ドワーフの国ドラッコ王国
城下を歩いていると、片足を失った元兵士のレビンと会った。そこで、上級の回復魔法でレビンの足を元に戻すと近くにいた人々から拝まれてしまった。オレは自分が崇拝の対象ではなく、ナルーシャ様こそが崇拝の対象だと説明し、城に戻ることにした。城に帰ると、オレが戻るのをブラッドが待っていた。
「魔王様。モモカとトロルドが待っていますが、どうしますか?」
「2人が戻ってきているのか? なら、オレの執務室に案内してくれ。」
「畏まりました。」
オレはリリーと執務室で待っていた。しばらくして、ノックの音が聞こえた。
「コンコン」
「入れ!」
すると、ブラッドとモモカとトロルドがやってきた。
「ご苦労だったな。モモカ。トロルド。」
「お久しぶりでございます。魔王様。」
トロルドのあいさつの後にモモカが意味深な発言をした。
「魔王様。会いたかったです。」
リリーの顔色が変わっていく。
「すまなかったな。アマゾル大陸の平定に時間がかかってしまってな。」
すると、トロルドが調査の報告をしてきた。
「魔王様。エルフ族とドワーフ族の争いの原因が判明しましたが、少し厄介です。」
「そうか。状況を詳しく教えてくれるか?」
モモカがトロルドを押しのけて説明し始めた。トロルドは残念そうだ。
「なら、私から説明しますね。」
「私とトロルドがドワーフに変装してドワーフの国ドラッコ王国に行ったのですが、ドワーフ達はみんな大酒のみばかりで大変でした。」
すると、トロルドが補足した。
「さすがの私でも、飲み比べで勝てませんでしたよ。」
「トロール族のトロルドよりも飲むのか?」
「はい。しかも彼らの飲む酒は異様に強いんです。」
「そうか。それで?」
再びモモカが説明を始めた。
「酒の席だったのでドワーフ達も口が軽くなっていたようで、いろいろと教えてくれました。ドワーフ族のドラッコ王国とエルフ族のエルグラン王国の国境沿いに大きな山が2つあるんですが、アタゴ山からはドワーフ族が欲しがる鉱物が発掘できるんです。ですが、もう一つのタケオ山からは発掘できないのです。」
「もしかして、鉱山が発掘できる方のアタゴ山がエルフ族の領地で、発掘できない方のタケオ山がドワーフ族の領地ということか?」
「えっ?! どうしてわかったんですか?」
「話の流れから考えればわかるさ。」
「さすがは魔王様です。ですが、それだけではないんです。発掘できない方のタケオ山にはエルフ族が信仰している世界樹の幼木があるんです。」
「なるほどな。それは確かに厄介だな~。」
するとリリーが言った。
「そんなの簡単じゃない。お互いの山を交換すればいいだけじゃない。」
即座にトロルドが答えた。
「そんなに簡単な問題じゃないんです。」
「どういうこと?」
「はい。アタゴ山近辺には地竜どもが住み着いていて、タケオ山近辺にはコカトリスが居座っているんです。」
「だったらドワーフ族とエルフ族で協力して討伐すればいいんじゃないの?」
「リリー! どちらの種族も自分達に犠牲者は出したくないだろ。だから、お互いに責任を押し付けあってるんだろうさ。」
すると、モモカとトロルドが顔を見合わせた。
「魔王様はまるで見てきたかのようですな。よくお分かりで。」
「想像はつくさ。面倒なことは人に押し付けた方が楽だからな。」
すると、モモカが期待するかのような目つきで聞いてきた。
「魔王様。どうなさいますか? できれば私達と一緒にユーテス大陸に来ていただければ嬉しいのですが。」
「当然シルバーは行くわよ。私も一緒にね。」
リリーがオレの代わりに答えた。トロルドは嬉しそうだが、モモカの表情は微妙に暗くなった。
「オレも行くよ。その前に、オレもリリーも変身しないとな。」
オレとリリーはドワーフに姿を変えた。本来ドワーフの男性は子どもでない限り髭を生やしている。にもかかわらず、オレには髭がない。やはり、女性のような容姿だ。
「魔王様! 素敵です! よくお似合いですよ!」
モモカが褒めるがトロルドの反応は違う。
「魔王様。大変失礼なことを言いますが、それでは女と間違えられます。」
すると、リリーが鬼の形相で言った。
「いいのよ! これで! シルバーに髭なんて絶対にダメなんだから!」
モモカとトロルドもドワーフに変身した。トロルドは顎髭がモサモサだ。モモカはリリーと違って胸の小さな女性に変身した。
「モモカ。なんか普段と違うんじゃない?」
「だって、魔王様は私のような大人の女性よりも、セリーヌやリリーのような子どもの方が好きそうだから。」
「モモカ。それは誤解だからね。僕は別に大人の女性より子どもの方が好きなわけじゃないから。」
「そうなんですか~? でも、いいです。普段と違う方が楽しいですから。」
僕達4人は、トロルドとモモカが活動していたドラッコ王国の街センダに転移した。初めて見るドワーフの街だ。ドワーフは小柄な種族だが、家の大きさは人族と同じぐらいだ。ただ、街の中に屋台はない。その代わり酒場が多くみられる。街を歩くと、金物屋と武器屋も多い。
「やっぱりドワーフ族はみんな小柄だね。大人と子どもの区別が難しいよ。」
「やはりそうですか。私も最初来た時は戸惑いましたから。」
僕はモモカとトロルドにくれぐれも「魔王様」とは言わないようにと念を押しておいた。トロルドは「シルバー殿」モモカは「シルバーさん」と呼ぶようにするらしい。リリーはいつものように僕の手をつないでいる。
「この国の王都はどこなの?」
トロルドがオレの質問に答えた。
「王都はここから300キロ北にあります。確か~・・・・」
「王都はビザンツでしょ! しっかりしなさいよ。トロルド!」
「ああ、そうだったな。」
なんだかんだモモカとトロルドはいいコンビだ。モモカの本心は分からないが、トロルドはモモカが気に入っているようだ。
「なら、ここから王都まで行こうか? 馬車とかあるの?」
「一応はあるけど、乗り心地はよくありませんよ。」
するとリリーが言った。
「全員空を飛べるんだから飛翔していけばいいじゃない。」
「ダメだよ。この国全体を見て回りたいんだから。何か問題があるかもしれないでしょ!」
「そうね。シルバーの言うとおりね。なら、馬車で行きましょ!」




