アタゴ山の地竜退治
僕は王都ビザンツを歩いて情報収集した後、宿屋に戻ってドルトンの部屋に行った。すると、リリーとトロルドが必死で王子と王女に話しかけていた。
「どうしたの?」
「デルタとシグマは失声症らしいのよ。」
「どういうこと?」
リリーが説明してくれた。怪我や普通の病気なら僕の魔法で何とかなる。だが、心の病までは治せない。さすがの僕も困った。すると、ドルトンが言ってきた。
「シルバー殿。王子と王女の病は心の病です。恐らく治癒するには相当な時間がかかるでしょう。ですが、私は必ず治ると信じていますので、今はそっとしておきましょう。」
「わかったよ。僕も何か方法がないか考えてみるね。」
夕方の時間になって、僕の部屋にモモカとリリーとトロルドが集まってきた。
「シルバー! デルタとシグマの病気はどうにもできないの?」
「ドルトンさんの言う通り、心の病は簡単には治せないよ。さすがに僕の魔法でも無理かな。」
「そうなんだ~。」
リリーが寂しそうに言った。
「魔王様。ジェットの件でご報告があります。」
「何かわかったの?」
「はい。眷属からの報告によりますと、ジェットは子息のグライダと共謀して国王に毒を盛ったようです。」
「やっぱりね。 実行犯は第3夫人だよね?」
「その通りです! 知っていらっしゃったんですか?」
「別に知っていたわけじゃないけど。想像はついていたさ。それで、第1王子と第1夫人、それとデルタ達の母親の第2夫人は?」
「はい。第1王子は国王と同様に毒を盛られたようです。ですが、第1夫人の死に不審な点はありません。第2夫人の死因も難産によるものと思われます。」
「でも、デルタとシグマが毒で殺されなくてよかったよ。」
「おっしゃる通りです。」
すると、トロルドが聞いてきた。
「これからどうしますか?」
「僕の調査がまだなんだよね。ジェットがこの国を乗っ取るつもりなのはわかったんだけどさ。どこまで彼の影響下にあるのか分からないんだよね。」
「シルバー! 国王の病気は治るのかな~?」
「毒が原因なら治せると思うけど。」
「なら、国王の病気を治して、国王に威厳を取り戻してもらった方がいいんじゃない?」
「確かにそうだけど。でも、反国王派としてジェットの味方をするものがどのくらいいるのか知っておかないと、この国が内戦状態になる可能性があるでしょ。」
「そうね。シルバーの言う通りだわ。」
「魔王様。私が眷属を使って調べさせます。」
「頼むよ。僕は、リリーとトロルドと一緒に国境沿いの山に出る地竜とコカトリスを討伐してくるよ。」
「わかりました。お気を付けください。」
「うん。」
そして、翌日、僕とリリーとトロルドは王都の郊外の森まで来た。そこで3人は本来の姿に戻って背中の翼を広げて、国境沿いのアタゴ山に向かった。トロルドは初めての飛翔に戸惑っている。
「まさか、トロール族の私の背中に翼が出て飛翔できる日が来るとは思いもよりませんでした。このトロルド、感激でいっぱいです。」
アタゴ山に着いた瞬間、トロルドさんが感激のあまり泣き出してしまった。体の大きなトロルドが泣く姿はなんか不思議な光景だ。
「泣いてる暇はないぞ! トロルド!」
「はい。」
僕は気配感知で地竜を探した。だが、地竜の反応が確認できないでいる。すると、トロルドが言った。
「魔王様。地竜は普段かなり地中の深い場所にいます。私がおびき出しましょう。」
「そうね。トロルドはトロール族ですもんね。大地の精霊から生まれた種族なんでしょ?」
「その通りです。ですので、地中から地竜をおびき出すぐらいは容易です。」
すると、トロルドがアタゴ山の山頂で踊り始めた。地面が地震のように揺れる。以前、トロルドがリリーと戦った時のことを思い出す。あの時も確か地震のような大きな揺れを起こしていた。
「どうやら地竜の登場だよ。リリーもトロルドも注意して!」
僕達のいる場所の地面が砂地に変化して、蟻地獄のような穴が開いていく。穴の中心に鼻の上に大きな角を持ったオオトカゲのような顔が見えた。
「このままだとまずいな! リリー! 氷魔法で地面を固めてくれ!」
「了解!」
『アイスハーデン』
リリーが手を前に差し出して魔法を唱えた。すると、地面が固く凍っていく。蟻地獄のような穴も凍ってしまった。だが、地竜は地中に潜って凍るのを防いだようだ。今度は俺が魔法を唱えた。
『グラビティ―』
すると、地中にいた地竜がどんどん持ち上がっていく。地竜も必死に逃れようと暴れるが無駄な抵抗だ。地竜はその巨体ごと空中に浮かび姿を現した。
「ドスン」
地竜が高い場所から凍っている地面に落ちた。そのまま地面に潜ろうとするが、リリーの魔法で辺り一帯の地面は固く凍っていて穴が掘れない。そして、地面に潜ることを諦めて俺達に攻撃を仕掛けてきた。大きく開いた口から炎のブレスを吐いてくる。かなりの威力だ。僕は3人の前に強力な結界を張って防いだ。
「グォー」
「魔王様。私にやらせていただいてよろしいでしょうか?」
「わかった。トロルドに任せるよ。」
オレとリリーはその場から瞬間移動で少し離れた場所に移動して、トロルドの戦いぶりを見ることにした。普段ならトロルドは大きな金棒で戦うのだが、今はドワーフ族の国に来ている。そのため、金棒は持っていない。その代わり、背中に背負っている大剣を手に持ち、地竜に切りかかった。
「いくぞ!」
地竜も大きな尻尾で応戦する。尻尾の先には固い岩のようなものがついていた。
「ガキン」
さすがはトロルドだ。地竜との力比べでも負けてはいない。トロルドは後方にジャンプして、一旦地竜との距離を取り魔法を唱えた。
『グランドスピア』
すると、地竜のいる地面から鋭い石の槍が上空に向かって突き出した。咄嗟のことで地竜は避けきれない。
「ギャー」
鋭い石の槍が地竜の腹に突き刺さった。地竜の腹からは血が噴き出している。次の瞬間、トロルドは地竜の頭上に瞬間移動して、大剣を一気に振り下ろした。
「ドサッ」
地竜の頭が身体から切り離された。トロルドの勝利だ。僕達はトロルドのもとまで転移した。
「お疲れさん。」
「どうですか? 少しは強くなったでしょうか?」
トロルドが少し誇らしげに聞いてきた。
「トロルドは初めから強いじゃないか。でも、さらに強くなることはいいことだね。」
「ありがとうございます。魔王様から頂いた指輪のお陰です。この指輪のお陰で私の戦い方の幅が大きく広がりましたので。」
「それは良かったよ。じゃあ、少し休んでコカトリスのいる場所まで行こうか?」
「はい。」




