テキサスシティー(1)
僕達が街を出て、街道沿いを歩いていると蝙蝠が1匹目の前にやって来た。そして、蝙蝠は人へと姿を変化させる。
「ゲーテ! どうしてここにいるの?」
「ブラッド様から『知恵のある者』について調べて、魔王様にお伝えするように言われましたので。」
「ありがとう。でも、どうやってここまで来たの?」
「お話をしていませんでしたが、私も転移を使えます。眷属のいるところならどこへでも行けますので。」
すると、リリーが真っ赤な顔をして言った。
「何よそれ! ずるいじゃない。」
「どうしたの? リリー! 顔が赤いよ。」
「だって行きたいところに行けるんでしょ!」
リリーは、恐らく僕がお風呂に入っているところに来たかったのだろう。
「じゃあ、報告を頼むよ。」
「はい。まずは『知恵のある者』についてですが、彼はサタンの配下のグレーターデーモンです。」
「やっぱりね。」
「さすがは魔王様です。気付いていらっしゃったんですね。」
「あったことがないから、確信はなかったけどね。」
「彼の目的は、このアマゾル大陸に混乱を起こし、恐怖・悲しみ・怒り・憎しみの感情を集めることです。」
「どうして、そんなことしてるの?」
「そこまでは分かりません。ただ、サタンの指示によるものと思われます。」
「そのグレーターデーモンは今どこにいるの?」
「はい。ティガ王国の東側の街ヨハネスシティーにいます。」
「ありがとう。助かったよ。」
「お役に立てて光栄です。」
ゲーテの話を聞いて僕は一つの作戦を思いついた。うまく行けば、1度にすべてが解決できる。
「にやにや笑ってどうしたの? シルバー! なんか気持ち悪いわよ!」
「いい事思いついちゃったよ。」
「何何何?!」
僕はリリーに説明した。
「そしたら、この戦争も終わらせることができるし、一石二鳥じゃない!」
「そうでしょ!」
「シルバーはやっぱり天才ね。」
作戦が決まれば行動に移るだけだ。
「ゲーテ! 眷属を使って、ライオネル王国に噂を流して欲しいんだ。」
「どんな噂でしょうか?」
「ティガ王国のベンガルが全軍を率いてヨハネスシティーに向かっているってさ。」
「畏まりました。」
「もう一つお願いがあるんだ。」
「何でしょう。」
「ティガ王国のベンガルに伝わるように、ライオネル王国のライアンが全軍を率いてヨハネスシティーに向かってるって噂を流してくれる?」
するとゲーテが言った。
「そんなことをしたら、両軍の全面戦争になりますよ。」
「大丈夫だよ。だって、国王2人を前に『知恵のある者』の正体を暴くもん。」
「なるほど、そういうことですか。さすがです。魔王様。」
「でも、一つ心配なことがあるんだよな~。」
「シルバーが心配なんて珍しいわね。」
「そんなことはないよ。僕はいつだってリリーのことを心配してるもん。」
「本当?! うれしいわ~!」
リリーが思いっきり僕に抱きついてきた。胸で息ができない。
「ウッホン」
ゲーテが咳払いしている。
「ごめんごめん。サタンの配下に逃げられたらまずいよなって思ったんだ!」
「畏まりました。私が何とかしましょう。」
「ありがとう。」
「では、早速準備にかかります。」
ゲーテの姿が消えた。便利な奴だ。
「これからどうするの?」
「ヨハネスシティーに向かうよ。」
「歩いて行くの?」
「まさか~! 飛翔していくよ。さすがに歩いて行くには遠いからね。」
「そうよね。」
僕とリリーは翼を出してヨハネススシティーに向かった。
「この大陸ってホントに森が多いわよね。」
「確かにね。でも、僕達の大陸より木が小さいし、山がないから遠くまで丸見えだよ。」
1時間ほど飛翔したところで、僕達の少し先に街が見えた。
「シルバー! 両軍の兵士達が集まるのって結構時間かかるわよね?」
「多分ね。なら、せっかくだからあの街にもよりましょうよ。」
「いいよ。」
僕達は街の手前の森の中に舞い降りた。そこから街道に出て、徒歩で向かう。目の前には大きな城壁があった。僕達は、門兵のいる場所まで行って、狩人のコインを見せた。
「入ってよし!」
僕達は城門を通って中に入ったが、他の街と違って何やら雰囲気が暗い。人の姿もほとんどない。いても女性ばかりだ。
「どうしたのかしらね?」
「みんな暗いよね。それに、なんかピリピリしてるよ。」
僕達は狩人ギルドに行くことにした。中に入ると、受付以外は誰もいない。しかも、普通ならお酒の匂いがひどいのに、それもなかった。そこで、受付の狐耳族の女性に聞いてみた。
「誰もいないんだけど、何かあったの?」
「はい。先日、この先でライオネル王国と大規模な戦闘があったんです。それに駆り出されて、大勢亡くなったんです。運よく生き残った人達も大怪我をしたので、みんな家にいるんですよ。しばらくここには誰もいませんよ。」
「確か狩人ギルドって中立のはずよね?」
「建前上はそうなんですけど。ティガ王国の兵士達が強引に連れて行ったんです。」
「酷い話ね! シルバー!」
「なら、この街には戦える人はもういないんだ~!」
「そうですね。一部の兵士達はまだいるでしょうけど。このテキサスシティーの狩人達が最前線で戦わされたらしいですから。」
「戦争がイヤで狩人になった人もいるでしょうに。」
「その通りです。妻や子どもがいるからと、戦争に行かないように狩人になった人もいました。」
だんだん腹が立ってきた。僕の様子が変化したのをリリーが察したようで、声をかけてきた。
「シルバー! もう、この街を離れましょ!」
「うん。」




