港町サウススター
アグリシティーで1泊した僕達は。次の目的地に向かう。
「シルバー兄ちゃん。次の街はどこにゃ?」
「次はこの大陸の最南端の港町サウススターだよ。」
「なら、もうすぐおうちに帰れるぴょん。」
「早くお父さんとお母さんに会いたいコン。」
アグリシティーからサウススターまでの道のりは馬車で半日ほどだ。だが、その途中、魔獣達が多く住む草原地帯と森を抜けていかなければならない。
「シルバー。ここから先は気配感知しながら行こうよ。」
「そうだね。なんか魔獣がいそうだもんね。」
そのまま馬車を進めると、ゴブリン達がいた。何かから逃げているようだ。すると、ゴブリン達の後ろから強い魔獣の反応があった。
「何か来るよ。リリー!」
突然地面が揺れ、馬が止まってしまった。木の陰から現れたのは、巨大なクマの魔獣だ。信じられないことに体長が4メートルはある。
「レッドベアよ! 気を付けて!」
「本当にレッドベア? なんかすごく大きいよ。」
リリーが馬車を飛び降りて、剣を抜いて切りかかった。リリーの剣がレッドベアの硬い爪で受け止められる。だが、後ろに回転して飛びのいたリリーがタイミングよく魔法を放った。
『シャドウカッター』
すると、黒い刃が複数現れて、レッドベアに向かって行った。レッドベアはそれを手で払いのけようとするが、大きな咆哮をあげて地面に倒れた。
「やったわ。」
「凄いよ! リリー!」
「そうでしょ。この前シルバーから教わった『シャドウランス』を応用してみたのよ。」
「なるほどね。それで、レッドベアの身体に傷がつかなかったんだね。」
「そうよ。これなら、港町のギルドで高く引き取ってもらえるでしょ。」
すると、後ろから見ていた3人娘も感動して言った。
「リリー姉ちゃん。前より強くなってるぴょん。」
「当たり前じゃない。」
すると、ミーアが余計な一言を言った。
「リリー姉ちゃんは戦いも体も成長中にゃ」
「確かにそうだコン。」
なんか元気だったリリーが少し落ち込んでしまった。そんなこんなで、潮の香りが漂い始め、目の前には大きな海が見え始めた。僕達は丘を下って街に向かった。
「さすが港町ね。船がたくさんあるわね。」
「ここの船ってどこに行くのかな~?」
「いろんな大陸に行くんじゃないの?」
「なら、この港町から世界中に行けるよね。」
「そうね。」
「シルバー兄ちゃん。どの船に乗るにゃ?」
「あの船がいいぴょん。」
キャロットの指さした方向には、野菜の貨物船なのか帆に野菜の絵が描かれている船があった。船を眺めていると、船からミーア達と同じ獣人族の船員が降りてきた。さすが港町だ。この街には様々な大陸の住人が集まってくるのかもしれない。
「あの船からキャロット達と同じ獣人族が降りてきたから、あの船に乗ればいけるかもしれないよ。」
「その前に、とりあえず冒険者ギルドに行こうよ、シルバー。」
僕達はこの街の冒険者ギルドに行った。そこで、ここに来る間に討伐した魔獣を買い取ってもらった。
「このレッドベアはあなた達が討伐したの?」
「違うよ。リリーが一人で仕留めたんだよ。」
すると、担当の女性が言ってきた。
「あなた達のカードを見せてくれる?」
オレ達はカードを見せた。すると、疑いの目で見始める。いつものことだ。
「これだけのレッドベアをCランクの冒険者が一人で討伐したの? 信じられないな~。」
すると、解体の作業をするベテランの男性がやって来た。
「こりゃすげえな。大物じゃねえか。」
男性はレッドベアの死体をじっくり調べ始めた。そして言った。
「姉ちゃん達。このレッドベアをどうやって討伐したんだい?」
「魔法よ。剣は無理だったから、とっておきの魔法で討伐したのよ。」
すると、男性が担当の女性に向かって言った。
「この姉ちゃん達が言ってるのは、多分事実だと思うぞ! マーシャル。」
「どういうことよ。サムは一目見ただけでわかるの?」
「当たり前だ! お前さんも見てみればわかるぜ。このレッドベアには外傷がねぇんだよ。恐らく、魔法か何かで急所でも攻撃したんだろうぜ。」
「Cランクの冒険者にそんなことができるはずが・・・・」
マーシャルという女性が言いかけた時、サムが言った。
「ランクなんてのはあてにならねぇんだよ。この2人は恐らくAランク以上の実力だろうぜ!」
「サムが言うなら間違いないわね。じゃあ、受付まで来てくれるかしら。」
すると、マーシャルは疑ったことの非礼を詫びて、買い取り価格に少し上乗せしてくれた。おかげで、予想以上の金額になった。
「リリー姉ちゃん。お金一杯だにゃ。なにか食べたいにゃ。」
「私もお腹空いたぴょん。」
「お肉食べるコン。」
僕達は街の食堂に入った。すると、食堂には船乗りの酔っ払いが大勢いて、何やら噂話をしていた。
「おい。また、出たらしいぜ!」
「そうか。普段クラーケンがこの海域に出ることはないんだがな。」
「しばらく、船の出航は見合わせだな。」
「仕方ねぇだろう。」
なんか船乗りの話を聞いていると、クラーケンのせいで船の出航が難しい状況のようだ。
「シルバー! どうするの?」
「少し様子を見ようよ?」
「わかったわ。」
ミーアの頼んだ料理は魚料理だ。焼き魚がかなり大きい。キャロットはいつも通り野菜中心のメニュー。ヨーコとリリーはお肉のシチューを食べている。僕は普通に定食だ。珍しく生の魚が切ってある。メチャクチャ新鮮で美味しい。魚の卵は不思議と赤色をしていたが、まるで宝石のように輝いて見える。
「シルバー兄ちゃんの料理もおいしそうだにゃ。」
「私は魚の下の緑の海藻がいいぴょん。」
結局、僕の頼んだ料理も皆にお裾分けすることとなった。そして、僕達は宿を探すことにしたのだが、店員さんに聞いてみることにした。
「この近くに宿屋はないの?」
「ありますよ。でも、今日は船が多いから、部屋があるかどうかわからないですね。」
「なら、確実に泊まれそうな宿はある?」
「ありますけど、少し離れてますよ。」




