グレーターデーモンのケルトン
森の中で遭遇した兵士達を討伐した後、僕達は再びヨハネスシティーに向かった。3時間ほど飛翔したところで、ヨハネスシティーの城壁が見えてきた。ヨハネスシティーはティガ王国の東に位置していて、街の前に広がる大草原の途中からライオネル王国となる。つまり、国境の街なのだ。
「どうするの?」
「どうしようか?」
僕とリリーが相談していると、そこにゲーテが現れた。
「魔王様。ご報告します。」
「ゲーテ。ありがとう。順調のようだね。」
「はい。グレーターデーモンにはライオネル王国のライアン国王が話があると伝えてあります。当のライアン国王はライオネル軍を率いてこちらに向かっておりますが、明日の早朝には到着する見込みです。」
「ティガ王国は?」
「はい。ベンガル国王が兵士達にヨハネスシティーに集まるように指示を出していますが、一部の隊が行方不明になった模様です。ですが、明日の早朝には到着するでしょう。」
すると、リリーが言った。
「行方不明の兵士達はシルバーと私で討伐したわよ。」
「左様でしたか。」
僕はリリーの言葉をフォローした。
「生きてる価値のない連中だったからね。それよりも、これからの行動をどうしようかな~!」
「明日の朝までやることないじゃない。」
「そうだけど、ベンガル国王とライアン国王がどんな人物か知りたいんだよ。」
すると、ゲーテが言った。
「どのようなことでしょうか? 大抵のことは調べてありますが。」
「以前聞いたんだけど、ベンガル国王もライアン国王も『知恵のある者』を取り込むために、女性や子どもを貢いでいるって本当なの?」
「はい。事実です。」
「その女性と子ども達はどうしたの?」
「奴隷として人族の国に売られたり、グレーターデーモンが玩具にして殺したようです。」
「酷いわ! 許せない!」
「はい。私もそう思います。」
「2人の王は、そのことを知ったうえで貢いでいたのかな~?」
「はい。恐らくは知っていたでしょう。生きて戻ったものが一人もいませんので。」
「そうか~。なら、2人の国王も生きてる価値がないよね。」
「はい。ただ、2人がいなくなった場合、この大陸はどうなるのでしょうか?」
僕はいろいろなパターンを考えた。魔族が支配することも、また、誰かを国王に仕立て上げて支配させることも考えた。だが、どちらもうまくいきそうにない。
「国王がいなくちゃダメなのかな?」
僕はポツリと独り言を言った。
「どういうことでしょうか?」
「絶対的な支配者がいなくても、みんなで相談しながらなんて無理なのかな~?」
「そんなことはありません。人族の国でグリス共和国という国がありますが、国民が選んだ人物達が議員となって議会を作り、運営している国もあります。」
「それだよ! それ! ゲーテ! さすがだね!」
「お褒めいただきありがとうございます。」
ここでリリーが聞いてきた。
「シルバー! どういうこと? 私にもわかるように説明して!」
「各種族もしくは各街の代表を選んでもらって、選ばれた者達で議会を作ればいいんだよ。」
「そういうことね。」
「なるほど明暗ですな。そうなればこのアマゾル大陸は一つの共和国に統一できますな。」
「そういうことさ。」
「さすがは魔王様です。」
「でも、ジュネブ村はどうなるの?」
「当然、共和国に属する街になるだけさ。それに、もともと中立地帯だから、ジュネブ村を王都にすればいいよ。どちらからも不満は出ないでしょ?」
「そうね。名案ね。」
そんな話をしながら、森の中で3人は夜を過ごした。そして翌日早朝、ゲーテが僕とリリーを起こした。
「魔王様。リリー様。両国軍がそろそろ到着します。」
僕達3人は気配遮断を発動して姿を消し、翼を出して上空に舞い上がった。草原の向こうにライオネル王国の国旗がはためいているのが見える。恐らく50,000人はいるだろう。一面、赤い鎧を着た兵士達で埋め尽くされている。一方で、ヨハネスシティーの城壁の上には黄色い旗が無数に立っていた。恐らく20,000人ほどの兵士がいるだろう。まさに、目の前で両軍が今にも激突しそうな状態だ。『知恵のある者』の館では大騒ぎだった。
「どうしたというのだ? ベンガル殿!」
「兵士からの知らせで、ライオネル王国のライアンが、全軍を率いてここに攻め込んでくると報告がありましたので、ケルトン様をお守りするために、我らも全軍でやってまいった次第です。」
「馬鹿な! 私はライアン国王が私に貢物を届けに来ると聞いておったぞ!」
「それはありますまい。現にライアンは城壁の向こうに50,000の軍勢で攻めこむ態勢を取っています。」
「ならば、私が参ろう。今はまだその時ではないからな。」
「どいうことですか? ケルトン様。」
「い、いやな。まだ、ライアン国王もそなたも戦をする時期ではないということだ。それぞれの領地をしっかり開発して、国力を高めるのが先だろう。」
「なるほど、確かにその通りですが、ライアンが攻めてくるのであれば止むを得ませんな。」
「相分かった。私がライアン国王を説得することにしよう。」
グレーターデーモンのケルトンが城壁の外に出てきた。城壁の上からベンガルがそれを見ている。一方、ケルトンの姿を見つけたライアンは全軍の一番前に出てきた。今、ここに、悪党3人が勢ぞろいしたのだ。いよいよ機は熟した。
「リリー! ゲーテ! 僕はグレーターデーモンを討伐するよ。リリーはライアンの近くに、ゲーテはベンガルの近くで待機してくれるかな。」
「わかったわ。」
「畏まりました。」
僕は地上に降りてケルトンの前に来た。そして、魔法を解除して姿を現す。突然僕が姿を現したことに、ケルトンだけでなく、周りの兵士達も全員が驚いている。僕は風魔法を使って、今から話す内容が全員に聞こえるようにした。
「貴様! 何者だ?」
「僕が何者でもいいでしょ。それより、正体を現しなよ。グレーターデーモンさん。」
「貴様は何を言っているんだ! 私は『知恵のある者』と呼ばれているものだぞ! グレーターデーモンなどと無礼であろう!」
「なら、『小汚いサタン』の手先ではないんだ! そうだよね。『あの卑怯でろくでもないサタン』の配下のはずがないよね。そもそも、サタンなんて弱いからどこかに隠れて怯えてるだろうしね。」
僕の挑発でケルトンの顔が真っ赤になっていく。そして、抑えきれなくなった怒りが黒いオーラとなって身体からあふれ始めた。
「貴様! 何者だ? サタン様をそこまで侮辱するとは、死ぬ覚悟はできているんだろうな!」
「魔族の面汚しのサタンのことを、今、『サタン様』って言ったよね? やっぱり、サタンの手下じゃないか!」
「許さん! 絶対に許さん!」




