ケルトン VS シルバー
とうとうケルトンの怒りが爆発した。ケルトンの姿がグレーターデーモンに変化していく。そして、身体から黒いオーラが一気に噴き出した。その光景を見て、ベンガルもライアンもすべての兵士達が驚いた。それもそのはずだ。自分達が『知恵のある者』として、祭り上げていたものが魔族だったのだ。しかも、悪魔族だったのだから、驚きも半端ではない。
「死ね!」
ケルトンの指から黒い光線が僕に放たれた。黒い光線は確かに僕の身体を貫いた。にもかかわらず、僕は平然と立っている。ケルトンは訳が分からず混乱した。
「何故だ? なぜ俺様の攻撃が効かぬ! あり得ぬ!」
「なら、教えてあげるよ。その前に言っておくね。僕のことを知っても、もう逃げられないよ。」
僕は体の中から魔力を一気に解放した。
「バ——————ン!!!」
大きな音と同時に、辺り一面に真っ黒な靄が立ち込め、靄が晴れるとそこには精悍な顔つきの男性、しかも背中に真っ黒な翼を生やした男性が立っていた。
「貴様も魔族だったのか?!」
「オレか? オレの名前はシルバーだ! アスラ魔王国の魔王シルバーだ!」
「ま、ま、まさか?!」
ケルトンの顔が真っ青に変化していく。周りの兵士達も恐怖のどん底に突き落とされたかのような状態だ。中には、地面に座り込んでしまうものもいた。
「魔王だと~! 魔王を名乗っていいのはサタン様だけだ! 死ね~!」
ケルトンがオレに向かって魔法を発動する。無数の黒い刃がオレに襲い掛かった。だが、『パチン』と指を鳴らすと、ケルトンの魔法は消滅した。
「お前、弱すぎるな。以前の『エックス』とかいう奴の方が少しはまともだったぞ!」
ケルトンの怒りがさらに爆発する。そして、ケルトンが懐から真っ黒な水晶を取り出した。
「この水晶には、今まで貯めてきたこの大陸の奴らの悲しみ、憎しみ、苦しみの感情が詰まっているのだ。本来はサタン様への貢物にするはずだったが、もはや仕方がない。」
「パリッ」
ケルトンが力を入れると、黒い水晶が割れた。そして中からどす黒い液体が溢れ出てきた。それをケルトンが飲んだ。すると、ケルトンの魔力がどんどん増えていく。そればかりか、体も5mほどの大きさとなり、頭には2本の角が出た。
「今の俺様はグレーターデーモンなどではないぞ! サタン様と同じデーモンロードだ! どうだ! 恐ろしいだろう!」
「ハッハッハッ」
「何がおかしい?」
「それがお前の隠し玉か?」
「何を強がりを!」
オレはケルトンの頭上に瞬間移動し、手刀で角を切り落とした。
「ギャー」
ケルトンは苦痛から悲鳴を上げた。
「いい声を出すじゃないか。」
「貴様~!」
ケルトンが魔法を発動する。先ほどよりは威力がある。ケルトンの手から放たれた黒い光線がオレに襲い掛かる。オレは右手を前に出し魔法を唱えた。
『グラトニー』
すると、黒い光線はオレの手の中に吸い込まれてしまった。
「だから、言っただろ! 無駄だって! お前ごときじゃ相手にならないんだよ! これで終わりだ!」
『ブラックホール』
オレが魔法を発動すると、オレの手から出た黒い渦がどんどん大きくなり、ケルトンを吸い込んでいく。
「サタン様————! お助けく———」
ケルトンは完全に消滅した。そして、オレは全兵士に聞こえるように言った。
「この大陸の悪の親玉はこの魔王シルバーが滅ぼした。だが、まだ悪魔の手先が2人残っている。こともあろうか、私利私欲のために同属の女や子どもを悪魔に捧げていたものだ! オレはそいつらを許さない! リリー! ゲーテ!」
すると、ライアン国王の前にリリーが姿を現し、一方、ベンガル国王の前にはゲーテが姿を現した。
「この大陸の民よ! 聞くがよい! この大陸の悪はこの魔王シルバーとその仲間が退治する。」
僕は大きな声で言った。
「成敗!!!」
すると、リリーが人には見えない速さで剣を振った。ライアン国王はなすすべもなく、頭と胴体が切り離された。そして、ゲーテがベンガルに向かって翼をはためかせると、翼から出た黒い刃にベンガルは串刺しになった。
オレはさらに魔力を注ぎ込んで、アマゾル大陸全域にオレの声が響き渡るように魔法を発動した。各都市にはオレの声だけでなく、映像が映し出された。いきなり上空にオレの姿が映し出されたことに人々は驚いている。
「オレはアスラ魔王国の魔王シルバーだ! 今、この大陸に巣食っていた悪の根源である『知恵のある者』を討伐した。彼の正体は悪魔族のグレーターデーモンだったのだ。かの者は、この大陸に偽りの肥料を広め、畑を壊滅させ、人々が苦しみ悲しむ姿を喜んでいたのだ。かの者に女性や子どもを貢物としてささげていたライオネル王国のライアン国王とティガー王国のベンガル国王も、わが同朋が討伐した。これで、この大陸にはライオネル王国もティガ王国もなくなった。みんなは自由を取り戻したのだ。この大陸は平和になるのだ。これから、この大陸に新しい国家を樹立する。各都市で代表を決めて欲しい。代表となったものはジュネブ村に来て欲しい。20日後に国民議会を開く。」
オレはすべての魔法を解除した。かなり大掛かりな魔法だったので、さすがのオレも疲れた。オレは、元の姿に戻るとその場に崩れ落ちた。
「シルバー。これでこの大陸も平和になるのね。お疲れ様。ゆっくり休んでね。」
リリーが僕の頭を膝にのせて、意識のない僕に優しくささやいた。その様子をゲーテが笑顔で見ていた。
「リリー様。私の役目は終わりました。魔王城に戻りますので、魔王様にお伝えください。」
「ありがとう。ゲーテ。あなたのお陰よ。」
「いいえ。私は何もしておりません。すべては魔王様のお力です。」
「そうね。やっぱり、シルバーは凄いわね。」
ゲーテは魔王城に帰った。戦争の準備をして集まっていた兵士達は、みんなその場を立ち去っていく。




