これからの計画
オレとリリーは久しぶりに魔王城に帰って来た。オレは精悍な男の姿に変化している。オレの帰還に気が付いたブラッドが、いち早く謁見の間にやって来た。
「お帰りなさいませ。魔王様。」
「ありがとう。ブラッド。留守の間に何かあったか?」
「いいえ。このアスラ魔王国では何も問題はありませんが、世界中で紛争が起きているようです。」
するとリリーが聞いた。
「どういうこと?」
「はい。私の眷属からの報告によりますと、魔王様がいらっしゃったアマゾル大陸のライオネル王国とティガ王国の紛争。ユーテス大陸ではエルフ族とドワーフ族の紛争。さらに、エドパルド大陸には人族の国が多数存在しますが、それぞれの国の内部で反乱があったり、国同士で戦争をしたりしています。唯一平和なのはこのアスラ魔王国と人族のベテルギ王国だけです。」
「そうか。ナルーシャ様の仰ったとおりだな。急がねばならないな。」
「はい。幹部達も魔王様のお役に立ちたいと息巻いております。」
「そうか。ならば、幹部会議を開催しようか。」
「承知しました。2時間後に大会議室に集まるように指示します。」
「頼む。」
オレは会議が始まるまでの時間で、今後の対策を考えた。セリーヌとリリーとブラッドと一緒だ。
「オレは、リリーとアマゾル大陸の混乱を治めてこようと思っている。ついては、他の国の対策なのだが・・・」
僕が言いかけるとブラッドが珍しく話の途中で声をかけてきた。
「しばらくお待ちください。魔王様。」
するとセリーヌが言った。
「ブラッド! 無礼であろう! シルバーが話をしてる途中だぞ!」
「ええ、承知しております。ですが、先に問題点を伝えておかないといけませんので。」
「何か問題があるのか? ブラッド!」
「はい。恐れながら申し上げます。魔王様は、幹部達をそれぞれの国に派遣して対応しようと考えておいでの様子ですが、2点問題がございます。一つは、この世界で転移魔法を使えるものは魔王様とセリーヌ、それに私だけだと思われます。さらに飛翔能力を持つものは、魔王様、私、リリー、セリーヌ、ロン、グーテだけです。どうやって大陸を移動するのでしょうか?」
確かにそうだ。そこまで考えていなかった。
「もう一つございます。この国の防御が手薄になりすぎます。万が一、人族が古代遺跡を発掘していたら、どうなさいますか。古代遺跡の武器は相当に強力です。このアスラ魔王国もかなりの被害を受けることになるでしょう。」
確かにありうる話だ。サタンが人族の世界にいる。彼は太古の時代の争いを知っているのだ。オレは考えた。そして、一つの結論に達した。全員が参加できる体制が必要だ。ならば方法は一つだ。
「ブラッド! 決めたよ。全員に指輪を渡すよ。」
するとブラッドが焦った。
「魔王様。もしや『秘術の指輪』を渡すのですか?」
「そうさ。何か問題でもあるかな?」
「あの指輪は誰にでも渡して言い代物ではないですよ。もし、サタンの手にでも渡ったら大変なことになりますよ。」
すると、リリーが聞いてきた。
「セリーヌもその指輪のことを知っているんでしょ? どんな指輪なの?」
「以前、ダンジョンの中で俺がシルバーに貸したものだ。だが、あれは俺が作った模造品だがな。本物を手にすれば、転移、飛翔、その他、自分の属性以外の魔法も使用できるようになるんだ。」
「そんなものが誰かの手にでも渡ったら大変じゃない!」
「大丈夫さ。指輪は俺が作るんだ! 使用者が紛失したり奪われた場合は、指輪は消滅するようにするから。それに、仮に人族の手に渡ったとしても、魔力が足りなくて使えないさ。」
「えっ?! シルバーが作るの?」
「リリー! 何を驚いているのだ? シルバーは魔王アンドロメダの生まれ変わりなんだぞ! その程度のことはできるだろうさ。」
すると、ブラッドは微笑みながら答えた。
「なるほど、それならば安心ですな。」
「もう一つの問題だが、全員で行くのはやめよう。その代わり、交代でオレとともに旅をしてもらえばいいのさ。」
するとセリーヌとリリーの顔が青ざめた。
「私やリリーと一緒でなく、モモカやスペリオと一緒に旅をするのか?」
「そうさ。何も問題ないでしょ!」
するとリリーがプンプン怒って言った。
「問題が大ありよ! まさか私以外の女性と同室で泊まるってことはないでしょうね?」
「それは何とも言えないな。」
「魔王様。そろそろ時間のようです。」
「わかった。会議室に行こうか。」
俺達は全員で会議室に行った。先に会議室にいた幹部達は全員席を立って挨拶をしてきた。
「座ってくれ給へ。」
全員が席に着いた。
「これからみんなにはプレゼントを渡したい。その前に、その効用を説明しておこう。」
オレはみんなの前で指輪を見せながら説明した。
「この指輪は『秘術の指輪』と呼ばれるものだ。これを指にはめると、転移魔法、飛翔魔法、その他のすべての属性魔法が使用可能となる。」
すると、幹部達は驚きの声をあげた。
「魔王様! トロール族の私でも転移魔法が使えるのですか?」
「トロルド! お前が今までできなかった飛翔もできるようになるぞ!」
「魔王様! 私のことをそこまで気にかけていただいていたなんて・・・・」
トロルドが泣き始めてしまった。
「諸君はこの国の幹部だ。諸君のこれまでの働きを考えれば、この指輪を渡すのにふさわしいと思っているんだ。ただ、この指輪は紛失したり、盗まれた場合は即座に消滅するようになっている。だから、みんな、気を付けてくれ!」
「ハッ」
オレは一人ずつ指輪を渡した。指輪のサイズは自動で変化するようになっている。トロルドが巨人化しても対応できるのだ。
「次に移るが、これからオレはリリーと再びアマゾル大陸に戻り、ライオネル王国とティガ王国の戦争を終わらせるつもりだ。他の国でも問題が起こっているようだが、すべてを一度には解決できない。まずは、一つずつ解決していこうと考えている。」
オレは幹部達を見渡した。ブラッドとリリー以外の全員が、オレに目で訴えてきている。
「モモカとトロルド。お前達には先発隊として、ユーテス大陸に行ってもらう。そこで、ドワーフ族のドラッコ王国とエルフ族のエルグラン王国を調べてくれ。どうして争っているのかも含めてだ。」
「承知しました。」
するとモモカが寂しそうに言った。
「畏まりました。魔王様はおいでにならないのですか?」
「いくさ。ただ、獣人族の争いを治めてからだ。」
「残念ですが、仕方ありません。お待ちしています。」
何かモモカが意味深な発言をしている。その様子を見ていたリリーが何やらそわそわしていた。
「ユーテス大陸が終わったら、次は人族の国だ。みんなには順番に協力してもらうぞ!」
「ハッ」




