シルバーウルフの親子
僕達はヨハネスシティーに向かう途中で、テキサスシティーの理不尽な兵士達を討伐した。そして、再びヨハネスシティーに向かったのが、だんだん暗くなってきたので地上に降りて野宿することにした。野宿の準備のために森に入って薪を拾っていると、獣の鳴き声が聞こえてきた。
「シルバー! そろそろ戻らない?」
「そうだね。でも、食料を捕まえないと!」
「食べる物がないの?」
僕は魔法袋を確認したが空だった。そこで、空間収納を調べてみると、ラッキーなことにオークの肉が入っていた。
「オークの肉があったよ。」
「なら、それでいいわよ。もう行きましょうよ。」
僕達は最初に降り立った場所まで戻って来た。そこで、薪に火をつけて調理を始める。辺りには肉の焼けるいい匂いが漂い始めた。すると、森の方からカサカサと音が聞こえた。音のする方を見ると、どうやら、臭いにつられてシルバーウルフの親子がやって来たようだ。僕とリリーを警戒している。僕が焼きあがった肉を投げてやると、シルバーウルフの親子が凄い勢いで食べ始めた。
「リリーも、もう食べて大丈夫だよ。」
「ありがと!」
シルバーウルフも僕達もお腹一体だ。すると、シルバーウルフの親子が僕に近寄ってきて、頭をこすりつけ始めた。既に警戒心はないようだ。僕は親子の身体をなでてやった。
「ずるーい! 私も撫でたいわ!」
リリーも一緒になってシルバーウルフを撫で始めた。シルバーウルフの親子は気持ちよさそうにしている。
「シルバーウルフがこんなに人に懐くなんて珍しいわね?」
「餌をあげたからじゃないかな。」
「それにしても、よく懐いたわ。こんなにかわいいなんて思ってなかったわよ。」
「そうだね。本来なら、討伐対象の魔獣だもんね。」
僕とリリーはシルバーウルフを抱き枕のようにして、その場で寝た。当然、僕達の周りには結界が張ってある。朝方、寒さで目が覚めた。リリーもシルバーウルフ親子もまだ寝ているので、起こさないように気を付けながら、リリーの寝顔をじっくりと観察した。やはり、どことなくアテナに似ている気がする。すると、森の方から複数の人間の話し声が聞こえてきた。
「どういうことだよ! 急にヨハネスシティーに向かえって!」
「俺に言われても知らねぇよ。隊長なら知ってるんじゃねぇのか!」
「でも、まあ、戦地から帰ってこられたんだからラッキーだけどな。」
「ちげぇねぇ!」
どうやら兵士のようだ。兵士達はヨハネスシティーに向かっているようだ。恐らくゲーテがうまくやったのだろう。すると、隊から外れた兵士達が僕達を見つけたようだ。僕達に近づいてくる。シルバーウルフの親子がすかさず起きて、僕とリリーを守るように兵士達を威嚇した。シルバーウルフの泣き声で、リリーも起きたようだ。まだ眠いのか目をこすっている。
「ウーウー」
「どうしたの? シルバー!」
「周りを見てごらんよ。」
兵士達がにやにや笑いながら僕達を取り囲むようにしている。
「おい! 女だぜ! ラッキーだな!」
「俺が最初だからな!」
「ふざけるな! 隊長の俺からだ!」
兵士達が僕とリリーを見て興奮し始めている。男のサガって奴だ。でも、僕は女じゃないんだけど。そんなことを考えていると、いきなりシルバーウルフが兵士に襲い掛かった。
「ウー ウォン ウォン」
「やめろ! 放せ!」
「ギャイン ギャイン」
シルバーウルフの母親は兵士に腹をけられて、ころころと転がった。
「リリー! シルバーウルフの怪我を見てやってよ。」
僕は立ち上がって兵士を睨みつけた。
「おー! 怖怖! 姉ちゃん! そんな怖い顔で睨むと美人さんが台無しだぜ!」
「アッハッハッ」
「お前ら何か勘違いしているようだな!」
オレは、逃げられないように周りに結界を張った。そして、姿を変えた。精悍な男性の顔つきになり、背丈も伸びて背中からは黒い翼が出た。
「お前は魔族か!」
隊長がオレに向かって怒鳴った。
「それがどうした?」
オレの身体から真っ黒なオーラが噴き出す。腰を抜かして座り込む兵士達もいた。隊長は震えるのをこらえて、兵士達に大声で命令した。
「おい! ここで魔族を倒して手柄をあげるぞ!」
「オレを倒すか? なかなか面白いな。因みに、オレは魔王だ! オレを倒せば凄い手柄だろうな!」
「ま、魔王?! そ、そんな馬鹿な?! 魔王がこんな場所にいるはずがない!」
オレが隊長を睨むと、オレの目が赤く光り、隊長の頭が吹き飛んだ。
「ギャー! た、た、助けてくれー!」
こぞって兵士達が逃げ出す。だが、オレが張った結界の壁に当たって先には行けない。
「貴様達! 戦争で子どもを殺し、女を犯したな?」
「仕方なかったんだ! 隊長の命令だったんだ!」
「そうか。ならば、オレも迷うことなくお前達を殺せるな。」
オレは手を上にあげて魔法を唱えた。
『シャドウアロー』
すると、真っ黒な矢が上空に現れ、兵士達の心臓を貫いていく。だが、血が出ない。心臓だけを破壊したのだ。全員が息絶えたのを確認して、オレは魔法を解除してもとの姿に戻った。リリーの近くに行くと、子どものシルバーウルフが心配そうに母親に寄り添っている。
「もう大丈夫よ。」
リリーがシルバーウルフの頭をなでると元気に起き上がった。僕とリリーに頭をこすりつけてきた。
「いいかい? 君はお母さんなんだから、無理しちゃだめだよ。この子が一人になっちゃうからね。」
僕がシルバーウルフの母親に話しかけると、リリーが笑いながら言った。
「アッハッハッ! シルバーったらおかしいわ! 魔獣に私達の言葉が理解できるはずないじゃない!」
シルバーウルフの親子は森の中に帰って行った。そして、僕とリリーは死体を処分した後、再びヨハネスシティーに向かった。




