーが真剣な顔で言った。
「あんたが邪悪な存在なわけないじゃない!」
「リリーの話から想像するに、お前が邪悪な存在だったら、わしもリリーも一瞬で殺されるじゃろうな。」
「なら、封印なんかそのままにする! 僕は今のままでいい!」
「本当にそれでよいのか?」
「うん。だって、今が一番幸せだもん。」
「そうか。なら、封印はそのままにしておこうかのう。それに、そなたの封印は相当強いから、わしに解除できるかどうかもわからんしのう。」
僕達は魔法袋にオークの死体を入れて山を下りた。その日の夕食はオークのステーキだ。
「やっぱりオークの肉は美味しいよね?」
「でも、そいつらはリリーを殺そうとしていた奴だよ!」
「だからよ。余計に美味しく感じるわ。ありがとう。シルバー!」
「何言ってるんだよ! 家族を守るのは当たり前じゃないか。」
リリーははにかんで笑っている。そして、また翌日から勉強と修行の日々が始まった。その日以降、山にはオークの姿は見られなくなった。そのため、山の開けた場所で、僕とリリーは魔法の練習に明け暮れた。
「やっぱりリリーの魔法は凄いね。」
「炎だけだけどね。私にはシルバーが羨ましいわよ。」
「どうしてさ。僕の魔法じゃ、魔獣どころか野生動物すら倒せないよ。」
「だって、シルバーはいろんな魔法が使えるじゃない。水が欲しければ水が出せるし、髪の毛を乾かすのだって手から温風が出て便利じゃない。」
「生活するには便利かもしれないけど、これじゃあリリーを守れないよ。」
するとリリーが真っ赤な顔をして言った。
「シルバーは私を守ってくれるの?」
「当たり前じゃないか。僕達は兄妹のようなもんなんだから。」
「そうなのね。」
何故かリリーが寂しそうな顔になった。
「ねぇ、リリー! また、ローズおばあちゃんにピンキーを取って帰ろうよ。」
「そうね。おばあちゃん、ピンキー好きだもんね。」
2人はピンキーの木がある場所まで行った。すると、そこにはピンキーに群がるレッドガリラの群れがいた。レッドガリラは全身が筋肉だ。力が強い。しかも、頭がよくて集団で戦う習性がある。
「どうするの? リリー!」
「おばあちゃんにピンキーを持って帰るんでしょ?」
「そうだけど、相手はレッドガリラだよ。あいつら相当強いよ。」
「だから何よ。情けないわね。シルバーは男でしょ!」
「わかったよ。なら、僕が石を投げて注意を引き付けるから、その間にリリーがピンキーを取ってきてよ。」
「あなたが囮になるってこと? 大丈夫なの?」
「大丈夫さ。僕は逃げ足だけは速いからね。」
僕は足元に転がっていた石を投げた。レッドガリラが僕を見た。僕は何個も石を拾ってレッドガリラに石を投げつけた。すると、レッドガリラ達は僕を敵認識したのか、一斉に襲い掛かってくる。僕は必死で逃げた。森の木々の間を縫ってひたすら逃げた。だが、レッドガリラの方が身体能力が高い。すぐ後ろまで来ている。そこで、僕は氷の魔法で地面を凍らせながら進んだ。
「ドテッ」
「ツルッン」
思った通りレッドガリラは氷で滑っている。その隙にと、僕はどんどん下に逃げた。だが、目の前にいきなりレッドガリラが現れた。どうやら、レッドガリラは二手に分かれて先回りしたみたいだ。立ち止まって後ろを見る。後ろからもレッドガリラがやって来ている。額から汗が流れた。
“どうしようかな~? このままじゃまずいよな~。”
僕は落ちている木の枝に火を付けた。基本的に野生動物は火が苦手なのを知っていたからだ。レッドガリラ達は火を見て後ずさりする。だが、後ろから追いかけてきたレッドガリラ達が一斉にジャンプして、僕に襲い掛かってきた。そして、僕の意識は途絶えた。
「シルバー! シルバー!」
リリーの声で目を覚ますと、僕は無事のようだ。そして、周りにはレッドガリラ達の死体が散乱していた。




