僕の同室はトロルド!
王都ビザンツに向かう途中ハイオークの集団に襲われたが、トロルドとモモカの活躍で討伐に成功した。だが、トロルドとモモカがそれなりの強さを持っていたために、ドルトンとダリアが少し警戒をし始めた。そこで、僕は正直に聞いた。
「ドルトンさん。初めに言っておきます。話したくなければ結構ですから。ドルトンさんとダリアさんはその子達の護衛ですよね?」
「急に何を言われるんですか? デルタもシグマも私達の子どもですよ。」
「そうですか? でも、あなた方の身のこなしは訓練された兵士の動きですよね?」
すると、ダリアが僕に向かって剣を抜こうとした。それをドルトンが止めた。
「やめるんだ! ダリア!」
ダリアは剣を抜こうとしたが、元の体制に戻った。
「すまない。事情は話せない。この子達をなんとか無事に王都まで連れていきたいんだ。シルバー殿。協力してもらえないだろうか?」
「別にいいけど、そんなに簡単に僕達のことを信じていいの?」
すると、ドルトンが笑いながら言った。
「シルバー殿が見抜いた通り、俺とダリアは護衛の兵士だ。だが、俺の目だって節穴じゃないさ。シルバー殿がみんなのリーダーなんだろ? ならば、みんなの中で一番強いはずさ。それにもかかわらず、トロルド殿もモモカ殿も異常な強さだ。ならば、シルバー殿の強さはそれ以上ということになるな。」
参った。このトロルドという男、ただの兵士ではなさそうだ。それなりに洞察力があって、頭も切れる。下手に隠してもしょうがない。
「まあ、そうかもね。」
「やはりな。ハイオークの群れが襲ってきても、動揺すらしなかった。恐らく、一人で簡単に討伐できる自信があったからだろうな。」
すると、ダリアが驚いて言った。
「まさか?! ハイオーク10体をたった一人でか?!」
「そうさ。俺の目に狂いがなければな。」
「買いかぶりすぎだよ。トロルドもモモカもそれなりに強いのを知っていたからね。」
そんな話をしていると、最初の街インデリーに到着した。僕達はドルトンさんの隣の部屋を2部屋とった。
「え————! 私がシルバーと同じ部屋じゃないの?」
「だってしょうがないじゃん。2部屋しかないんだから。」
するとモモカが爆弾発言だ。
「私がシルバーさんと同じ部屋でもいいですよ。」
「そんなのダメに決まっているでしょ!」
「なら、男同士、女同士でいいんじゃないの。」
「仕方がないわね~!」
トロルドは何故か感激している。
「本当に私がシルバー殿と同じ部屋でいいんですか?」
「いいさ。俺もトロルドと同じ部屋の方が寛ぐからね。」
「何よ! その言い方! もう知らないんだから!」
なんかリリーが怒ってしまった。少しリリーと二人きりになる必要がある。僕はリリーを宿屋の庭に呼んで、頬にキスをしながら言った。
「トロルドとモモカを同じ部屋にはできないでしょ。我慢しようよ。『リリーも』!」
最後を強調したのがよかったのか、リリーの機嫌が直った。僕達がみんなのいる食堂に行くとモモカが聞いてきた。
「何かあったんですか? シルバーさん。」
「いいや。別に何でもないよ。今後の相談をしたんだよ。それより注文しようよ。お腹空いちゃった。」
隣の席を見ると、すでにドルトンさん達は食べ始めていた。パンとサラダとシチューだ。シチューからすごくいい匂いがする。
「僕、ドルトンさん達と同じものにするよ。」
「なら、私も!」
「私も一緒でいいです。」
何故かトロルドはパンを5つ頼んでいた。晩御飯を食べた後は、それぞれの部屋に行って休むことになった。僕は風呂に入った後、すぐにベッドで横になろうとしたが、トロルドが入り口で固まって動こうとしない。
「どうしたの?」
「いいえ。シルバー殿と一緒の部屋にいるなんて奇跡ですから。この時間を大切にしたいんです。」
「僕が落ち着かないから、早くお風呂に入って来て!」
「は、はい! すぐに!」
トロルドが風呂に行ったと思ったらすぐに戻ってきた。
「どうしたの? 何か忘れ物?」
「いいえ。もう入ってきましたので。」
「えっ?! だって、今行ったばっかりじゃん。」
「はい。シルバー殿をお待たせするわけにはいきませんので。」
「そんなに緊張しないでよ。じゃあ寝るよ。」
「は、はい!」
僕はぐっすりと寝た。だが、翌朝起きるとトロルドの目の下にはクマが出来ていた。
「寝れなかったの?」
「・・・・・」
なんかこのままトロルドと同じ部屋に泊まると、彼の身体が持たないような気がしてきた。次から一人一部屋とることにしよう。僕達が食堂に行くと、すでにドルトン達は朝食を食べていた。僕とトロルドが食べ始めようとした時に、やっとリリーとモモカがやってきた。
「二人とも遅いよ! 早く食べないと朝食抜きだからね!」
リリーとモモカは急いで席に座って、朝ご飯が出てくると一言もしゃべらずに一心不乱に食べ始めた。丁度全員が食べ終わったタイミングで御者の男性が出発を知らせに来た。僕達は全員で馬車に乗り込んだ。
「ドルトンさん。その荷物大変でしょ?」
「ええ、まあ。ですが、4人分ですから仕方ないですよ。」
ドルトンさんがかなり重そうな荷物を両手に持っている。背中にまで背負っている状態だ。何が入っているんだろう? そんなことを考えながら、今朝作っておいた魔法袋をドルトンに渡した。
「ドルトンさん。これあげるから使って!」
「これは魔法袋ですか? こんな貴重なものを頂くわけにはいきません。」
するとリリーが余計なことを言った。
「気にすることはないわよ。どうせ、シルバーが魔法で作ったんだから。」
「えっ?! シルバー殿が作ったんですか?」
リリーが慌てて口に手を当てたがもう遅い。
「僕、付与魔法が得意なんだよね。だから、遠慮しないで!」
「付与魔法ですか? ドワーフ族で付与魔法を使えるのは王宮魔術師のジダンだけかと思っていました。まさか、シルバー殿が使えるとは。」
すると、ダリアが現実的なことを言ってきた。
「ドルトン。頂いておきましょ。あなたの両手が塞がっていたら、いざという時困るでしょ。」
「そうだな。シルバー殿。遠慮なく使わせてもらいます。」
馬車が出発してしばらくした頃、草原を抜けて森の中に入って行った。すると、前方3㎞ほどの地点で、何かが僕の気配感知に感じられた。僕は馬車の中のみんなに言った。
「この先に集団で待ち構えている人達がいるよ。」
すると、御者の男性が言ってきた。
「私には何も見えませんよ。」
「3キロぐらい先だからまだ見えないと思うよ。」
「ほう! お客さんは3キロ先が分かるんですか?」
「まあね。」




