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魔王シルバーの異世界冒険  作者: バーチ君
ユーテス大陸
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奇跡の魔法『レストラクション』

 アマゾル大陸の混乱を鎮めたオレとリリーは魔王城へと戻った。すると、ブラッドがすぐにオレの執務室にやって来た。



「お帰りなさいませ。魔王様。」


「ありがとう。ブラッド。オレが留守の間、何もなかった?」


「はい。特に何もありませんでした。」


「そうか。なら、2・3日ゆっくりさせてもらうな。」


「はい。それがよろしいかと思います。」



 オレとブラッドのやり取りを横で聞いていたリリーが聞いてきた。



「シルバー! ゆっくりするって何するの?」


「久しぶりに王都アテナを見て回るのさ。」


「なら、私も一緒に行くわ!」



 オレはリリーと王都に繰り出した。普段着のオレを魔王だとわかるものは少ない。たまにオレのことを知っている者もいるが、お辞儀をする程度だ。



「この国は平和ね!」


「そうだな。世界中がこんな風に平和になればいいんだけどな。」


「次は、どこに行くの?」


「モモカとトロルドのいるユーテス大陸に行くつもりだよ。」


「私はお留守番よね?」


「リリーはもう文部大臣じゃないし、オレと一緒に来ても問題ないんじゃないか!」


「本当?」



 リリーは飛び跳ねて喜んでいる。



「ブラッドに聞かないとわからないけどね。困ってることがあるかもしれないしな。」


「そうね。でも、何もなかったら一緒に行ってもいいんでしょ?」


「まあね。」



 リリーは子どものころから僕と手をつないで歩くのが習慣だ。喜ぶたびに、手に力を入れてくる。なんかすごくわかりやすい。



「久しぶりにあそこの屋台で肉串買おうよ。」


「いいよ。」



 僕とリリーは屋台の前まで行った。当然、屋台の主人はオレのことを知っている。だが、騒ぎにならないように普通に接してくれた。



「はいよ! 肉串2本ね。毎度!」



 こうしてみるとミーア達がいた頃が懐かしい。アツアツのお肉をフーフーしながら美味しそうに食べる姿は、子どもらしくてかわいかった。でも、リリーも負けていない。いつものように口一杯にして食べている。本当に栗鼠のようだ。目の前を子連れの鬼人族の親子が歩いている。突然、男の子が走り出した。男の子の先には父親らしき人がいた。すると、男の子がいきなりこけた。



「ウワーン ウワーン」


「クロト! 男だろ! 転んだぐらいで泣くんじゃない!」



 父親が男の子を抱きかかえた。男の子は安心したのかすぐに泣き止んだ。その光景をオレとリリーは2人で眺めていた。すると、父親が子どもを抱きかかえながら、母親と一緒にベンチに座って寛いでいるオレ達のところに来た。



「魔王様。ご無沙汰しております。」


「えっ?!」



 リリーが小さい声で聞いてきた。



「シルバー! 誰?」


「わからないよ!」



 すると、父親が気付いたらしく言ってきた。



「申し訳ありません。私はレビンと言います。以前はロン様の配下で国防軍にいました。魔王様に作っていただいたゴーレムで訓練を積んで、辺境の地の魔獣討伐に出向いたのですが、キメラに遭遇しまして、討伐には成功したのですが、足を失い今は引退しました。せっかく魔王様にゴーレムを作っていただいたのに情けないです。」



 そう言えば、以前軍部大臣のロンに頼まれてゴーレムを作ったことがある。あの場所にいた兵士の一人だろう。国のために怪我を負ったのだ。何とかしてあげたいと思った。



「レビンさん。ちょっとここに座ってくれるかな。」


「あ、はい。」



 レビンがオレの座っていたベンチに腰掛けた。隣には男の子が座っている。奥さんは何が起こるのかと心配そうに見ている。オレはレビンさんのズボンをまくった。すると、左足が義足になっていた。



「レビンさん。病院で見てもらったの?」


「はい。スペリオ様に見ていただきました。欠損にも効くという高価な薬もいただいたのですが、私の場合は怪我がひどすぎて完全には治らなかったんです。」


「そうなの?」



 リリーも不安そうにしている。



「オレが魔法をかけてみるよ。完全に治るかどうかわからないから期待しないでね。」



 すると、レビンの隣で立っていた奥さんが驚いたようだ。



「魔王様が直々にですか?」


「みんなに魔王様とか言われてるけど、オレは別にそんなに偉い存在じゃないから。気にしないで。じゃあ、やるよ。」



 オレはいつになく魔力を高めていく。すると、オレの身体からいつもの黒いオーラではなく眩しい光が溢れだした。オレは『リカバリー』よりも上級の回復魔法を使った。



『レストラクション』



 すると、オレの手から暖かく眩しい光が辺り一帯を照らした。そして、レビンの足がどんどん元に戻っていく。オレが治療するのを屋台のおじさんも近くを歩いていた通行人達も息をのむように見ていた。



「き、き、奇跡だ!」


「あなた!」


「お父さん!」



 光が収まるとレビンの足は元通りになっていた。



「魔王様が奇跡を起こしたぞ————!」



 近くにいた見物人達がオレに向かって拝み始めた。



「みんな。やめてくれよ。オレは拝まれるような存在じゃないから。」


「ですが、魔王様は失った足を元に戻しました。これは奇跡としか言いようがありません。まさに、神のなせる業です。」


「ならば、魔王としてみんなに命令する。以後、オレのことを拝んだりすること一切禁止だ。みんなが崇拝する対象はナルーシャ様だから。」


「畏まりました。」



 その後、レビン一家に散々お礼を言われた。



「レビンさん。これからどうするの?」


「はい。魔王様には申し訳ないのですが、私は子どもと妻のために生きたいと思います。ですから、兵士には戻りません。」


「家族を守るのも立派な役目だと思うよ。」


「そう言っていただくと気が楽になります。」



 オレはレビンの子どもに言った。



「いいかい。本当に強い男はめったに泣かないんだ。そして、大切なものを命がけで守るのが男の役目だ。君のお父さんのようにな。」


「うん。魔王様。ありがとう。」



 オレとリリーは城に帰ることにした。


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