タケオ山のコカトリス討伐
僕達はもう一つの国境の山、タケオ山に向かった。タケオ山は死火山だ。火口が大きく、その中には雨水がたまったのか湖があった。そして、その畔にコカトリスが住み着いていた。コカトリスは要注意の魔獣だ。コカトリスの赤い目を見ると石化してしまう。だから、討伐するときは目から攻撃する必要があるのだ。
「シルバー! 今度は私にやらせて!」
「いいけど、石化しないように注意するようにね。」
「大丈夫よ。作戦は考えてあるんだから。」
そう言ってリリーは体中の魔力を高めていく。恐らく、遠距離攻撃でコカトリスの目を狙うつもりなんだろう。コカトリスが俺達の魔力に気付いた。ソワソワと始めたと思ったら、辺りをキョロキョロとしている。
『シャイニングビーム』
リリーがコカトリスの目を狙って光線を放った。だが、偶然、運悪くコカトリスが頭を下げてしまった。そのため、外れた光線はそのまま進み、火口の岩を粉々に砕いた。完全に敵の存在に気付いたコカトリスは、羽を広げて上空に舞い上がりオレ達を睨みつけた。そして、鳴き声を上げると同時に氷のブレスで攻撃してきた。
「ギョー ギョー」
オレ達は大きな岩の陰に入ってそれを避けた。
「しくじったわ。まさか、あそこで頭を下げるなんて!」
「どうする? オレが討伐しようか?」
「ダメよ! ダメ! ダメ! 私が討伐するって言ったでしょ!」
リリーが体の魔力を高めていく。そして、両手を上に挙げて魔法を唱えた。
『サンシャイン』
すると、上空に大きな光の玉が現れ、眩しい光が発せられている。僕達は当然視線をそらした。だが、コカトリスはその習性から光の玉を直視した。
「ギャー ギャー」
コカトリスは翼をバタバタさせて苦しんでいる。リリーは上空に舞い上がり、さらに魔法を発動した。
『ファイアーアロー』
すると、今度は上空に数えきれないほどの炎の矢が現れ、コカトリスめがけて放たれた。炎の矢がコカトリスに直撃していく。コカトリスは、地面に落下したが、まだ息があるようだ。此方を睨んでいる。だが、コカトリスの目は眩しい光球の影響なのか、赤く光らない。
「これで終わりよ!」
リリーが剣を抜いて横に一振りした。
『光斬撃』
「シューツ」
すると、光の刃がコカトリスの身体を2つに分けた。
「終わったわ!」
「リリーもかなり強くなったよね。」
「そう?」
するとトロルドがリリーに言った。
「今のリリー殿は魔族の中でも屈指の強さですな。」
なんか褒められたリリーがニコニコと嬉しそうにはにかんでいる。
「そう? そんなに~! そうかな~?」
オレ達は元の姿になって宿屋の僕の部屋に転移で戻った。そして、ドルトンさんの部屋に行くと、そこには誰もいなかった。争ったような形跡があり、部屋はグチャグチャだ。おまけに、床や壁には血がついている。
「何があったのかな~? シルバー!」
「もしかしたら、ジェットの手の者に襲われたのかもしれないね。」
「シルバー殿。どうして、この宿屋に隠れていることがばれたんでしょうか? ドルトン殿達は誰一人この宿屋から出ていませんよ。」
「もしかしたら」
すると、モモカがやってきた。
「シルバーさん。ドルトンとダリア、それに王子達はジェットの屋敷です。どういたしましょう?」
僕の後ろにいたトロルドが前に出て言った。
「モモカがいながらなぜ彼らは攫われたんだ!」
「すまない。だが、私は眷属の報告を受けてジェットの屋敷に行っていたんだ。そこに、ジェットの仲間達が集まっていると報告があったからな。遠くから様子を見ていたら、ドルトンとダリア、それに王子と王女が連れてこられたんだ。」
「ねえ。シルバー! どうして、トロルドさん達の居場所が分かったのかな~?」
「ジェットの屋敷に御者の姿があったから、多分あいつも仲間だったんだろう!」
「なるほどね。すっと、私達の様子を探っていたのね。許せないわ!」
僕には気になることがあった。ドルトンさん達の部屋にあった血の跡だ。
「血の跡があるんだけど、誰か怪我をしたのかな~? モモカ。みんなの様子はどうだった?」
「遠くで良く見えませんでしたが、4人に怪我をしている様子はなかったです!」
「それなら安心だね。じゃあ、みんなでジェットの屋敷に行こうか。」
「はい。」
僕達がジェットの屋敷に行くと、たくさんの兵士達が集まっていた。どうやら、御者から僕達のことが報告されたのだろう。かなり警戒している様子がうかがわれる。しかも、屋敷にはこの国の重鎮達まで集まっていた。エルフ族との戦争に向けての作戦会議を開いているようだ。
「諸君! いよいよ時が来た。わしはこのドラッコ王国の王となる。そして、長年わし達に敵対してきた憎きエルフ族を滅ぼすのだ!」
「オオ——————!」
そして、庭にいる重鎮と兵士達の前にドルトン、ダリア、デルタ王子、シグマ王女が縛られた状態で連れてこられた。
「みなのもの、聞いてくれ! この者達はこのドラッコ王国をエルフ族に売り渡そうとしていた極悪人だ。この場で処刑する。異議のある者はいるかー!」
「・・・・・」
誰も名乗り出ようとしない。ジェットの言葉を信じているのか、それともジェットを恐れているのかは分からない。だが、4人の味方をする者は一人もいなかった。そして、4人は縛られた状態で木の柱に縛りつけられ、足元には燃やすための枯れ枝が積まれている。恐らく、火と付けて焼き殺すつもりなのだろう。
「おい! そろそろいいだろう! 火を付けろ!」
「ハッ」
ジェットの命令で兵士が火をつけた。どうやら限界のようだ。僕は魔法を唱えた。
『ウォーターボール』
すると、兵士達の後ろから大きな水の塊が4人の周りを水浸しにした。それを見ていた人々は何が起こったのか理解できていないようだ。
「どうした? 今の水はなんだ? 誰の仕業だ?」
僕達は瞬間移動で4人の前に現れた。
「遅くなったね。今、助けるからね。」
僕は剣で4人のロープを斬った。
「シルバー殿。助けに来てくれたんですか?」
「だって約束したじゃん。」
「そうですが、ここには訓練された兵士達も大勢います。命の保証はありませんよ。」
するとリリーが言った。
「大丈夫よ。私達がついているから。4人には指1本触れさせないわ!」
するとジェットが大声で叫んだ。
「みな何をしている。早くこの反逆者どもを打ち取らぬか!」




